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歯科医による「しわ取り」が急増。歯科の領域について賛否両論。

一般的に美容外科医らの医師が手がける、ヒアルロン酸注射による顔のしわ取り。近年、歯科診療の一環として、しわ取りを診療メニューに加える歯科医院が増えている。歯科医向けの美容治療セミナーが毎月開催され、希望者も増えているという。まず問題なのは、歯科医が美容領域であるしわ取りを行うことが違法ではないかということ。厚生労働省が1996年に専門家会議で出した通達では、歯科の診療対象に口唇が含まれている。口唇とは口の周り全体を指すため、ほうれい線のしわ取りも診療の対象になるというのが、ヒアルロン酸注射を行っている歯科医院の解釈だ。医科と歯科との境界線の問題や歯科医師の技術的問題、さらには既得権益の争いもあり、歯科医のしわ取りには賛否両論、様々な意見が出てきている。

動脈硬化に関わる脂質代謝異常と歯周病菌との関連を人間でも立証

歯周病が動脈硬化に関連することが指摘されてきているが、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野の工藤値英子助教と高柴正悟教授らの研究で、歯周病患者は動脈硬化に関わる悪玉コレステロールの値が高いことがわかった。今回の研究で、人間においても歯周病菌の感染が脂質代謝異常の原因となることが示された。歯周病が影響を与える疾患として、動脈硬化のほか、心血管障害や糖尿病などが報告されているが、この検査方法を用いることで、歯周病との関連、疾患の原因究明につながると期待されている。

20~60代の7割以上が銀歯を保有。「3万円未満なら白い歯に変えたい」が半数。

先進国の中で驚くほど銀歯を持つ人が多いと言われる日本。『スリーエムヘルスケア』が、全国の20~60代の一般男女2万人に対し、銀歯に関するオンライン調査を実施したところ、銀歯の保有率は全体で71.2%、最も保有率が高かった世代は40代で、79.7%。10年以上銀歯を保有している人は全体で41.6%だった。

歯を失うと認知症のリスクが最大1.9倍に。義歯を使えば40%抑制できる可能性あり。

歯の状態は認知症と深い関係がある。厚生労働科学研究班が65歳以上の健常者4425名を対象に、アンケート及び追跡調査を実施。要介護認定を伴う認知症度Ⅱ以上が発症するまでの日数や歯数、咀嚼能力、かかりつけ歯科医院の有無などとの関係を調べ、分析を行った。その結果、年齢、治療疾患の有無や生活習慣などにかかわらず、歯がない人は認知症発症リスクが高くなることが示された。特に、歯がほとんどないにもかかわらず義歯を使用していない人は、歯が20本以上残ってる人の1.9倍も認知症発症リスクが高い。しかし、歯がほとんどない場合でも、義歯を使用することで、認知症の発症リスクを4割も抑制できる可能性があるとのこと。また、かかりつけ医院をもっている人に比べ、持っていない人の認知症発症リスクは1.4倍にのぼり、歯の状態が脳の働きを含め身体全体の健康に大きく影響を及ぼしている。

口腔ケア意識調査でわかる日米欧の違い。歯科医院へ通う目的は治療か予防か。

『ライオン株式会社』が日本、アメリカ、スウェーデンでオーラルケアに関する意識調査を行ったところ、「予防歯科」に対する考え方が欧米と日本では全く異なることがわかった。オーラルケアで使用するアイテムについては、「フロスやリンスも使うのが当たり前(どちらかといえばそう思うも含む)」と考える人がアメリカ77.8%、スウェーデン68.3%と多数。しかし日本では、「ブラッシングだけで十分(どちらかといえばそう思うを含む)」が半数以上を占める。欧米2ヵ国に比べ、日本は手軽にオーラルケアを行いたいという意識が強い傾向だ。

家庭用バイトブロック(開口保定器)の機械的性質からみた有効性と安全性

要旨:市販されている家庭用バイトブロックの安全性や有効性について、具体的な検討がされていない。そこで本研究は、市販されている家庭用バイトブロック(5種類)の破断荷量、破壊状態、咬んだときの表面の硬さと変位量を評価し、比較した。対象のバイトブロックの材質はポリサルフォン、ナイロン、ポリウレタンスポンジ、ウレタンゴム、シリコンであった。破断荷量および破壊状態の評価は、コバルトクロム合金製実験用治具(歯式:上下顎左側2~6)を作製し、万能試験機に装着し、圧縮試験を行った。
    試験回数各バイトブロックを5個用意し、計5回のデータを得た。破断荷量の平均値は、すべてのバイトブロックにおいて200kgfを上回り、実験用治具が咬合接触しても完全離断することはなかった。破断荷重後のバイトブロックの外形は、ポリサルフォンとナイロンは亀裂が入り、元の外形をとどめなかった。ポリウレタンスポンジとウレタンゴムは咬合痕を認めるものの元の外形に近い状態まで復した。咬んだときに表面が最も硬いのはポリサルフォンで、次がナイロン、ウレタンゴム、ポリウレタンスポンジ、シリコンの順であった。
    今回の実験対象となったバイトブロックは、医療や介護の現場で使う際に完全離断となる危険性が低く、特にウレタンゴム、ポリウレタンスポンジ、シリコンは、歯の損傷の危険性も低いことが示唆された。

 諸言:市販されており、個人で購入および使用が可能なバイトブロック(家庭用バイトブロック)は、歯科医療や介護の現場において、障害者や要介護高齢者などの開口保持困難な者の対しての介助歯磨き、検診、そして歯科治療の際に使われる。特に発達レベルの低い障害児・者は、介助歯磨き時に静止して開口を保持しておくことが困難なので、バイトブロックは不可欠である。しかしながら、重度心身障害児における介助歯磨き時のバイトブロックの噛み切りの報告があり、噛み切られない硬さが必要である。家庭用バイトブロックと異なるが、全身麻酔時に使用するバイトブロックの内筒が気道異物となり、呼吸状態が悪化した報告もあり、バイトブロックの破損は窒息を起こす危険性もある。
    また臨床的に金属性の開口器により臼歯部の歯の破折も経験し、咬む部分の表面の軟らかさが要求される。しかし軟らかい素材であると、咬んだときに開口量を保持できない。ヒトの歯を損傷させない程度の軟らかさ、いわゆる咬んだときの表面軟らかさを必要とする一方で、咬合力で破損および変形しない硬さと強さが必要である。現在、家庭での介助歯磨きのためのバイトブロックが市販されているが、バイトブロックが破損される荷重(破断荷重)や咬んだときの外表面の軟らかさについては明らかにされていない。またヒトの咬合力によるバイトブロックの変形量についても検討がなされていない。

 考察:今回の調査対象となった家庭用バイトブロックにおいてEが最も低い破断荷重で平均244.8kgfであった。CとDの破断荷量は、ヒトの最大咬合力の2倍以上、AとBは4倍以上であり、いずれもヒトの最大咬合力以上であることから、ヒトが破断させる危険性が低いことが示唆された。万が一強い咬合力が加えられ、上下の臼歯が咬合接触したとしても、今回の調査多少となった家庭用バイトブロックは離断しないものと思われる。つまりバイトブロックが離断し、誤飲・誤嚥による窒息の危険性は低いと判断された。バイトブロック表面の硬さは、歯の損傷に影響を与える。バイトブロック表面が硬い場合、咬合力が咬頭の一部や、一歯に力が加わり、歯の破損や脱臼の危険性があると考える。
    今回使用したすべての家庭用バイトブロックは購入直後のものであり、経時的な劣化による影響は明らかとなっていない。

根を詰めず、口の脱力を

上下の歯、無意識に接触させる癖ありませんか?歯が長時間触れていると、顎の関節や歯に負担がかかり、かみ合わせの違和感や入れ歯の不調につながることがあるそうです。どうしたら防げるのでしょうか。
 ぐっと歯を食いしばっても、あごなどに負担がかかるが、長くは続かない。一方、軽い接触は長時間化しやすく、問題はより深刻化しやすい。こうした癖を「TCH」と名付けた。TCHがあると、口の周囲の筋肉が緊張を続け、関節に力が加わり続ける。歯や歯肉にも影響が出る。通常は、疲れを感じた脳が「歯を離せ」と命令を出すのだが、TCHの人はこの命令を抑え込んでしまい、脳が命令を出さなくなってしまう。木野さんらの調査によると、片方の歯だけでかむ癖がある人がTCHになるリスクはそうでない人の2.8倍。精密作業に従事している人は2.2倍だった。
 不調を感じ、TCHの改善をはかるにはまず、歯の接触は体に良くないことと自覚しよう。「歯を離す」と気付かせてくれる文字や絵をかいた紙を10ヵ所以上にはることを木野さんは薦める。同じデザインのものをパソコンの周囲や車内など目につく場所にはろう。紙を見たら力を抜く。これを繰り返すと次第に上下の歯を離すまでの時間が短くなり、触れると同時に離れるようになるそうだ。「コツをつかめば、約3ヶ月で条件反射が戻り、治る人が多い」と木野さんは話す。

急性期脳血管疾患患者の嚥下機能改善に影響を及ぼす因子の検討

諸 言
  わが国では、毎年約30万人に新たな脳卒中が発生しており、脳卒中患者の総数は約280万人に上る。発症後嚥下障害を来たす患者は、急性期では30~65%、慢性期まで遷延する患者は約10%といわれており、摂食嚥下障害の原因疾患の約半数を占めている。脳卒中急性期は、早期座位・立位訓練、早期歩行訓練、セルフケア訓練などと同様に摂食機能療法の重要性が示され、グレードAに位置づけられている。
  その中で、嚥下障害を有する脳卒中患者における発症7日以内の嚥下と食事に対する摂食機能療法は、6ヶ月後の予後を改善し、呼吸器感染症を減らすことが報告されている。したがって、脳卒中患者においては、急性期からの摂食機能療法がきわめて重要であるため、急性期病院では栄養サポートチームや摂食嚥下チームなどにより、摂食嚥下機能のスクリーニング、摂食機能療法など種々のアプローチが展開されるようになった。
  チームによるアプローチには、多職種の熱意が不可欠である。しかし、実際の臨床現場では、医療者側の熱意だけでなく、患者の意欲が得られなければ、十分な摂食機能療法の持続が困難であることを経験する。そこで、脳血管疾患患者の嚥下機能改善に影響する因子を、これまでの報告でみられた年齢や誤嚥性肺炎発症の有無等の身体状況に加え、うつや意欲といった精神状況も含めて検討した。
 結 論
  脳血管疾患患者において、嚥下機能改善群、不変・低下群の2群間で年齢や疾患発症前ADL、入院時Alb等に差はみられなかったが、入院時BMIは不変・低下群で有意に高値であり、ST介入時の意欲は改善群で有意に高値であった。ロジスティック回帰分析の結果、嚥下機能改善に影響するのは、入院時BMI、ST介入時の意欲であったことから、患者の体格や意欲が嚥下機能改善に影響する可能性が示唆された。摂食機能療法は、患者の意欲を高められるようなアプローチを他職種が連携して行うことの必要性が示唆された。

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