記事一覧

唾液タンパク質データベースが個別化医療を変革する

米国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR)によって資金提供された「Human Salivary Proteome Wiki」は、唾液タンパク質についての公開データプラットフォームとして2019年にリリースされた。そこでは、唾液プロテオーム、ゲノム、トランスクリプトーム、およびグライコーム等に関する情報が幅広く集積・公開されている。
25日にJournal of Dental Researchに掲載された研究論文では、ニューヨーク州立大学バッファロー校などのチームによって、唾液ウィキの仔細が解説されている。多数の独立した研究から科学的エビデンスを集めるこのウィキでは、検索および分析ツールを研究者・臨床医に提供することで「唾液の動的で複雑な性質を探求するのに役立つ」としている。
バッファロー大学によるニュースリリースでは、当該プロジェクトを率いるStefan Ruhl教授の言葉として「このデータベースは、口腔および全身疾患の診断・リスク予測・治療のために、唾液プロテオームの可能性を最大化することができるものだ」とのコメントを報じ、唾液タンパク質データベースが個別化医療の強化において果たす役割を強調している。

口腔がんリスク予測のためのAI利用

口腔がんの予後改善には早期診断と早期治療が欠かせない。サウジアラビア有数の国立大学であるJazan Universityの研究チームは、危険因子や症状、臨床病理所見などから口腔がん発症のリスク予測を行う人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルの開発に取り組んでいる。
チームが4日、Journal of Oral Pathology & Medicineに公表した研究論文によると、平均年齢63歳、73名からなるデータセットに基づいてANNの構築を行った成果を明らかにしている。ANNの感度と特異度はそれぞれ85.71%、60.00%を示し、全体の予測精度は78.95%となった。
あくまで予備的研究の域を出ないスモールスタディだが、本研究成果は「口腔がんスクリーニングと診断への機械学習手法の有用性」を示唆するものとして、研究チームは歯科口腔領域における一定の貢献を強調する。歯科診療所など、日常診療でのリスク予測と、同定されたハイリスク者への早期介入を可能とするシステム実現が期待されている。

口腔がんの治療選択を個別最適化するAIシステム

米オハイオ州クリーブランドに所在するケースウェスタンリザーブ大学などの研究チームは、口腔がんの治療法選択を患者ごとに個別最適化するためのAIシステム開発に取り組んでいる。中心となる研究センター・CCIPDは、特にがん治療分野を中心として60を超える特許を保有するなど、精密医療におけるAI活用の先導的地位を確立している。
研究チームは6日、同大学公式ウェブサイトを通じ、米国立がん研究所(NCI)から5年間で330万ドルの研究助成を受けて、今回のシステム開発を加速させることを明らかにした。チームのテクノロジーは高度なコンピュータビジョンおよび機械学習技術に基づくもので、デジタル化された口腔がんの組織スライドから「がんと免疫細胞、および細胞間の空間パターン」を認識する。ここから、がんの悪性度や手術適応、化学療法および放射線治療の必要性などを識別するAIの開発に結びつけている。
これまでの治療法選択は限られたパラメータに基づく、比較的大枠での分類であったため、手術単独療治療が適応となる群にも、本来は放射線治療を加えるべきサブセットが一定数混じることなどが問題となってきた。口腔がんは米国におけるがん罹患の3%を占め、世界では年間40万人の新規症例が報告されている。チームの新しいAIシステムが潜在的に果たす役割は大きく、治療戦略策定を根本から書き換えるものとなる可能性もある。

、第115回歯科医師国家試験の合格発表④

新卒合格者・合格率では東歯大(121人・96.0%)、松本歯大(75人・90.4%)、日歯大新潟生命歯学部(40人・88.9%)、昭和大学歯学部(85人・88.5%)、大阪歯科大学(58人・82.9%)の奮闘は評価されそうだ。改めて指摘する必要があることは、公表され数字に一喜一憂することでなく、各歯学部・歯科大学は、以後に学内での対応をさらに進めるべきである。社会から求められる歯科医師も変わりつつあり、今回の新型コロナ感染症拡大により、歯科界・歯科医師に対して問題提起された。卒前教育は当然であるが、卒後の研修・教育・臨床が問われてくる。それは地域に関係なく、医療を担う“歯科医師”としての自覚が問われる。
そこで、歯科界全体の今後を見据えると、歯学部・歯科大学としても安定・堅実な経営を展開できるのか検討を余儀なくされている時期にきている。様々な憶測が毎年飛び交う中で、社会は待ってくれない。薬学部・薬科大学も厳しい環境に置かれており、マスコミでは、“淘汰”という言葉を使い特集をしている点である。そこで、看過できないのが廃部の目安として、「入学定員充足率」「薬剤師国家試験合格率」「6年間で卒業したことを示す卒業率」を挙げている点である。かつて中医協委員長を務めた森田朗津田塾大学教授は「大前提が人口減少は継続すること。医科・歯科領域への需要をどう判断するのか。何が求められているのか。真摯に謙虚に検討すべき時期は、既に来ているのです」と私的意見として繰り返す強調していた。

第115回歯科医師国家試験の合格状況③

国公立歯学部・歯科大学の全体:73.0%、新卒者:81.3%、合格者数は、全体:571人、新卒:481人であり、例年通り高い合格率を示している。また、特別な内容はないとされる。一方、私大大学別新卒の合格率を見ると、全体58.0%(新卒:75.4%)であった。個別では、東京歯科大学が、合格者総数127人、新卒合格数121人、合格率96.0%と断トツのトップであった。歯科界歯科大学でのブランドを構築・維持継続を続けていることを示したことになった。特に、合格者数:121人であり、岩手医科大学歯学部:27人の約5倍になっている。
この事実には、以前から関係者のコメントとして、「本学の合格者数を踏まえて評価してほしい。100人以の合格者数を出すのは大変なことです。大学教員・学生の並々ならぬ、普段の努力に敬意と感謝です。互いに意識して自ら勉強しているかもしれないですね」と東歯大関係者のコメントがあった。他大学の関係者からは「本学と比較することでないが、大学自体がそのような雰囲気になっているのかも。本学も昨年よりは、アップしてほしいと頑張っています」(都内大学関係者)と素直に評価していた。もう一つ懸念されているのが、既卒受験者の合格率である。国公立大:約40%代、私大:約30%代である。今回では、長大:8/23⇒34.8%、徳島大:6/17⇒35.9%。松本歯大:4/26⇒15.4%、奥羽大学:13/68⇒19.1%であり、厳しい数字が露呈している。既卒受験生のモチベーションの維持、環境、年代からの様々な要素が勘案されるが、歯学部卒でも、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士になれないという現実も課題かもしれない。

第115回歯科医師国家試験の合格状況②

2022年3月16日、第115回歯科医師国家試験の合格発表があった。恒例であれば、会場になっていた厚生労働省低層講堂で資料が置かれ、会場に来た人が資料を逐次取って行き、中には、その喜びを互いに共有する姿もあった。今回は、一階フロアーで職員が医師・歯科医師のそれぞれの全体・大学別の合格率などの資料を配布。イス席に座り待っていた人に順番に配布形式になった。以前からネットでわかるようになっていたが、わざわざ会場に来て、自分の受験番号を確認して合格を喜び・安堵感を経験する受験生の光景があった。今回は全くなく、事務作業として資料配付を淡々したことで、10分程度で資料を求める人の姿は見えなくなっていた。厚労省事務員は、「事務としては、簡潔に終えて楽です。昔の光景が懐かしく思うほどです」と述べていた。
注目の合格率は、全体:61.7%、新卒者:77.1%、合格者数は、全体:1,969人、新卒:1,542人であり、この数字は最近の傾向と同様であった。全体合格率は65%前後、合格者数2,000人前後の数字は、歯科医師国試としての定着した感があるが、以前からこの定着感に疑問の声があったが、今回も繰り返すことになった。資格試験・選抜試験では意味合が全然違ってくるが、歯科医師の需給問題との位置づけとして暗黙の了解とされているとも見られ、表向きの議論として出てこないのが現実である。参考として示しておくが、比較される医師国試の合格率は、全体:91.7%、新卒:95.0%である。歯科医師とは歴然の相違がある。

第115回歯科医師国家試験の合格状況

厚生労働省が2022年3月16日に発表した第115回歯科医師国家試験の合格状況によると、学校別で合格率がもっとも高いのは、「東京歯科大学」94.8%。なお、予備試験合格者の合格率は100%だった。 第115回歯科医師国家試験は、2022年1月29日と30日に施行された。3月16日午後2時から厚生労働省のWebサイトで受験地別に合格者の受験番号が掲示されている。 歯科医師国家試験の合格率は61.6%、新卒者の合格率は77.1%。平均合格率は、国立が72.4%、公立が76.8%、私立が58.0%、認定や予備試験のその他は33.3%だった。学校別合格者状況によると、合格率がもっとも高いのは「東京歯科大学」94.8%、ついで「昭和大学歯学部」81.4%、「岡山大学歯学部」81.0%。なお、歯科医師国家試験の予備試験合格者は新卒1名が受験して1名合格し、合格率が100%だった。新卒者の合格率が90.0%を超えたのは、「東京歯科大学」96.0%、「松本歯科大学」90.4%、「岡山大学歯学部」90.2%の3校だった。

口唇口蓋裂児の「精神運動発達」の遅れ、成長に伴い減少する傾向②

最も大きな違いは24か月のコミュニケーション、それ以降は差が減少

 環境省が実施している子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の約9万2,000人を対象に、そこに含まれる口唇口蓋裂児(195人)について、生後6か月~3歳までの精神運動発達について解析を行った。子どもの精神運動発達の評価には、日本語版Ages and Stages Questionnaire第3版(J-ASQ-3)を用いた。生後6か月~36か月まで、6か月毎に、保護者によってJ-ASQ-3を評価し、口唇口蓋裂を伴う子どもと先天異常を伴わない子どものJASQ-3の点数を比較した。

 18~36か月時点での話す・聞くなどの「コミュニケーション」、18・24か月時点での立つ・歩くなどの「粗大運動」、30・36か月時点での手順を考えて行動するなどの「問題解決」、6・36か月時点での他人とのやり取りに関する行動などの「個人・社会」で、口唇口蓋裂を伴う子どもが低い点数を示し、発達が遅れていた。最も大きな違いは24か月のコミュニケーションにおいて認められたが、それ以降は差が少なくなっていき、同様の変化が粗大運動でも見られたという。

手術歴や言語訓練の効果が機能発達・回復に貢献しているのか、今後検討が必要

 今回の研究成果により、生後6か月~36か月の間の口唇口蓋裂を伴う子どもの精神運動発達は、先天異常を伴わない子どもと比較して遅れる傾向があるが、3歳時点までにさまざまな機能の追いつきが認められることが明らかにされた。

 「過去のさまざまな介入研究の結果からも、臨床的介入(外科手術や言語療法、歯科治療など)が、口唇口蓋裂児の適切な機能発達・回復に貢献していることが予想される。本研究で用いたデータの内容ではそのことを示すことができないため、今後もさらなる検討が必要だ」と、研究グループは述べている。

過去ログ