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ガラガラうがいは喉の奥まですっきりするか

上を向いてガラガラとうがい(嗽)をすると、喉の奥まできれいになったような気がします。外出から帰宅すると手を洗って、うがいをすることはいいことです。ところで、上を向いてガラガラうがいをすると、ほんとうに喉の奥(咽頭腔の後壁や側壁)まで水やうがい液が行きわたり、口のみならず喉まですすぐことになるのでしょうか。レントゲン撮影をしながらガラガラうがいをしてもらいました。その結果は、いくらガラガラしても口の中の水は咽頭には入らず、口の中で空気と混ざって跳ねているばかりでした。いわゆるガラガラうがいのときは、軟口蓋と舌で口腔の後方を閉じ、水が咽頭に入らないようにしながら、その隙間から空気を前方に送り出し、口の中で水を弾ませているに過ぎないのです。
 しかし、うがい中に意識して軟口蓋と舌との閉鎖を緩めると、少しの水を咽頭に送ることもできますが、ごくわずかの水が咽頭側を伝うだけで、咽頭腔でガラガラと水が踊ることはありません。むしろ、水が多過ぎると、次の瞬間には水が気管に入り咽せ返ったり、鼻から吹き出したりして、踊っているのは水ではなく本人ということになります。このように、うがいは口の中をきれいにすることはできても、咽頭腔をきれいにすることはできません。咽頭腔は、水を飲み込んだときにはじめて拭われてきれいになるのです。

胎児の「のどちんこ」のつくられ方

妊娠中、胎児の成長過程で、「のどちんこ」はどのようにできてくるのでしょうか。口の中の空間を口腔といい、鼻の中の空間を鼻腔といいますが、胎生期の初期段階では鼻腔と口腔の境がなく、ひとつの腔として存在します。胎生7~8週、まだわずか約18~25mmの長さの胎児の口の中で大変革がスタートするのです。鼻腔と口腔に分割するように、左右前方から突起のようなものがしだいに伸びてきます。最初は前方の骨の部分(硬口蓋)、次にその後ろの柔らかい部分(軟口蓋)、ついには口蓋垂(「のどちんこ」)が形成されるのです。
 この突起が癒合するときのことをよく調べてみると、実に不思議なことが起こっています。左右の口蓋突起が接触すると、突起を覆っている上皮という皮が溶けてなくなるという現象があるのです。左右が強固に結合するには、中の組織がしっかりと結合しなければなりません。左右の口蓋帆挙筋も結合しなければなりません。そのためには、上皮の細胞が溶けて消えなければなりません。
 このように細胞が自滅することを、アポトーシスといいます。左右の突起が接触すると上皮のアポトーシスが起こるのです。これはからだの形成過程ではよく起こっていることです。決められた時間に決められた場所で、このようなアポトーシスは起こるのです。鼻腔と口腔の分離、わずか2週間の間にこのような口の中の大変革が起こるのです。できあがった「のどちんこ」は、胎児では活動するのでしょうか。それは「イエス」です。おかあさんのおなかの中で胎児の嚥下運動(飲み込み)というものは認められています。その際も、胎児の軟口蓋は前述のプログラムされた嚥下運動の一部を正確に行っているのです。

おなかの脂肪で歯茎再生…阪大グループが臨床へ

重い歯周病で失われた歯茎などを、患者自らの皮下脂肪から抽出した幹細胞を移植して再生する世界初の臨床研究を、大阪大歯学部付属病院(大阪府吹田市)の村上伸也教授らのグループが始める。

 動物実験では再生効果が確認されており、先月下旬、厚生労働省のヒト幹細胞に関する審査委員会に研究計画を提出した。認められれば年内にも実施し、安全性や有効性を確かめる。

 歯周病は成人の約8割がかかり、歯を失う最大の原因になっている。感染による炎症で、歯茎と、その下の歯槽骨やセメント質などの歯周組織が破壊され、口臭の原因にもなる。

 臨床研究は、中等症から重症の患者12人が対象。局所麻酔をした患者の腹部から皮下脂肪を30~10cc採り、歯周組織の元になる幹細胞を抽出する。3週間、培養した後、歯槽骨が欠けた部分に移植する。

患者を生きる 20年最後のすき間閉じた 子どもの病気 口唇口蓋裂5

「口唇口蓋裂」の状態で生まれ、歯ぐきの骨が欠けていたAさん(20)に、骨を移植する計画が持ち上がった。中学3年生のときだった。2週間ほど入院するため、中学卒業後の春休みに上の歯ぐきの左側、高校1年生の夏休みに上の歯ぐきの右側に、すねの海綿骨を移植した。生まれてから約20年。口唇口蓋裂の治療に区切りがついた。足りない歯を補う補綴治療については検討中だ。今は大学で生物学の勉強をしながら、名古屋市科学館の展示室ボランティアや国際協力団体などの活動もしている。
             朝日新聞 2012.2.25

患者を生きる 歯が不足 骨移植勧められ 子どもの病気 口唇口蓋裂4

「口唇口蓋裂」の治療を続けていたAさん(20)は、もともと歯ぐきの中の「歯の元」になる部分が少なく、乳歯も永久歯も10本ほど足りなかった。上の歯ぐきの骨は、2番目の前歯から犬歯が生える部分にかけて、左右2ヵ所が大きく欠けていた。この影響もあり、中学生になっても上の乳歯の前歯4本と犬歯2本の計6本がなく、奥歯の一部も生えてこなかった。上下の歯がかみ合うのは奥の1点だけ。小さい頃から食事は、ほぼかまずに、そのままのんでいた。かみ切りにくいタコやイカのほか、ゴボウやエノキなど繊維質のものが特に食べにくかった。食べ物の好き嫌いはなかったが、1回の食事に1時間以上、ときには2時間近くかかることもあった。
 歯ぐきの骨がない部分には歯が生えない。このため、自分の腰骨やすねの骨から「海綿骨」という骨髄の骨を少し取り、歯ぐきに移植する治療法が広がりつつあった。骨移植は一般的に、犬歯が生え替わる前の7~9歳のころに検討することが多い。骨移植の際は、歯ぐきの粘膜を切り開いて「ポケット」を作り、そこに海綿骨を詰めて閉じる。海綿骨は体内に吸収され、歯ぐきの骨が新たにできる。うまくいくと3ヶ月ほどで骨が定着し、歯列矯正によって永久歯に移動する土台になる。
             朝日新聞 2012.2.24

歯科医師会の広報戦略策定へ

第15回理事会が3月22日(木)、歯科医師会館で開催され、役員合宿勉強会を4月18日(水)、19日(木)の両日「国民に向けた多角的な広報の展開ー歯科医師会の広報戦略ー」をテーマに歯科医師会館で開催することを確認した。
 日歯理事者や日本歯科総合研究機構関係者、広報委員会委員を始め、日本歯科医学会や8020推進財団、日本学校歯科医会、日本歯科衛生士会、日本歯科商工協会等の関係団体が一堂に会して集中討議する。
             日歯広報 4月15日

日本人の歯並び低評価  「医療新世紀」

日本に住む外国人の8割近くが「日本人は歯並びが悪い」と感じていることが、歯列矯正用具の輸入販売会社アライン・テクノロジー・ジャパンの意識調査で分かった。

 3月、在日外国人向け雑誌の読者モニター100人を対象に質問した。

 日本人の歯並びに対する印象については76%が「悪い」と回答。「どちらでもない」が20%で、「良い」はわずか4%にとどまった。

 自由記述式のコメントでも「日本人の健康意識の高さを考えると、歯並びの悪いことに驚く」(米国人男性)、「先進国で最低の歯並び」(カナダ人男性)、「出っ歯と八重歯の人が多い」(中国人女性)―など、厳しい意見が続出した。

患者を生きる 「プレート入れています」 子どもの病気 口唇口蓋裂3

手術のあとも、唇には傷あとがあり、鼻も変形していた。上あごの前方の骨がある硬い部分には、形成不全によるすき間が、生まれたときのまま開いており、樹脂製のプレートでふさいでいた。小学校に上がると、プレートを見たことがない新しい同級生たちは「それ何?」と、何度も聞いてきた。そこで毎年春、みんなの前でこう話した。「ぼくは口唇口蓋裂なので、口にプレートを入れています。給食の後に洗います。時々、病院に行くので早退します。」嫌なことをいう子は同学年にはいなかった。
                   朝日新聞 2012.2.23

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