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目、耳、鼻で侵入物遮断

人の体には、体の中と外がつながっている場所があります。それは特に顔に集中して存在します。口、鼻、目、耳です。これらの器官は、体のまわり、つまり環境から何かしらのものを取り入れる役割を持っています。口は食べ物、水、空気です。鼻は空気とともににおいを取り入れ、まわりの様子を知ることができます。目には光が入ってきて、ものを見たり明るさを感じたりできます。耳には音が入ってきて、言葉を聞いたり、音楽を楽しんだりできるのです。ところで、口のまわりには顎や唇の筋肉が発達していて、普段はしっかりと閉めることができます。つまり必要な時以外は、原則、口は開くものではないのです。とすれば、口数が多くて口を開けていることが多い私は反省が必要ですが・・・。一方、目は、眠らなければ基本的に開いていますよね。ましてや、鼻や耳は一生開きっぱなしです。
                  北海道新聞 2012.11.21

口腔ケアをするとき、入れ歯を外す? 外さない?

「時間がかかるのに、なかなかキレイにならない」
「がんばっても食渣が残ってしまう」
 口腔ケアを実践している看護師さんから、よくこのような悩みを聞きます。そ
こで参考にしたいのが、Hさんの工夫です。

 皆さんは入れ歯の患者さんの口腔ケアをするとき、どのように行なっています
か? 多くの場合、入れ歯を外してから歯の表面を歯ブラシでブラッシングした
り、くるリーナで粘膜清掃しているのではないでしょうか。
 この方法、けっして間違いではありません。Hさんも以前はそうでしたが、
「もっと良い方法があるに違いない」と模索する中で、ついに短時間で効果を上
げるポイントを見つけ出したのです。

 その方法とは、まず入れ歯を外さないで、頬の内側に残っている食渣や入れ歯
の表面についた汚れを取り除くこと。そして、その後に入れ歯を外してケアしま
す。
「入れ歯を外すと頬がゆるんで、頬を排除しないと口腔ケアがやりにくいんです。
でも、入れ歯をしたままなら、歯が残っている人の歯ブラシをするときのように
簡単にできます! こうして食渣をある程度取り除いておけば、その後の入れ歯
を外したケアもすごくラクです。今では病棟の看護師全員、実践していますよ」

 とりわけ入れ歯が点在しているようなケースでは効率が増すといいます。また、
入れ歯を外すと患者さんは上手に嚥下をできないため、口腔ケア中のむせにつな
がります。それを防ぐ効果もあるそうです。
 簡単に試せる、ちょっとした手順の工夫。ぜひ、皆さんも挑戦してみてはいか
がでしょうか。“短時間で食渣を取り除ける”驚きと喜びを体験できるはずです。

入院した日から口腔ケアを行なえていますか?

C病院のある町は、町民のほとんどが高齢者であるうえに老老介護の世帯が非
常に多く見られます。たとえばご主人が入院すると、その準備は奥さまがしなけ
ればなりません。ですが、奥さまも自分のことで精一杯。入院の際に必要なケア
用品がそろわず、看護師さんは頭を悩ませていました。とくに口腔ケア用品は、
準備されないことが大半だったそうです。

 そこでC病院では、パジャマ・タオル・洗面器・コップなどをそろえた「アメ
ニティセット」を考案。患者さんが入院時にケア用品を準備しやすいシステムを
導入しました。もちろんその中には、入院した日からしっかり口腔ケアに取り組
めるよう、粘膜ブラシ(柄付くるリーナ)が入っています。

 それまで、口腔ケアを開始できるのは入院して3、4日経ってから。その時点
で口腔内はかなり汚染されてしまっていました。しかし、アメニティセット導入
後は、入院当日から唾液を分泌させる口腔ケアができるように。
 さらに! 口腔内の汚染が軽減されることで、患者さんの二次感染のリスクも
減少。ケア面の清掃保持だけでなく、キュア面の二次感染予防においても大きな
成果が出ているのです。

 看護師さんのひとりは言います。
「“口腔ケアをしたいのにできない”という精神的なイラ立ちがなくなり、口腔
ケアへの意欲がますます高まっています」

 皆さんの病院でももう一度、ケア用品を見直してみてはいかがでしょうか?
入院した日から口腔ケアを提供できることで、口腔の汚染からくる“誤嚥性肺炎
の予防”や“口の廃用予防”につながります。

今後も特定健診に歯科導入へのチャレンジを

12月6日(木)午後3時より第9回理事会が開催された。冒頭富野会長
は「北海道医療費適正化検討協議会委員として、特定健診(いわゆる
メタボ健診)に歯科を導入するチャレンジを行ってきた。特定健診は、
平成20年度から「高齢者の医療の確保に関する法律」下で取り組まれ
て保険者に義務付けており、国レベルで単年度1兆3,251億円の拠出が
保証され医療機関側へ支払われる。国民の対象者は40歳から74歳で人
口の約45%にあたる。口腔内の健康保持が全身の健康に関係している
との考え方が認知されつつも、現状では特定健診に関連付けるだけの
エビデンスが不十分であるとのことで歯科の導入は見送られたが、今
後も諦めずに次の機会に備えるつもりである」と述べた。報告事項で
は、北海道の病院が一極集中型でさらに広大な面積を有しているとい
う実情に鑑みて、「歯科治療総合医療管理料、在宅患者歯科治療総合
医療管理料の施設基準の見直しに係る要望書」を、道歯会として日歯
会へ送付することが担当役員より報告された。また道内の広い地域性
を考慮し、「施設基準取得のためのビデオ研修は講習会として認めら
れるか」という質問が出され、後日、担当役員より北海道厚生局に問
い合わせたところ、「施設基準の担当、本省に確認したが、本来ビデ
オ研修のような形は想定していない。対座の講習会であり、講師も受
講者もそれぞれが理解したと確認する状況が必要である。よって認め
られない」との回答があった。

歯科医師に禁錮2年求刑 インプラント死亡事故

東京都中央区の歯科医院で2007年、顎の骨に歯根を埋めて義歯を付けるインプラント手術で女性=当時(70)=を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた歯科医師飯野久之(いいの・ひさし)被告(68)の公判が14日、東京地裁(吉村典晃(よしむら・のりあき)裁判長)であり、検察側は禁錮2年を求刑、弁護側は無罪を主張して結審した。判決は来年3月4日。

 被告が歯根を埋めるために口の内部からドリルで削った下顎の部位について、検察側は論告で「動脈を傷つける可能性があることは予見できた」と指摘。弁護側は最終弁論で「当時は歯科医師の間で動脈損傷の可能性は知識として共有されておらず、過失責任はない」と反論した。

 起訴状によると、被告は07年5月22日、女性の下顎の骨を削った際、誤って動脈を傷つけて大量出血させ、血腫が原因の窒息による低酸素脳症などで翌日に死亡させたとしている。

内視鏡でスタッフ指導 日本歯大クリニック 「暮らしコンパス」歯科医の訪問食事指導

10月にオープンした東京都小金井市の日本歯科大口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニック。特徴は、歯科医師2人が組むチームが毎日、高齢者を往診していることだ。このチームは二つあり、食事の内容や食事中の姿勢を指導している。

 この日の訪問先は、東京都世田谷区の特別養護老人ホーム「フレンズホーム」。車いすに乗った女性(89)が診察用の部屋に入ってきた。認知症が進み、口を閉じて歯を食いしばっている。「一日3口を食べてもらうのがやっとです」と普段の様子を職員が伝える。

 加齢や病気で食べ物を飲み込む力が弱くなると、食べかすなどで繁殖した細菌が誤って気道に流れ込み誤嚥(ごえん)性肺炎を発症しやすくなる。高齢者では命にかかわるケースも多い。予防するには、口の中を清潔に保ち、食事方法を工夫するのが大切だ。

 「無理に口を開くと、口の周りが腫れてしまうんです」とスタッフが相談。「栄養が足りないと、腫れやすくなります」と歯科医師の佐々木力丸(ささき・りきまる)さんが答える。栄養状態の指標となる体重は、1カ月で1・3キロ減っていた。

 佐々木さんがお年寄りの鼻から内視鏡を入れる。テレビ画面にのどの奥の状態が映し出される。施設のスタッフが、食べ物がのどを通って食道に落ちていく様子を見つめた。指導内容を理解してもらうための工夫だ。

 この日の昼食を口からスプーンで入れると、のど元に達するのに時間がかかり、なかなか画面に映らない。だが、飲み込む瞬間、画面が真っ白になった。

 「真っ白になるのはのどが十分に収縮しているからです。飲み込むことはできるので、もっとのどを流れやすいように、食べ物のやわらかさを調整しましょう」と診察を締めくくった。

 また、食べやすくなるように、姿勢を調整するケースもある。高齢者の様子を見ながら「食事中の姿勢を安定させるため、頭を支えられるいすに座った方がいいですね」「60度まで背もたれを倒してみましょう」と指示すると、不在の担当者に伝えるために、スタッフが写真を撮影しメモを取っていた。

肺炎での入院が激減 経営面でもメリット 「暮らしコンパス」歯科医の訪問食事指導

歯科医師の往診を依頼してから、特別養護老人ホーム「フレンズホーム」(東京都世田谷区)では誤嚥(ごえん)性肺炎で入院する人が大幅に減った。

 高齢者が普通のかたさの食事を取っていたころは年間30~40人が入院していた。8年前、やわらかい食事を導入したことで、年約20人に減少。昨年から日本歯科大の診察を受けて以後、今年4月から10月の間に入院した人は1人になった。

 施設の経営面でのメリットも大きい。入所者が肺炎で施設から病院に入院すると、ベッドが空き施設の収入は減少する。空きベッドが少なければ経営は安定する。

 さらに、歯科医師の指示を受けて施設スタッフが高齢者の口の中を手入れし、食事を管理すると、介護保険から施設に報酬が支払われる。

医療費抑制に効果 栄養優先を提唱 「暮らしコンパス」歯科医の訪問食事指導

日本歯科大口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニック院長の菊谷武(きくたに・たけし)教授の話 高齢者はある時期から食後、うがいをすると、米粒や野菜かすが出るようになる。「入れ歯が合わない」「あごがやせた」と訴えられるが、舌と唇の筋力や脳の機能が衰え、かすがあるのを分からなくなるのが原因だ。

 こういう段階の人が普通の食事を無理に食べようとすると、窒息するか、のどを通らず栄養が不足する。口の感覚が落ちた人は、食べるときの姿勢や食べ物のやわらかさを調整し、栄養を取ることを優先する新しい考え方を提唱している。

 しっかり食べられれば、免疫力が高まり、病気になりにくくなる。歯科医師が訪問診療し、施設の管理栄養士らと協力して栄養指導ができれば、医療費の抑制にも効果があることをデータで示したい。過当競争が問題となっている歯科医師の職場も広がる。

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