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唾液で疲れ測定 ヘルペスウイルスの量に注目、1年以内に実用化へ

だるい、眠い、体が重い--。日本人の6割が感じているとも言われる疲れ。疲れは痛みや発熱と同様、体の異常を知らせるアラームだ。これまで客観的に測る物差しがなかったが、最近新たな測定法が開発されつつある。その一つが、唾液(だえき)の中にいるウイルスの量を調べるというもので、1年以内に実用化できそうだという。【斎藤広子】

 東京都内に住む会社員の女性(32)は昨年の育児休暇中に味わった悔しい思いが忘れられない。昼夜を問わない乳児の世話でへとへとに疲れていたが、「仕事を休んで家にいるんじゃないか」と、夫は家事も育児もほとんど手伝ってくれなかった。「いくら『疲れた』と口で言っても説得力がなくて困った。『これだけ疲れているから手伝って』と数値で示せる材料が欲しかった」と振り返る。

 疲れはこれまで客観的な指標がなく、どのくらい疲れているのか、自己申告に頼るしかなかった。東京慈恵会医科大の近藤一博教授(ウイルス学)は「疲れと疲労感は違う。疲労感は報酬や達成感などで吹き飛んでしまうこともあるが、疲れは体を休めないととれない」と話す。自己申告では主観的な「疲労感」は測定できるが、その人の本当の心身の「疲れ」はなかなか分からなかったという。

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 近藤教授らのグループは疲れると唇にヘルペスという水疱(すいほう)ができるのをヒントに、ウイルスを使った新たな疲労の測定検査を開発した。唇のヘルペスはヘルペスウイルスの一種が引き起こす。このウイルスの仲間は通常は体内に潜伏し、疲労が蓄積するなど宿主の体が危機的な状況になると、別の体に移動しようとして再活性化し、口の中に集まってくる性質を持っている。

 近藤教授らは、この仲間の中でも、ほぼ100%の日本人が乳幼児期に感染し、突発性発疹(ほっしん)を引き起こすHHV(ヒトヘルペスウイルス)6とHHV7の唾液の中の量を測っている。HHV6は一時的な疲労、HHV7は慢性疲労を測定するのに適しているという。

 検査では、4センチ弱の円筒形のコットンを約3分間、かまずに口に含んで唾液を吸収させ、専用容器に入れる。近藤教授の研究室では、唾液の中からウイルスのDNAを分離し、量を調べている。

 近藤教授らが定時の仕事をしている事務職の20人と、1日5時間以上残業している営業や研究職の40人の唾液でウイルスの量を測ったところ、定時の人では唾液1ミリリットル中のHHV6が平均500個、HHV7は平均5000個だったが、残業が多い人ではどちらも10倍以上検出されたという。残業が多い人ほどウイルスの量も多かった。

 これまでの調査では、若手のサラリーマンや工事現場で働く作業員はどちらかというとHHV6が高い傾向があり、年配の管理職の会社員はHHV7が高い人が多かった。近藤教授は「疲れはすべての病気のきっかけになるといっても過言ではない」と話す。HHV6が高い人は一時的な体の疲れなので1日ゆっくり休むこと、HHV7が高い人は疲れが常態化しているので生活そのものを見直した方がいいとアドバイスしている。

 現在、HHV6とHHV7を使った検査を受けられるクリニックの開設準備が東京都内で進んでおり、1年以内には一般の人も検査を利用できるようになるという(自由診療)。

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 疲労に関する国内の調査では、文部科学省研究班が04年、大阪府内に住む1万人(有効回答2742人)を対象に実施したところ、56%が「現在疲れている」、39%が「疲れが半年以上続いている」という結果が出た。

 一方、厚生労働省は09年4月、客観的な疲労の評価法と診断指針の作成を目指す研究班を発足させた。HHVをはじめ、自律神経のバランスや、血液中の活性酸素の割合などを測定する検査を組み合わせて、新たな疲労の診断方法の確立を進めている。

 班長の倉恒弘彦・関西福祉科学大教授は「例えば内科では、体温や血圧、血液中の白血球の数などで診断するが、疲れにはこういう指標がなかった。疲れを評価する複合的な物差しが出来上がれば、その人にとって何が最も適切な治療なのかもわかる。全国のどの病院でも適切な疲労の診断ができるようにしたい」と話す。11年度にも研究結果をまとめる予定だという。

同期野田先生教授就任おめでとうございます。

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 9月25日に同期の野田先生が岩手医科大学の教授に就任することになりました。札幌にて急遽参加しました。普段なかなか会えない同期と話に花を咲かせました。今年は、卒業20年で集まる予定です。

よく噛んで食べるとGLP-1とPYYの分泌が亢進する

日本では昔から、よく噛むことが健康にいいと言われてきたが、そのことの科学的な根拠の1つがGLP-1やPYYなのかもしれない。健常人を対象にした研究で、そしゃくの回数が血中のGLP-1とPYY濃度に影響する可能性が示唆された。9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催される第46回欧州糖尿病学会(EASD2010)で、奥羽大学(福島県郡山市)薬学部疾患薬理学教授で、同大付属病院内科の衛藤雅昭氏(写真左)らが発表した。
腸管のL細胞から分泌されるホルモンであるGLP-1とペプチドYY(PYY)は、血糖や中性脂肪、体重のコントロールに重要な役割を果たしていると考えられている。GLP-1はグルコース濃度に応じて分泌され、インスリン分泌を刺激する。一方のPYYは、視床下部の受容体に作用して食欲を抑えて食べる量を減らす。ともに食後に血中濃度が上昇する。
日本では昔から食事の際によく噛むことは健康にいいと考えられてきた。しかし、そしゃくとGLP-1とPYYの関係についての研究はほとんどない。そこで衛藤氏は、健常人を対象に、そしゃくの回数と食後のGLP-1とPYYの血中濃度の関係を調べた。
試験では、22人(男性11人、女性11人)を対象に調査を行った。平均年齢は37±2歳。平均BMIは23.1±0.8kg/m2、FPG(空腹時血漿グルコース)は96±3mg/dL、平均血圧は112±4/69±3mHgだった。
被験者は、夜間の12時間の絶食の後、翌朝にテストミールを食べた。1口につき5回ずつ噛みながら20分間で食事をする日と、1口につき30回ずつ噛んで20分間で食事をする日を設けて、両者を比較した。
血中のGLP-1とPYYは、食前と食後1時間に測定した。テストミールはパン、バター、キャベツ、バナナ、牛乳、ゆで卵とし、総カロリー630kcal、炭水化物49%、タンパク質15%、脂質30%、コレステロール235mg、食物繊維4.4gに設定した。
試験の結果、食前の血しょうPYY濃度は、5回そしゃくした場合は平均41.0pmol/L、30回そしゃくした場合は平均41.7 pmol/Lと、両者に差はなかった。しかし、食後60分時の血中のPYY濃度では、5回そしゃくした場合は46.1pmol/Lだったのに対し、30回そしゃくした場合は65.4pmol/Lと、30回そしゃくした場合に血しょうPYY濃度が有意に高かった(p<0.01)。
一方、血中GLP-1の濃度については、食前の測定では、5回そしゃくした場合(平均4.8pmol/L)と、30回そしゃくした場合(平均5.0pmol/L)に差はなかったが、食後60分時には、5回そしゃくした場合は18.9 pmol/L、30回そしゃくした場合は25.1pmol/Lであり、GLP-1においても30回そしゃくした場合に血しょう濃度が有意に高かった(p<0.01)。
衛藤氏は、このほかにも、食後の血糖値や血中インスリン濃度、中性脂肪について、そしゃくの回数による違いを調べた。血中の中性脂肪は食後120分時に測定した。すると、5回そしゃくした場合は170mg/dL、30回そしゃくした場合は147mg/dLであり、そしゃく回数が多い方が血しょうの中性脂肪値が低かった(p<0.05)。食前と食後60分の血糖値や血しょうのインスリン濃度については、5回そしゃくした場合と、30回そしゃくした場合で有意差は認めなかった。
これらの結果から衛藤氏は、「今回の研究は健常人を対象にしたため、食後の血糖値に差が見られなかった可能性がある。今後は、糖尿病患者を対象に研究を行い、さらに、より長い期間での調査を行いたい」と話した。

児童生徒の虫歯 10年で半減

県内の小中学生、高校生1人当たりの虫歯の平均本数が10年前の半分程度に減ったことが、県教委の調査で分かった。就学前の歯磨き指導の普及による意識向上、歯磨き用品の改良などが背景とされる。一方で歯周炎など歯茎の病気は虫歯に比べてまだ関心が低く、対策も「まだまだ」(専門家)の状態。だが、食生活が乱れがちな高校生を中心に症状が出ている児童・生徒は相当数いるとみられ、県も「次の課題は歯茎」として啓発に力を入れる。
 子供の虫歯が全体的に減ってきたことで、虫歯が児童虐待の早期発見につながるサインとしても注目されている。虫歯の多い児童はネグレクト(育児放棄)などの虐待の結果、歯磨きの習慣がなかったり、歯の治療を受けていない可能性もあるためだ。実際、東京都や岩手県の歯科医師会の調査では、虐待で保護された児童は虫歯の本数が平均より多かった。
                   上毛新聞 2010.8.5

外気はジメジメでもお口の中は乾燥注意報!

日頃から口の渇きを感じる人は増加傾向にあり、国内推定800万人、潜在的には4人に1人といわれる。慢性的な口腔乾燥(ドライマウス)は強い口臭、虫歯・歯周病、消化不良、ウイルス感染などの原因になる。とくに中高年は積極的に唾液の分泌を促そう。
 【自律神経の乱れで唾液が減少】
  唾液の分泌は自律神経によってコントロールされている。不規則な生活や強いストレスがあると分泌低下を起こしやすい
 【よく噛む食習慣が大事】
  唾液の分泌低下を起こす薬剤は種類によって、高血圧の薬(降圧剤、利尿剤)、抗ヒスタミン剤、精神疾患の薬(抗うつ剤、抗不安薬)、鎮痛剤などがある。口の渇きが強いようなら主治医に相談して薬を変更してもらおう。
                   夕刊フジ 2010.8.11

和食で回数増やそう

食物をよくかむのは、消化のためだけではない。満腹感をもたらすので食べ過ぎを防いだり、唾液の分泌を促進して、口内を清潔に保ったり。脳の血流を増すため、認知症の予防にも効果があるとされる。いいことずくめなのに、現代人がかむ回数は、弥生時代の6分の1、戦前と比べても半分以下と激減している。食生活の変化で、軟らかい食物が増えたためだ。
 歯科医師で料理研究家の田沼敦子さんは「かむ回数を増やすには、和食がよい」という。一般的に、和食は脂肪が少なめで食物繊維が豊富なので、同カロリーの洋食より量が多く、たくさんかむ必要がある。食材では豆類、ゴマ、ワカメや昆布などの海藻類、野菜類、魚やイカなどの魚介類、シイタケなどのキノコ類、イモ類がお勧め。かみごたえがあるうえ、食物繊維やビタミン、ミネラルを多く含み、栄養バランスにも優れている。
                   読売新聞 2010.8.21

口腔から“がん”を予防・軽減

独立行政法人国立がん研究センター(嘉山孝正理事長)と日本歯
科医師会(大久保満男会長)は8月31日、がん患者における口腔内の
合併症の予防・軽減を目的とした地域医療連携ネットワーク事業の記
者発表会及び調印式を行った。講習を受け修了証を得た歯科診療所
がセンターと連携しながら、がん患者の治療やケアを行うもので今年
度は、東京、千葉、神奈川、埼玉を対象に行う。来年度以降、順次拡
大し、平成25年度までに全国のがん診療連携拠点病院377施設との
連携が目標。

歯を話し あごを守る

口を開閉しづらくなったり、あごを動かすと痛みや異音が生じたりする「顎関節症」。近年、若い女性を中心に症状を訴える人が増えており、日本人の4割がかかるとも言われている。これまではかみ合わせの悪さが原因と考えられてきた。たが、歯科医療が進歩した現代の方が、昔に比べて患者が多いことから、「むしろ、あごに負担のかかるような生活習慣が影響しているのでは」と東京医科歯科大学の木野孔司准教授は見る。
 木野准教授によると、本来、上下の歯が接触するのは、食事や会話の間くらいで、1日に合計20分にも満たないが、顎関節症患者の約8割に上下の歯を付け続ける癖が見られる。歯を軽く触れ合わせるだけでも、あごの筋肉が緊張するため、長時間続くと負担になる。
                   読売新聞 2010.8.20

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