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虚弱予防は口から 食べこぼし、むせに注意 歯科医師会が運動提唱 「医療新世紀」

ちょっとした滑舌の悪さや食べこぼし、飲み物にむせるといった口周りのトラブルは、高齢者の体が弱っていく最も早いサインだ。日本歯科医師会は、そうした不調をまとめて「オーラル・フレイル(口腔(こうくう)機能の低下)」と呼んで、早い段階での対処を、虚弱を予防するための国民運動にしようと提唱。効果的な普及啓発の在り方を検討している。

 ▽ささいなうちに

 口周りの健康と全身の状態との関係には科学的な裏付けがある。

 東京大高齢社会総合研究機構の飯島勝矢(いいじま・かつや)准教授(老年医学)らのグループは千葉県柏市の協力を得て、市内の65歳以上の高齢者1900人余りで口腔や全身の健康状態、食生活、生活の質など224項目を3年にわたって調査した。

 すると「歯の本数」や「食べこぼし、むせ」「かむ力」「食事の量」など多くの項目が、全身の筋肉量や筋力の低下、運動機能の低下などと強く関連していた。

 飯島さんらは項目ごとの関係を解析し、想定される虚弱の進み方を4段階の流れ図で表現。そのうち、筋力や運動機能の低下の前段階に当たる口周りの不調を、新しい概念として「オーラル・フレイル」と位置付けた。

 「軽微な口の弱りは、全身の虚弱の"上流"に当たる。この段階で対策を講じれば『ささいなトラブル』だからこそ元に戻したり、機能を維持したりできるはずだ」と強調する。

 ▽悪循環

 飯島さんはさらに、高齢者の社会的な活動性に着目する。家族や知人と食卓を囲む人は、独りで食べる人に比べて不調も少ないという。「皆と一緒なら多様な食品を食べるし、会話も弾み、唾液も出る」からだ。また、自分の健康への興味、関心も大事。口の状態を気にする人は歯科医にかかる機会も多く、機能がより長く維持できる。

 では、どうやって不調に気づき、対応をしたらいいのか。東京都健康長寿医療センター専門副部長で歯科医の平野浩彦(ひらの・ひろひこ)さんは兆候として「硬い物が食べにくい」「液体でむせる」「口が渇く」の三つを挙げ、「体の筋肉と同じ。食べる力も意識して使わないと衰える」と自助努力の必要性を指摘する。「かめない」「軟らかい食べ物を選ぶ」「さらに衰え、いっそうかめない」...という悪循環が典型的な始まり。食欲の低下を経て、栄養状態の悪化を生む。

 ▽パ、タ、カ

 自分がしっかり食べ物をかめているのか、簡単に分かる方法がある。奥歯でしっかりかむとあごも大きく動き、頬に手を当てると大きな筋肉の動きが伝わってくるはずだ。前歯だけをかみ合わせても筋肉はあまり動かない。平野さんによると、軟らかい物を食べる際は主に前歯しか使わず、このかみしめるための大きな筋肉が衰えてしまう。いつの間にか、好き嫌いより食べやすさで食べ物を選ぶようになることも、かむ力の衰えを示す要注意のサインだ。

 口の動きを測る簡単なテストもある。「パパパパ...」「タタタタ...」「カカカカ...」。パ、タ、カの3音を短時間でどれだけ細かく発音できるか。医学的にも確立した試験で、唇や舌の機能を示す。特に「カ」は舌の根元を使うため、のみ込む力と密接な関係があるという。

 口周りのちょっとしたトラブルへの対策は、まずはかかりつけの歯科で相談して指導を受けるのが一番。各地の歯科医師会が高齢者向けのセミナーや相談会を催したり、自治体が筋力強化や栄養指導と併せて教室を開いたりしている。

食べる喜び取り戻す 摂食嚥下のマップ開発

のみ込みの機能が低下した人や、胃に直接栄養補給をする「胃瘻(いろう)」の人などに、のみ込みの訓練をする「摂食嚥下(えんげ)」のリハビリテーションが行き渡っていない。専門職が少なく、多分野に散らばるため、探しあてるのが困難なことが理由の一つだったが、摂食嚥下に携わる医療機関などを地図上に示したマップが開発された。リハビリをして、食べる楽しみを取り戻すことが期待される

歯科医師の認知進まず 「死亡事例まれ」との声も 医療事故調査制度

今月始まった医療事故調査制度では、全国約6万9千カ所の歯科診療所にも、予期せぬ死亡事故に関する院内調査などが義務づけられている。だが歯科医師からは「治療が生死に関わる事例はまれ」との声もあり、制度の認知が進んでいないのが実情だ。専門家は、リスクを認識し、原因究明と再発防止を目的とする制度をきちんと運用するよう求めている。

 ▽小規模施設

 9月下旬。日本歯科医師会が、制度に関する研修会を東京都内で開いた。出席したのは、各都道府県歯科医師会で医療安全を担当する約80人。質疑の中で、ある参加者は「調査の対象事案かどうかを判断する明確な基準はないのか」と戸惑いの表情を浮かべた。

 今月1日にスタートした制度は、診療行為に関連して予期しない患者の死亡事案が起きた際、当事者である医療機関による院内調査や、第三者機関への報告を定めている。国内18万カ所の医療機関が対象で、歯科分野も例外ではない。

 ただ歯科医師会に所属している多くは、小規模な診療所を運営する民間の開業医。同会の瀬古口精良(せこぐち・あきよし)常務理事は「対象事例かどうかの判断も含め、規模の小さな施設が単独で対応するのは不可能だ」。制度上、支援団体が専門家の派遣などを請け負うことになっており、「死亡事案が起きれば、支援団体に指定された都道府県の歯科医師会にまず連絡し連携を取ってほしい」と呼び掛ける。

 ▽シンポ中止

 そもそも歯科医師の間で、制度への認知と理解がどの程度進んでいるのかは不明だ。東京都内で診療所を営む男性歯科医師(68)は「周囲の歯科医の間で事故調査制度が話題に上ることはなく、始まること自体を知らない開業医もいるのではないか」と明かす。

 実際、医療安全の関連学会は9月上旬に、今回の制度と歯科医療をテーマにしたシンポジウムを予定していたが、参加者が集まらず、結局中止になったという。

 この歯科医師は「日常の診療の中で、患者が死亡するような重大事故を身近に感じることはない」とも話す。

 ▽麻酔事故も

 しかし、鶴見大の佐藤慶太(さとう・けいた)教授の調査によると、歯科医療に関連して起きた死亡事案は2002年からの約10年間に少なくとも33例あったことが確認された。佐藤教授は「把握できていない事例もあるとみられ、あくまで最少の件数と考えるべきだろう。死亡がレアケースとは思わない方がいい」とくぎを刺す。

 日本大の小室歳信(こむろ・としのぶ)教授も、制度の対象となる事案は年に10件程度起こるとの見方を示す。「これまでも、麻酔薬でのアナフィラキシーショックによる死亡例や、抜歯した歯や治療に使う脱脂綿を口内に落とし、気道に詰まって窒息死した例があった」と説明。こうしたケースが起これば、制度の対象となる可能性があると指摘する。

 その上で、制度を適切に運用することで歯科医師の間でも死亡事例の情報を共有し、再発防止につなげる意義を強調。「人の命を預かっているとあらためて自覚しなくてはならない。カルテを整備し、万が一事故が起きた際は、使った器具や薬剤などの『証拠』を保存し、調査がスムーズに進むよう留意する必要がある」としている。

三重)入れ歯の日、入れ歯512個供養 四天王寺

「入れ歯の日」の8日、使い終わった入れ歯に感謝する供養祭が、津市栄町1丁目の四天王寺であった。512個の入れ歯が集まり、参加者約40人が見守る中、読経があげられた。

 供養祭は、入れ歯が捨てられないという声を受け、県保険医協会が16年前に始めた。参加者は本堂に供えられた入れ歯の前で焼香した。その後、入れ歯の一部は境内の供養塔に収められた。残りは金属部分を業者に回収してもらい、児童福祉施設などへの寄付金とする予定。

 津市幸町の自営業米田あき子さん(75)は、昨年末亡くなった夫の入れ歯を持参し、供養した。夫が半身不随になった後の19年間の思い出が詰まっているという。「残った入れ歯が気がかりだった。天国の夫もこれで安心したのでは」とほっとした様子だった。

機能向上、ケア道内でも教室

 道内の自治体でも口の健康への取り組みが行われている。十勝管内鹿追町は、地域の老人会で口腔機能向上教室を実施。歯科衛生士と保健師が出向き、参加者のかむ力を判定するほか、歌を歌って口の周りの筋力アップを促したり、歯磨きだけではない口内の掃除の仕方を指導している。「食べる、かむ、飲み込むことにかかわる口の衛生は、体全体に影響する。介護予防、予防医療の面からも継続していきたい。と同町。道地域保健課は「昔に比べて歯が残っている高齢者は多いが、歯があっても口の機能が良くないと会話や食事ができない。各自治体が介護予防などとともに口腔ケアにも力を入れてきている」としている。
                 北海道新聞 2015.9.29

高齢者の虚弱 口周りに注意

 ちょっとした滑舌の悪さや食べこぼし、飲み物にむせるといった口周りのトラブルは、高齢者の体が弱っていく最も早いサイン。日本歯科医師会は、そうした不調をまとめて「オーラル・フレイル(口腔機能の低下)」と呼んで、早い段階での対処を、虚弱を予防するための国民運動にしようと提唱している。65歳以上の高齢者1900人余りで口腔や全身の健康状態、食生活、生活の質など224項目を3年にわたって調査。すると「歯の本数」や「食べこぼし、むせ」「かむ力」「食事の量」など多くの項目が、全身の筋肉量や筋力の低下、運動機能の低下などと強く関連していた。どうやって不調に気づき、対応をしたらいいのか。東京都健康長寿医療センター専門副部長で歯科医の平野浩彦さんは「硬い食べ物が食べにくい」「液体でむせる」「口が渇く」の三つの兆候を挙げ、「体の筋肉と同じ。食べる力も意識して使わないと衰える」と自助努力の必要性を指摘。食欲の低下を経て、栄養状態の悪化を生む。
 自分がしっかり食べ物をかめているのか、簡単に分かる方法がある。口の動きを測る簡単なテストもある。「パパパパ・・・」「タタタタ・・・」「カカカカ・・・」。パ、タ、カの3音を短時間でどれだけ細かく発音できるか。医学的にも確立した試験で、唇や舌の機能を示す。特に「カ」は舌の根元を使うため、飲み込む力と密接な関係があるという。
                     北海道新聞 2015.9.29

歯と口の健康アラカルト 一日に歯磨き何回しますか?

みなさんは1日に何回歯を磨くでしょう? 2回、3回? 1日24時間のうちの大切な時間を使っているのですから、効果のあるものにしたいと誰もが思うはずです。

 では歯磨きをする理由はなんでしょうか?細かくあげるとたくさんありますが、大きく二つあげられます。一つは虫歯を予防するため、二つ目は歯周病の予防と治療です。

 虫歯の原因は、歯の表面に付着している歯垢(しこう)(プラーク)にたくさん棲(す)みついている細菌が、糖分を分解してできる酸です。したがって、歯磨きをすることにより虫歯の原因となる細菌の塊である歯垢を取り除き、虫歯になる危険性をより少なくできると考えられます。

 歯周病の原因も歯垢中の細菌が主なものです。その細菌が産生する毒素などが骨(歯槽骨)を破壊し、ついには歯を失ってしまいます。歯磨きにより、口の中の細菌の数を減らし環境を改善することが、歯周病を予防あるいは治療するうえで最も大切です。

 さて、では1日に何回歯を磨けばよいのでしょうか? 先にお話したように、口の中の細菌の数を減らすことと、糖分などに細菌が接する時間を短くすることが重要なので、可能であれば食事の後あまり長時間放置せずに歯を磨くことができればよいのではないでしょうか。つまり、歯磨きの回数は食事の回数プラスαが理想的になります。このプラスαに必ず加えていただきたいのが、就寝前の歯磨きです。就寝中に口の中の細菌は最も増殖しやすいため、就寝前に細菌を減らすために歯磨きをすることは、もっとも大切な歯磨きとなります。少し疲れていても、ちょっと気分の悪い時でも、そのまま寝てしまわずにきっちり歯磨きしてから寝てください。

 歯磨きのポイントを、今回は回数(タイミング)に絞ってお話ししましたが、歯磨きを「している」のと「できている」のとでは全く話は違います。是非、自分にあった効果的なブラッシングが「できる」ようにかかりつけの歯科医院で指導を受けてみてください。(府歯科医師会学術部)

「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」

安倍晋三首相は8月に開催された「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」
で、女性の経済的な自立を支援するため女子教育に2018年までの3年間で420
億円以上の政府開発援助(ODA)を拠出する方針を表明し、「女性も男性も
暮らしやすい社会を世界につくるため努力を惜しまない」と強調しました。
 また、同月に参院本会議で可決し成立した「女性活躍推進法」は、企業に女
性の登用を促すためのもので、女性の採用比率や管理職の割合など数値目標の
設定と公表を義務付け、2016年4月から制度を開始します。
 政府は指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%にする目標を掲げ
ていますが、民間企業の管理職に占める女性の割合は2013年時点で11%にとど
まっており、40%を超す米国や30~40%の欧州各国のほかアジア諸国と比べて
低い水準にあるのが現状です。
 一方、歯科界に目を向けると、2012年の厚生労働省のデータでは、歯科医師
数総数の男女比が78.5:21.5であるのに対し、若くなるほど女性の割合が増え、
29歳以下だと57.9:42.1になっています。女性の活躍が進んでいる職種と言え
るのではないでしょうか。

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