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経口栄養が全身の健康に関わるメカニズムを解明。摂食嚥下訓練による今後の医療向上に期待。

脳卒中後に経口栄養が不可能となり、経管栄養とならざるを得ないケースは多いが、摂食嚥下訓練により再び口から食事を摂取できるようになったという報告も多い。口腔と大腸は腸管を通じて繋がっており、食物、唾液、口腔内細菌は嚥下によって腸管へと流入しているため、これらが腸内細菌叢の変化に影響を及ぼす可能性がある。しかし、経口栄養がどのように腸内細菌叢に影響を及ぼしているかは不明だった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野の戸原玄准教授と歯周病学分野の片桐さやか助教のグループの研究により、経口栄養を再獲得することにより、口腔内および腸内細菌叢の多様性が増加し、細菌叢の組成が変化していることがわかった。

義歯の手入れを毎日しないと、過去1年の肺炎リスクが1.3倍に。

高齢者の死因の中でも上位に入る誤嚥性肺炎。口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に有効であることは、入院患者及び介護施設入居者を対象にした多くの研究で明らかにされている。そんな中、東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の相田潤准教授らのグループが65歳以上の地域在住高齢者約7万人を対象に調査を行った。対象者71227人のうち、義歯を毎日清掃する人で過去1年間に肺炎を発症した人が2.3%だった一方、毎日清掃しない人では3.0%だった。さらに、75歳以上の人に限ると、義歯を毎日清掃する人で過去1年間に肺炎を発症した人が2.9%であった一方、毎日清掃しない人おでは4.3%と、肺炎発症リスクが高くなった。

がんを防ごう

頭頸部がんは、首から上に発症するがんのうち、脳、脊髄、目を除いた総称です。口の中の舌がんなどの口腔がん、のどにできる咽頭・喉頭がん、鼻の中の鼻腔・副鼻腔がん、甲状腺がん、唾液腺がん、耳にできる聴器がんなどがあります。「頭頸部がんは種類は多いがそれぞれの発症頻度は少なく、がん全体の5%程度」と恵佑会札幌病院(札幌市白石区)の渡辺昭仁副院長(57)=耳鼻咽喉科、頭頸部外科=は話します。
 頭頸部がんの最大の要因は「喫煙と過度の飲酒」です。口やのどなどの頭頸部や食道は、たばこの煙や酒の通り道です。日本頭頸部癌学会は、喫煙で喉頭がんの発生率が32倍に、飲酒で口腔、咽頭、喉頭、食道などの各がんの発生率が6倍になる、などと警告し、2006年に「禁煙・節酒宣言」を出して国民に予防を呼びかけています。

オーラルフレイル

20本以上の歯を残すことを目標とした「8020運動」を、みなさんはご存じでしょうか。これは1989年に始まった国民運動です。当初はこの目標を達成した人は1割にも満たない状況でしたが、約30年後の2017年の調査では約5割以上の人が達成しています。歯を残すこができるようになった今、残った歯をどう使うか、つまり「口の機能」が注目され、その重要性を広めるために提案された概念が「オーラルフレイル」です。
 オーラルフレイルは、直訳すると「口の機能の虚弱」です。口に関するささいな衰えを放置したり、適切に対応しないままにしたりすると、口の機能の低下、食べる機能の障害、さらには心身の機能低下までつながる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念です。
 こうしたオーラルフレイルの進行は、誰もが避けられない自然な衰え(老化)と違い、仲間との交流の減少などが原因で自身の口の健康への関心が薄れてしまうことなどと複合して生じる「不自然な衰え」です。早い段階かた適切に対応すれば回復できますが、放置すると老化に加え、さまざまな要因が口の機能低下などを悪化させてしまいます。
 多くの人は、加齢とともに低下する運動機能、栄養状態、生活能力を「齢のせい」とあきらめ、自ら活動範囲を狭めたり、噛みにくいものを避けたりしがちです。口まわりの”ささいな衰え”から始まる現象は、自覚しないまま悪循環に陥り、やがて食欲低下や低栄養にまで至ってしまいます。こうした問題を人ごとでなく”自分ごと”として、意識的に対処することが最も重要なポイントと言えます。

口腔体操食べる動作改善

札幌市は10区に分かれていて、区民の健康づくりのため独自の体操を考案した区もあり、この欄でも「エコロコ!やまベェ誰でも体操」(西区)や「こりめ脳活体操」(豊平区)などをご紹介してきました。今回は市が制作した「サッポロスマイル体操」をご紹介します。
 この体操ができたのは昨年10月。高齢者が住み慣れた地域で、生きがいや役割を持って主体的に介護予防に取り組む一助にと、北海道リハビリテーション専門職協会(HARP)の監修と市内の介護予防センターの協力のもと、約1年がかりで完成しました。
 体操は「バランス&ストレッチ」など四つのバージョンがあります。このうち口や舌などを動かす「口腔バージョン」を説明しましょう。運動は腹式呼吸を含めて全部で7種類。楽曲に合わせて「パ・タ・カ・ラ」と発音する動作や、下顎を指で押したり頬をさすったりする「唾液腺マッサージ」などから構成され、時間は約4分です。
 食べ物を食べたり飲み込んだりする動作などを改善する体操で、HARPの方々が歯科衛生士の助言を得て作ったそうです。
                                   北海道新聞(夕刊) 2020

「頭が真っ白になった」 五輪後に歯科医目指す金井 「揺れるアスリート」

陸上男子110メートル障害の金井大旺(かない・たいおう)(ミズノ)は東京五輪で競技生活に区切りをつけ、歯科医師を目指すことを決めている。しかし、集大成の舞台は新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期。「頭が真っ白になった」と言う。不安を抱えながら、自宅で鍛錬を続ける。

 北海道函館市の実家は歯科医院。中学生の頃には早くも後を継ぎたいとの思いが芽生えたという。北海道有数の進学校の函館ラサール高へ進んだ。陸上に本格的に取り組むのは高校までと考えていた。

 競技を続ける決断をしたのは、5位に終わった3年時の全国高校総体(インターハイ)だった。「全然力を出し切れなかった。ここでやめたら悔いが残る」。高校には専門的な指導者がいなかったこともあり、自らの可能性も感じていた。

 全国高校総体は自身の競技人生を大きく左右した大会だった。だからこそ今年の中止には胸を痛めている。「高校生の時はインターハイが全てだった。みんなそう言いながら高め合ってきたので、僕が想像しているよりも、数倍、数十倍つらい思いをしている」。高校生の心中を思いやった上で「自分の選択した道を貫いてほしい」とメッセージを送る。

 法大3年だった2016年の日本選手権で3位に入り、東京五輪を狙う決意を固め、18年には当時の日本記録の13秒36で同選手権を初制覇した。だが昨季は初出場の世界選手権で予選敗退。踏み切り位置が近くなって歯車が狂い、不本意な1年となった。冬場は修正に取り組み、2月には室内大会の60メートル障害で日本新をマーク。今夏へ手応えを感じていた。

【山形】外来患者「減った」、4月の県内 医師90%、歯科医師97%

県内の医師、歯科医師が加入する県保険医協会(国井兵太郎理事長、会員数854人)は18日、新型コロナウイルス感染の影響を調査した緊急アンケートの結果を公表した。昨年4月比で医師の90%、歯科医師の97%が外来患者は減少したと答え、発熱患者やPCR検査への対応にも苦慮している姿が浮かび上がった。

 外来患者の減少幅が50%以上とする医師は23%、歯科医師が33%おり「院内での新型コロナ感染を恐れ、受診抑制傾向がある」「収束してからと家族単位で断られる」などの声が寄せられた。患者減は保険診療収入減にも直結。歯科医師からは「収入50%減でスタッフの給与が出せない」との切実な訴えもあった。

 医師の発熱患者に対する対応(複数回答)は「院外」が60%、「来院自粛をお願い」が28%、「動線を分離」26%、「診療時間を変更」13%と続く。「車中診察にしたいが車がなかったり、電話をしないで直接受け付けに来る患者がいたり、なかなか徹底できない」「PCR検査がクリニックでできないことを理解していない患者が多く、クレームの対応と説明に手間がかかっている」。自由記述欄には医師の苦悩がつづられている。

 PCR検査を依頼した経験を持つ医師は27%。検査の必要性を指摘したにもかかわらず、保健所や指定医療機関から検査を拒否された経験がある医師が18%いた。「濃厚接触者でないと、ドクターからの依頼であってもなかなかPCRの検査をしてもらえないケースがある」「受診相談センターへの電話がつながりにくい」との苦情があった。

 緊急アンケートは全国保険医団体連合会の調査の一環。ファクスを登録している医師482人、歯科医師223人にアンケートを送付し、医師189人(回答率39%)、歯科医師68人(同30%)から回答を得た。同協会は国や自治体に対する要望活動などに活用することにしている。

整形外科医が消毒、歯科医が問診も - 若林健二・医科歯科大病院長補佐に聞く

重症者を中心に計50人以上の入院患者を受け入れてきた東京医科歯科大学医学部附属病院では、診療科・職種を問わずに総力を挙げて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いに臨んでいる。


ICUでのCOVID-19治療風景(東京医科歯科大学医学部附属病院提供)
 集中治療部として、COVID-19への対応を考えたとき、全科横断での体制構築は不可欠でした。呼吸不全の患者の場合、通常は呼吸器内科や救急科で処置を施し、その後は集中治療部が診るという流れですが、それだけでは絶対に人手は足りません。

 中等症は呼吸器内科中心に、重症は救急科中心にチームを作り、集中治療部はシステム構築を担っています。基本的に単科では無理なので、各チームに応援の医師が投入されています。内科系の多くは中等症に、循環器内科や外科系は重症に充てています。

 麻酔科は24時間体制で挿管と脱管の全ての責任を負っています。

――医師総出でCOVID-19診療に当たっているのですね。

 全ての医師が診療に当たっているというわけでもありません。非常時なので、職種という概念も捨てる必要があります。

 例えば整形外科医。手術が減るので手が空くけど、呼吸不全の診療が得意とは言えません。そこでバックヤードチームを作り、逆タスク・シフトを行っています。

――逆タスク・シフトですか。

 はい。実はCOVID-19患者が出た後の部屋の掃除などは、通常の外部の業者がやってくれないのです。となると、看護師が掃除することになります。でも今、一番のボトルネックは看護師の数になっています。そこで、整形外科医が感染制御部の指導を受けて、部屋の掃除や消毒をしています。

 さらに、病院の入り口には歯科医が立っていて、来院者に対して、発熱などの症状があったら教えるよう呼びかけ、場合によっては問診もします。サーモグラフィーもチェックしています。 皆さん、快く協力してくれています。

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