ひと言でいえば、現場の医師の感覚はやはりするどい、ということだろう。
現在 日本で主に流行している季節性のインフルエンザはB型で、A型は流行していない。それなのにクリニックの医師が診た高校生は、迅速検査でA型陽性だった。この地域の高校生の間でこの時期にインフルエンザ様の症状を訴える方が増えているとの情報もあったようで、これはおかしいと、検体を公的な検査機関に送ったのではないか。
検査までには3日かかっている。これについては、おそらく検査機関が渡航歴のある発熱外来受診者の検体のPCR検査を優先したのだろう。渡航歴のない人の検体が後回しになるのは自然なことだ。
今回の事例について、「PCR検査をするまでに3日かかった」と、またもや非難論調が出ている。しかし私たち医師はそこを問題視するのではなく、全国的にはむしろB型インフルエンザが多いこの時期に、A型が限られた地域で多発していることに対して「何やら異常である」という感覚を持てることの重要さを、この事例から改めて学ぶべきだと考える。
現時点での本邦の症例定義では、海外渡航歴があることを前提としている。今回渡航歴のない人に発症が見られたことで、今後改訂がなされるだろう。しかしそれまでの間でも、渡航歴のない人がインフルエンザ様の症状を訴えて受診することは当然あり得る。では、当面、どうすればいいのか?
インフルエンザ様症状の患者が来院したら、いつも通り感染対策に留意しつつ診て、可能な限り迅速検査による診断を行う。常に自施設・他施設でA型インフルエンザの多発がないかを確認し、地域の方々や保健所の担当者とよく連絡を取りつつ、早期の拾い上げにつなげる―。
いつも通り淡々とやることが重要だ。結局は、いつも通りのインフルエンザ対策をやればよいと思う。