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顔面補綴新技術、3Dプリンタで実現【米国眼科学会】

米国眼科学会(AAO)は10月20日、癌の摘出後や先天性奇形に対処する顔面補綴に3Dプリンタを利用する研究を紹介した。同学会の第118回年次総会にて発表。

 米国では毎年2700人以上が新たに眼の癌と診断されている。救命のために眼球や眼窩の組織の摘出手術を受ける患者もいる。従来の顔面補綴の価格は1万-1万5000ドル程度で、技工士による手作りのため作成に数週間かかるほか、多くの場合は保険対象外であるため、全額が患者の負担となるという。今回の研究では、摘出手術を受けた患者のために安価な顔面補綴を提供することを目指し実施された。

 マイアミ大学の研究チームは、患者の欠損のない顔面側をモバイルスキャンでスキャニング。コンピューター処理で画像を左右反転させ、3Dプリンタで欠損部分をカバーする顔面補綴を作成する技術を開発した。従来の方法よりもはるかに安い値段で、短時間に顔面補綴を作成できるという。また、3Dプリンタでは特殊なナノ粒子の混合物を使用するため、より多くの肌の色に対応できるほか、経年による色あせ等の劣化も抑制。交換が必要な場合には、同じものをボタンひとつで再製造できる。

 研究者は「今後は、モバイルスキャンしたデータをマイアミの研究所に送信してもらうことで、世界各地で顔面補綴を必要としている人に対応できるようにしたい」と述べている。

早食いの肥満リスク4.4倍 岡山大が学生追跡調査

早食いの大学生が肥満になるリスクは、そうでない学生の4倍を超えることが、岡山大の調査で明らかになった。これまでも早食いと肥満の関連は指摘されてきたが、肥満でなかった人が早食いを続けて肥満になるまでの追跡調査は珍しいという。脂っこい料理を好んだり、満腹まで食べる学生よりも肥満傾向が高いことも分かり、「ゆっくりよくかんで」という食習慣の大切さをあらためて裏付けた形だ。

 同大大学院医歯薬学総合研究科の森田学教授(予防歯科学)らは2010年の新入生約2千人を対象に、食べるスピードが早いか▽脂っこいものが好きか▽満腹まで食べるか▽インスタント食品やファストフードが好きかなど、12項目を質問した。

 肥満度の目安とされる体格指数(BMI)が入学時点で25以上の肥満の学生を除き、3年後に健康診断を受けた1314人を調べたところ、肥満になったのは38人。肥満度と質問項目との関係を統計学的に分析した結果、肥満になったのは「早食い」と答えた405人のうち6・2%(25人)、「早食いではない」と答えた909人のうちでは1・4%(13人)で、肥満リスクは4・4倍だった。肥満前段階(23以上)になった72人を同様の手法で調査すると、リスクは3・5倍に上った。

 また、早食いかどうかは関係なく、男性676人と女性638人の肥満リスクを比較すると、男性の方が2・8倍高かった。

 「脂っこいものが好き」「満腹まで食べる」と答えた学生についても肥満の傾向はあったが、統計的な有意差はなかった。

 歯科医師で大学院博士課程2年の山根真由さんは「よくかむことは肥満治療に効果的とされている。若いうちから早食いの習慣を改善することが、将来の肥満や生活習慣病予防につながる可能性がある」と話している。

「イヤイヤ」を克服! 親子で歯磨きを楽しむための3つのコツ

歯磨きをしようとするとイヤがったり、口を開けてくれなかったり…。子どもの歯磨きタイムに毎回苦戦をしている方も多いことでしょう。今回は、保育・子育てアドバイザーの松原美里さんに、親子で歯磨きを楽しむ方法を教えてもらいました。

そもそも子どもが歯磨きをイヤがるのは、どうしてなのでしょうか?

「歯磨き中に歯ブラシが口の中にあたるなど、痛い思いをしたことがきっかけになって歯磨き嫌いになることが多いです。また、子どもは、自分が夢中になっていることを中断させられることを嫌がるため、たとえば、遊びの途中で『歯磨きしなさい』と言われると、遊びをやめるのが嫌でだだをこねることがあります。こういった行動をみて、『歯磨きを嫌がっている』とお母さんが思い込んでしまうケースも。
きっかけはいくつかありますが、お母さんが歯磨きのときに怖い顔をしていると、子どもは『歯磨き=怒られる』といったネガティブなイメージをもってしまい、ますます歯磨き嫌いになってしまいます」(松原さん)
虫歯にならない生活習慣を身につけるためにも、子どもの頃から毎日しっかりと歯磨きを行いたいもの。子どもに自主的に歯磨きをさせるには、どうしたらいいのでしょうか?


1.「歯磨き=楽しい」と思わせる

「子どもは楽しいことが大好き。『歯磨きをしなきゃいけない』という大人の考え方を押しつけるのではなく、『歯磨きすると楽しいことがある』と子どもに思わせ、寄り添うことが大切です。保育園では歯磨きタイムになると、パペットを使って『虫歯さんにならないように、ぞうさんと一緒にゴシゴシしようね〜』などと言いながら、子どもたちと一緒に歯磨きをしています。ご家庭でも、子どもが大好きな人形を使ってぜひやってみてください。
また、歯磨きの絵本を見せてから、『じゃあ●●ちゃんも歯磨きをやってみよう』と促したり、『おかあさんと一緒』(NHK教育)の歯磨きの歌を歌いながらするなど、一緒に楽しむ工夫をしましょう」(松原さん)

洗面所にかわいいキャラクターを置いておき、「●●に会いにいこう」と言って誘ったり、「歯磨きが終わったらママと一緒に遊ぼう」と歯磨きのあとに楽しみをつくったりするのも効果的です。まずは、お母さんが歯磨きを楽しむ気持ちを忘れずに!


2.親子で磨き合うことで、子どもの「使命感」を刺激する

歯磨きのとき、「親が子どもに歯を磨かせる」、「親が子どもの歯を磨く」という一方的な構図になっていませんか? 親子で一緒に磨き合えば、子どもにとっても歯磨きの時間が楽しくなります。
「『やらせる』『やってあげる』のではなく、『一緒にする』。大切なのは『Let’s』の気持ちです。仕上げ磨きをするときは、まずは子どもにお母さんの歯を磨いてもらうというのもおすすめです。「磨き残しが残っていないか、ママの歯を確認してくれるかな~?」などと言って歯磨きをしてもらい、その後に、『じゃあ今度は●●ちゃんの番ね』と仕上げ磨きをしてあげましょう。子どもは何かを任されると喜びます。『お母さんの歯を磨いてあげる』という使命を与えることで、歯磨きのモチベーションを高めるきっかけになります」(松原さん)


3.子どもがイメージしやすい言葉で伝える

子どもに歯磨きをさせるとき、「ちゃんと歯磨きしなさい」「きれいに磨きなさい」などと、つい言ってしまっていませんか? 実はこれ、NGワードなのです。
「子どもにとっては『ちゃんと』『きれいに』といった言葉はイメージがしにくく、どう磨いたらいいかわかりにくいもの。たとえば、『前歯の裏側をクルクル磨いてみようか』、『イーッとしてゴシゴシしてみよう』というように、具体的に磨く場所を示したり擬音語を使ったりして、わかりやすく伝えることが大切です。また、歯磨きの目的を伝えるときも、『虫歯になるから』だけでは子どもには理解しにくいため、『虫歯さんになると歯が痛くなって美味しいものが食べられなくなるから、歯の裏側までゴシゴシ歯磨きしようね』など、“自分が困る”ことがイメージしやすい表現で声かけしてあげてください」(松原さん)

「歯磨きは親子のスキンシップの時間。子どもと向き合える貴重な時間として、歯磨きに取り組んでください」と松原さん。どうしたら子どもが喜んで取り組んでいるかを考え、親子で楽しみながら歯磨き習慣を身につけましょう! 

歯磨きの基本は、楽しむ、ほめる、慣れさせる。

じょうずな仕上げみがきのポイント

1 「楽しい!」と感じる雰囲気をつくろう!
2 みがいたあとは、いっぱいほめよう!
3 決まった瞬間に繰り返して習慣にしよう!※眠いとき、疲れているときは無理じいしない。

口や顔をさわられることは、子どもたちが本能的にイヤがることのひとつ。また、じっとして終わるのを待つことも子どもたちにはつらいものです。大切なことは「歯磨きは楽しい!」と感じさせること。終わったあとはいっぱいほめて、毎日の習慣にしていきましょう。

虫歯から見つける児童虐待、早期対応へ新たな取り組み

1日から児童虐待防止月間が始まりました。虐待への対応は何よりも早期発見が重要ですが、「虫歯から虐待の芽を見つける」という新たな取り組みが始まりました。

「いわゆる口腔ケアの重要性

 社会保障審議会の医療保険部会が9月19日(金)、都内の全国都市会館で開催され、医療保険制度改革に関する2巡目の議論を開始した。今後、患者負担、医療費適正化などについて協議を行い、11月下旬を目途に同部会としての取りまとめを行う予定。日本の高齢者が亡くなる原因でかなり肺炎が増えており、他の病気で入院していても最期は肺炎ということが多い。肺炎球菌ワクチンでの対応もあるが、実は口腔内の衛生を保つことが感染症予防にもなるし、肺炎予防にもなる。かみ合わせを良くしていれば認知症予防にも、ひいてはがん対策にもなるという新しい情報がある。
                  日歯広報 2014.10.15

「食べること」は「生きること」認知症をテーマにフォーラム

9月21日(日)、「認知症と共にポジティブに生きるための口腔ケア・口腔リハビリテーション」のテーマの下、約200名の参加を得て、都内のコクヨホールで開催された。認知症になっても、いつまでも自分らしく食べ続けていくために今日からできることや、口腔ケア、口腔リハビリテーションの視点から自分らしく生きていくための知恵や工夫などを議論した。
                  日歯広報 2014.10.15

歯細胞から肝臓再生、年度内臨床も

日本歯科大学の八重垣健教授など再生医療研究チームは、歯の細胞から肝臓を再生する実験に成功した。歯髄幹細胞と呼ばれるヒトの歯の細胞から再生した細胞を、急性肝不全を起こしたラットの肝臓に移植、肝臓を再生させた。早ければ年度内での臨床応用も可能という。自己の歯の細胞から再生臓器と置換するというiPS細胞などに続く、再生医療の実現につながる可能性がある。

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 体性幹細胞という幹細胞の一種である歯骨髄細胞を使った前臨床実験。すでに研究グループでは、ヒトの乳歯・永久歯は髄から得た歯髄細胞を継代培養することに成功しており、肝臓、すい臓細胞の分化も成し遂げている。今回はこれらの経緯を踏まえ、80~90%の肝臓を切除し急性肝不全を起こしたラット6匹に、ヒト歯髄から再生した肝臓様細胞を移植した。6匹はすべて生存し術後20日で肝臓は完全に再生。移植したラットの肝臓にはヒト肝臓マーカーが大量に出現し、ヒト肝臓が再生できたことも確かめた。

 また、実験中に単純ミスで肝臓以外に歯髄からの肝臓様細胞が飛んだところ、肺で肝臓ができた。この細胞が悪性腫瘍になる可能性が否定できたとしている。さらに、ラットに肝硬変を起こさせ、肝臓様細胞を肝臓に注入した試験で移植群と非移植とで血清を比較すると、移植群と正常ラットとがほぼ同じ値を示した。肝硬変が治癒したことになる。

 これらの結果から研究陣では、機能的にも形態的にも十分な肝臓再生に成功し、ヒト肝臓の再生医療の実現性を実証できたと総括。それだけでなく、ヒト歯髄由来の幹細胞から発生させたすい臓など肝臓以外の種々の再生器官がヒトの体内で正常に機能する可能性が確かめられたとしている。

 また今回の試験では、肝臓様細胞からの臓器の再生時に、旧臓器を細胞接着(スキャホールド)の足場として活用し、臓器再生時のカギとなる3次元立体構造の構築につなげた。これもまた、疾病臓器を自己の歯の細胞から短時間で再生臓器と置換する治療の実現への道を開いたといえそう。

 肝臓の臨床医学の研究機関の協力があれば、臨床への応用は年度内にもできるという。iPS細胞の活用とは別のアプローチによる再生医療として注目を集めそうだ。

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