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口の機能回復 空気漏らさず発音改善

東京都世田谷区の女子大生Aさん(19)は以前、話すことが嫌で仕方がなかった。鼻にかかった声で、たとえば「バビブベボ」と言おうとしても、どうしても「マミムメモ」になってしまう。発音を直したいと、高校2年の3月、昭和大学歯科病院(東京都大田区)の口腔リハビリテーション科を受診した。
 バ行の音は、口に封じ込めた空気を破裂させて出す。口は鼻の奥に通じているため、空気を閉じ込める時、上あごの奥の軟らかい部分「軟口蓋」がせり上がり、鼻への通路を塞ぐ。ところがAさんの場合、軟口蓋がよく動かず、息が鼻の方に漏れてしまう。これが、「バ」が「マ」になる原因だった。
 別の病院での詳しい検査の結果、首の骨の先天的な変形によって神経が圧迫され、軟口蓋がよく上がらないことが分かった。そこで同科が作ったのが「スピーチエイド」と呼ばれる発音補助装置。上あごにはめるプレートと、やや小さな栓が、針金でつながっている。栓の大きさや位置を調整して、栓の方を口の奥に入れることで、口と歯名の通り道を塞ぐことができる。
           読売新聞 2011.8.25

口の機能回復 「顎義歯」定期的に調整を

○さんは2009年6月、がん研有明病院(東京都江東区)の頭頸科で口腔がんの手術を受けた。きっかけは、奥歯がぐらつくような違和感だった。近所の歯科医院を受診すると、大学病院での検査を勧められた。結果は、進行がん。右上奥の歯肉のがんが、鼻から耳や目の近くに及んでいた。
 「口にがんができるなんで、想像もしなかった」手術では、患部を大きく切除した。空洞になった部分には、腹部の皮膚や脂肪を、はがき2枚分ほどの大きさにはがして移植した。しかし、上あごが欠けたままでは、飲食や発音に支障がでる。院内の歯科で応急の義歯を作ってもらった後、がん研有明病院頭頸科と連携している昭和大歯科病院口腔リハビリテーション科(東京都大田区)を紹介された。
 同科は、歯科医と言語聴覚士が協力して、食べる機能や言葉のリハビリを行う診療科。顎義歯は新しい技術ではないが、同科では発音やのみ込みの機能を細かく評価し、顎義歯の調整に生かしている。こうした診療科は国内では数少ない。
 ○さんは顎義歯を作ってもらい、同時に開口訓練や口のマッサージなど、自宅で行うリバビリの指導も受けた。現在は普通に食べられるし、辛い、がんの再発もない。ただ、リハビリを休むと、すぐ口が開きづらくなる。定期的な通院は欠かせない。
           読売新聞 2011.8.24

舌切除 装置付け食事

東京都港区の女性(69)は2005年12月、都内の病院で舌がんの手術を受けた。舌のほとんどを切除し、舌の根元だけが残る。舌がないと、食べ物を口の中でまとめられず、うまくかみ砕けない。口の奥に食べ物を押し込み、のみ込むこともできない。このため、女性は退院時には、腹部に穴を開けて、チューブで胃に栄養剤を送る「胃ろう」が設けられた。
 その後、昭和大歯科病院(同大田区)の口腔リハビリテーション科に通った。当初、口では一切食べられなかった。おなかの胃ろうの弁を見られるのが嫌で温泉にも行けない。弁の定期交換も痛い。「胃ろうを外すこと」が目標になった。同科教授の高橋浩二さんらは、上あごと下あごの内壁を厚くするプラスチック製のプレートを作った。これを歯にかけて装着すると、短い舌でも上あごに触れやすく、食べ物に圧力をかけやすい。女性は、この装置を使って流動食を飲み込む訓練を始めた。
 食べ物が誤って気管に入り、誤嚥性肺炎になったこともあるが、次第に流動食なら口で十分食べられるようになり、09年10月、3年半ぶりに胃ろうを外せた。「本当にうれしかった。今は東京近辺のあちこちの温泉を楽しんでいます」言葉の発音に障害は残るが、言語聴覚士の指導や孫とのおしゃべりのおかげで、今では電話に出られるまでになった。
           読売新聞 2011.8.23

グリコ、歯守るフッ素ガム

江崎グリコは歯から溶け出したカルシウムを歯に戻す再石灰化を促し、虫歯の発生を抑制するフッ素を開発した。緑茶から抽出した成分を使って食品に応用しやすくし、さらにポリフェノールを取り除くことでカルシウムの歯への吸着を妨げる反応を抑えた。特許を持つ水溶性カルシウムと組み合わせたガムを歯科医院での販売用に商品化する。
           日経産業新聞 2011.10.13

科研製薬、歯周病薬を申請 歯槽骨の再生を促す効果

科研製薬は2011年度内に歯周病治療薬候補の製造販売承認を厚労省
に申請する。臨床試験(治験)を終了し、2013年にも承認を得て、
その後の発売を目指す。重度の歯周病の場合外科手術を行うが、歯
槽骨が失われるとほとんど元に戻らないため、この新薬候補を使え
ば歯槽骨が再生し、治療満足度を上げられると期待する。「KCB
-1D(開発番号)」は、体の組織形成に関わる「塩基性線維芽細
胞増殖因子(bFGF)」を遺伝子組み換え技術を使って作り出し
たバイオ医薬品で、この因子は細胞の増殖や分化を調節し、皮膚や
血管、骨などの組織形成に関わるため、同社は歯槽骨を再生する効
果が見込めるとみている。

歯科診療報酬支払件数 被災者避難地域で大幅アップ

2011年7月の全国の歯科診療報酬支払件数は対前年同月と比較し、
2,3%の成長、金額ベースでは0.3%の成長となった。ちなみに北海
道は、件数で1.1%の成長、金額ベースで2.2%減少している。特記
すべき点としては件数において、新潟13.5%、鳥取14.4%、秋田
9.0%、茨城5.6%、埼玉4.9%の成長となり、これは被災者が避難
している地域で、診療費無料を利用し受診が大幅にアップしている。
2006年以降、件数は年平均成長率(CAGR)で0.6%増加、支払総額
は0.5%減少しており、支払単価は年平均1.1%減少している〈支払
基金医療費統計情報〉。 2011年7月から9月における1世帯当たりの
歯科診療への平均月額出費金額は前四半期と比較し15.8%下降、
2010年同期比では増減なしであった(政府統計家計調査)。しかしな
がら、2009年の平均と比較し未だに低調であり、個人消費の急速な
回復が望まれる。

歯科医院向け歯磨き カオチン化セルロース新配合 フッ素の歯面滞留性向上

ライオンは21日に、歯科医院向けで主力のう蝕予防歯磨きを初めて全面刷新する。カオチン化セルロースを新たに配合し歯面へのフッ素滞留性を高めたのが最大の特徴。低発泡・低香味で、口腔内にフッ素が保持されやすくなる少量洗口に適した組成を伝える啓発活動も展開する。3年後には取り扱い医院を2割増のの4万軒に伸ばし、売上高(出荷ベース)を前期の3億6000万円から3割増の4億7000万円に引き上げる。
 歯面吸着製の高いカチオン化セルロースを新配合することで、疎水性相互作用を利用した新しい組成を開発した。従来は泡立ちや香味で物性が変わることがあったが、独自の技術を用いて適切にコントロールできるようになったという。加えて、プラスの電荷をもつ同成分がマイナスのフッ化物イオンを静電作用により引きつけ、フッ素の歯面滞留性を2割高めた。
           化学工業日報 2011.10.17

冷凍保存の歯移植

「親知らず」などの抜いた歯を画像とともに保存し、本人が事故などで歯を失った場合にそれを移植する治療を始めた。抜いた歯は広島大学が開発した技術を使い、同社が最長20年間、凍結保存する。この治療法だと血管・神経も再生する場合が多く、元の歯に近いかみごたえの回復が期待できるという。
 今回の治療で移植準備としてCT画像を基に立体モデルを作るのは、歯槽骨を削る際、寸法合わせのために移植する歯を入れたり出したりして歯の表面をいためないようにするためだ。歯の表面には「歯根膜」があり、土台となる歯槽骨の再生を促す物質を出すなど移植成功のために重要な役割を担う。歯と骨の間の”クッション”となり自然なかみごたえを出すのにも役立つ。
           日経産業新聞 2011.10.20

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