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発音悪い小3長男 成長の遅れが心配

Q 小学3年生の長男は発音が悪くちゃんとしゃべれないのが気がかりです。「さしすせそ」とか「らりるれろ」がうまく言えず、幼児語のように聞こえます。先日授業参観日で同級生たちがしっかりした発音で伝えたいことをちゃんと話しているので驚きました。もしかしたら息子は成長に遅れが出ているのではないかと心配です。

 A 言葉の発達は小学校低学年くらいではまだ、かなり個人差があるのではないかと思います。ですから周りの子たちと比較してしゃべり方だけは劣るというだけでは、ただちにそのことが成長の遅れと関係しているとはいえません。そうした心配の前にまず息子さんの歯の状態や聴覚に問題がないかどうかもチェックする必要があります。抜けている歯があったり歯並びが悪いことなども発音が悪い原因になっているかもしれません。「よく聞こえない」という障害があれば、うまく話せないということも起こり得るでしょう。舌の長さでも発音は違ってきます。歯科や口腔外科、耳鼻咽喉科で、そういったチェックをしてもらうことをお勧めします。
                    北海道新聞 2013.1.14

乾燥しがちな冬・・・口臭に注意

乾燥しがちな冬は口臭が強くなりやすい季節。口臭の一因となるのが、舌の表面に汚れが付着した舌苔だ。最近は舌苔を取り除く舌ブラシ付きの電動歯ブラシも登場しているが、みがきすぎには気を付けたい。また食事の際はよくかみ、唾液の分泌を促すことが口臭予防につながるという。舌の表面は、糸状乳頭というじゅうたんのような構造になっている。口内の乾燥などにより糸状乳頭が伸び、その間に粘膜のあかや食べかす、最近が付着し、白いコケのように舌を覆うのが舌苔だ。舌苔からは硫化水素などが発生するため口臭の原因となる。北大歯科診療センターで予防歯科・口臭外来を担当する兼平孝講師は「唾液には口内の汚れを洗い流す効果がある。口内が乾燥すると舌苔が付着しやすくなる」と説明する。舌苔除去のために歯ブラシを使用する人もいるが、舌を傷つける恐れもあるため、歯ブラシで強くこするのはなるべく避けた方がよいという。
 簡単にできる口臭対策はよくかむことだ。かむと唾液の分泌が促される。かつて日本人の食事は繊維質の多い食材をよく使っていたため、よくかまなければならなかった。しかし食の欧米化とともに軟らかい食材が増えて、かむ回数は減ってきている。兼平講師は「野菜や果物など繊維質の食材を積極的にとり、よくかむように心がけて。ガムも効果的」としている。このほか、口呼吸になりがちな人も口内の乾燥を招いて口臭が発生しやすくなるので、マスクを着用するといいそうだ。
                              北海道新聞 2013.1.9

固唾をのむ

 緊張すると、唾液の分泌が盛んになるのでしょうか?いや、人は極度の緊張状態になると、むしろ唾液の分泌が低下します。緊張して口の中がカラカラになる経験をした人も多いはずです。それではなぜ、唾液がたまるのかといえば、物事に集中した時、人は唾液を飲むのを忘れてしまうからです。唾液は、食べ物を食べているときはもちろんですが、それ以外の時にも、常時、一定量が分泌されています。これは、口の中を湿らせて粘膜を守ることと、唾液に含まれている殺菌成分の作用で、ばい菌を増やさないためです。唾液の分泌量は、1日で1~1・5㍑にもなります。分泌された唾液は、大抵は無意識のうちに飲み込まれているので、口から唾液があふれるようなことはありません。赤ちゃんがよだれを流すのは、飲み込む力が弱いからです。緊張を感じる場面を凝視すると、人は唾液を飲むことを一時的にやめてしまいます。そして唾液がたまってくると、それに気がついて「ゴクリ」と固唾をのむのです。今年も固唾をのむ機会があると思いますが、事件、事故ではなく、スポーツ観戦など、楽しい場面でと願っています。
                   北海道新聞 2013.1.9

おいしく食べるためには 口のリハビリ 食前体操

病気や障害、またその後遺症で寝込んでしまった時に、使わなくなった筋肉や神経は衰え機能が低下します。かむ機会が減ると、唾液の分泌も少なくなり、食べたり飲んだりする時の「誤嚥(ごえん)」の問題が起こったり、味覚やお口の衛生状態にも悪影響が出てきます。飲み込む力が弱っている人にとっても、準備体操はとても大切です。無理をせずに、個人個人のペースで行ってみてください。
 1.ゆったり腰を掛け深呼吸をしましょう(鼻から息を吸い口からゆっくり吐きます)。
 2.深呼吸をしながら首をゆっくりまわします。
 3.肩の上げ下ろしと、肩をゆっくりまわします。
 4.両手を上げて筋肉を伸ばしましょう(まひのある人は健康な側だけでも構いません)。
 5.口を閉じたまま頬を膨らませたり、唇を突き出したりしましょう。
 6.口を大きく開いて舌を出したり引っ込めたりしましょう。
 7.口を開いたまま舌を左右に出し口角を触りましょう。
 8.「パパパパ」「タタタタ」「カカカカ」「ララララ」とゆっくり発音しましょう。
 9.ゆっくり深呼吸をしてゴクンと飲み込むまね(実際に少し唾液を飲み込んでも構いません)を2~3回やってみましょう。

肥満・生活習慣病を回避 噛むチカラの効果

食前に10分間ガムを噛むとどうなるか、管理栄養学科と一緒に研究してみると9週間で50数名のうち70%以上の人の体重と脂肪が減少しました。特に肥満度(BMI)が高く内臓脂肪の多い人ほど顕著に効果がみられ、しかもリバウンドが少ない結果が出ました。太ることは簡単です。反対にやせることは大変ですが、ガムを噛むだけであれば、難しくないと思います。噛むことで血糖値が下がり、動脈硬化を予防する「アディポネクチン」の分泌が増え、中性脂肪も下がりました。早食い、噛まない、一口の量が多い、これがいけません。高齢になると基礎代謝が落ちますので運動ができないのであれば、なるべく多く噛むこと。それだけで視床下部を刺激して代謝を促進することができます。噛んで肥満や生活習慣病を回避しましょう。

今、失われつつある噛むチカラ噛むことは命の原点

遺伝子は六代経つと内容が全く変わるのですが、私たちの生活環境が変わり口をあまり使わなくなるということが、遺伝子変化の前に起きてしまいました。多くの場合、産まれてから黄泉の国に行く間は口を使っています。口を使わないと命を維持するチカラがなくなってしまいます。命を維持する原点は食事であり噛むチカラです。私たちの脳は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚、この五感から情報を得ているのですが、噛むという行動ですべてを一挙に取り入れることができるのです。脳には口の機能を司る部分が大変多く、噛むことで脳が刺激され海馬と扁桃体の連携が活発になり、運動感覚野や小脳が活性化します。立つ、走る、細かな作業をする、自分の名前を書く、これらが瞬時にできるのは小脳のおかげです。小脳が衰えると少しのことで転んだりする。それで骨折して入院となると五感の刺激が減り、認知症等の引き金要因になる可能性もありますが、噛むことで認知症発症を抑えることができます。噛まなくなると運動能力、学習能力、忍耐力、健康に大きな影響が出るのです。

Q食べていないのに嚥下性の肺炎になる人がいますが、どうしてでしょうか?

 鼻からに経管栄養や胃瘻(皮膚の上から胃に穴を開けて直接栄養が送れるようにすること)で管理している人でも嚥下性肺炎を起こしてきます。胃瘻を腸瘻に変えても肺炎の発生率を減らすことができなかったという報告もあります。嚥下性肺炎の発生機序はいまだに十分解明されているわけではありません。いえることは、食物を直接誤嚥したらすぐ肺炎になるわけではないし、食物を直接誤嚥しなくても肺炎になるということです。口腔や鼻腔、咽頭の分泌物に細菌が繁殖してそれが誤嚥されると肺炎になりやすいとか、胃ー食道逆流で消化液を含んだ食物を夜間誤嚥するなどのメカニズムが考えられています。いずれにせよ肺炎が発症するためには、生体の防御機構と、誤嚥物・細菌の相互作用が重要な役割をはたしています。体力があり気道や肺胞の粘膜丈夫とであれば肺炎になりにくく、脆弱であればすぐに発症してしまいます。嚥下性肺炎に関するいちばん大きな因子は「嚥下性肺炎の既往歴」であることがわかっています。つまり、一度嚥下性肺炎になると繰り返しやすいということです。健常人でも夜間を中心に咽頭粘液などを誤嚥していますが、気道の粘膜が繊毛運動で外へ上手に排泄しています。
 ところが一度嚥下性肺炎になると気道や肺胞の粘膜が傷ついて、抵抗力がなくなり、誤嚥したものを排泄しにくくなるといわれています。これはとくに高齢者に顕著です。気道粘膜の感受性も低下してしまい、嚥下性肺炎にかかった人では誤嚥してもむせにくくなるというデータも出ています。むせないからといって決して安心はできない理由の一つです。

Q嚥下性肺炎について教えてください。

肺炎には間質性肺炎、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎などがあります。しかし、高齢者のかかる肺炎には、食物や唾液などの誤嚥が原因で起こる嚥下性肺炎が多いと考えられています。脳卒中などで嚥下障害があれば当然嚥下性肺炎の危険が高まります。高齢者はわずかな誤嚥が重篤な肺炎や呼吸器疾患につながりやすいことを忘れてはなりません。高齢者が肺炎になると身体の抵抗力がないために、なかなか治りません。体力の消耗も激しく、寝たきりになるきっかけとなる場合もあります。また、脳卒中のリハビリテーション中に嚥下性肺炎になると訓練が中断して全身の体力が低下し、健常側の筋力低下や麻痺側の関節拘縮が進むなどさまざまな弊害が起こります。このような嚥下性肺炎で死亡する例もかなりあります。さて、誤嚥するとすぐ肺炎になるのでしょうか?
 実際は必ずしもそうではありません。肺炎になるかどうかは、誤嚥する量や頻度、誤嚥するものの種類に大きく左右されます。また、全身状態や肺の防御機構、排泄機構との関係もあるので、ある人は肺炎や無気肺になり、ある人は何も起こらないということがあり得るのです。とはいえ、高齢の脳卒中患者さんは全身状態が悪く、生体の防御機構が低下しているため、少量の誤嚥がきっかけで肺炎になることが少なくありません。「誤嚥しても安全だ」などと思ってはいけないのはいうまでもありません。嚥下性肺炎の原因のには、食物の誤嚥以外に主に次の二つの機序が考えられています。一つは咽頭や喉頭の粘膜に細菌の巣(コロニー)ができていて、細菌を含んだ唾液などの分泌物を絶えず誤嚥していること、もう一つは夜間睡眠中、少量の胃ー食道逆流により胃内容物を誤嚥していることです。後者の場合は大量の細菌を含んでいるうえに、酸や消化液は化学的に気道粘膜を損傷するため、そこに栄養分を含んだ食物が入ってくると細菌が急速に繁殖して肺炎が起こると考えれます。
 一度嚥下性の肺炎を起こすと、気道粘膜はなかなか完全には回復しません。そして粘膜の知覚が鈍麻して、誤嚥しても咳が起こりにくくなり、食物を有効に排泄できないためますます肺炎の危険が増大する、という悪循環が起こります。

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