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患者の暴言暴力、医師や看護師6割被害/奈良県医師会調査

奈良県医師会が医療関係者約1万7000人を対象にしたアンケートで、医師や看護師の6割が患者から暴力や暴言による被害を受けたと回答したことが分かった。医療現場でのこうした「院内暴力」は年々問題化。仕事へのやりがいをなくしたり、不安感が増すなどの悪影響もあり、医師会は行政機関と連携して対策を検討する。

 奈良市では07年6月、診察中の病院長が元患者の夫にナイフで刺され、重傷を負う事件が発生。車谷典男・奈良県立医大教授らが08年9~10月、県内1020の医療機関の医師や看護師、看護補助者、事務職員を対象にアンケートを実施、約1万2000人から回答を得た(回収率約70%)。

 それによると、身体、精神ともに被害を受けたことがあると回答したのは、医師61・3%▽看護師60・5%▽看護補助者37・9%▽事務職員36・7%。最も多かったのは暴言で、看護師や看護補助者は暴力が目立った。

 自由記入欄には、「殴られそうになって、ステッキなどを振り回された。『おまえ雑魚や、殺したる』と電話口で言われた」▽「認知症患者にたたかれる、引っかかれる、つままれるが常態化」▽「患者の家族にストーカー行為をされた。8年がたっているが、男性患者や男性家族の前で笑顔をつくると誤解されそうで怖い」――などの回答があった。

 被害を受けた医師584人のうち、32・4%が「仕事のやりがいが低下した」▽30・8%が「仕事に不安を感じた」――としており、休職したり職場を変わった例もあるという。また、被害経験者のうち、医師の9・4%、看護師の7・4%に心的外傷後ストレス障害(PTSD)とみられる症状があった。

 塩見俊次・同医師会長は「医療機関に対する期待の大きさの裏返しだが、できることとできないことがある。患者を含めて考えるべき問題だ」と話している。
2010年8月4日 提供:毎日新聞社

ヘルパーと患者に温度差 たん吸引など医療行為で

通常は医師や看護師にしか認められていない、たんの吸引などの医療行為について、国はホームヘルパーや介護福祉士にも容認するかどうか、検討を進めている。

 在宅患者は、ケアに追われる家族の負担軽減につながると早期実施を主張。一方、ヘルパーらは「本当に安全を確保できるのか」と慎重な構えで、温度差が浮き彫りになっている。

 ▽公然の秘密

 議論の的となっているのは、たんの吸引と、口からの食事ができない人の胃に管で流動食を流し込む「胃ろう」。処置を誤ると事故につながりかねず、医師法で医療従事者に限定されている。

 だが、さまざまな介護を必要とする高齢者が多い特別養護老人ホームでは、看護師がいない夜間に介護職員がやむを得ず対応するケースが多く、違法状態は「公然の秘密」だった。

 特養で何度も吸引をした関東地方に住む介護福祉士の女性は「夜中にいちいち看護師を呼ぶ余裕はない。誰もが仕方ないと黙認している」と、苦しい事情を打ち明ける。

 このため厚労省は、鼻や気管より危険性が低い口からの吸引などについて「書面による同意」など一定の条件で特養の介護職員も可能とした。さらに有識者の検討会を設け、有料老人ホームなどの介護職員やヘルパーも容認する対象に加えるかどうか、議論を始めている。

 厚労省は将来、施設介護での医療提供に力を入れるよりも、要介護者が在宅で24時間、いつでもケアを受けられる訪問サービスを推進したい考え。高齢者宅を訪れるヘルパーに吸引などを認める環境を早期に整えたいとしている。

 ▽早期実現への課題

 厚労省は、今夏をめどに中間取りまとめを行い、モデル事業を実施したい考えだが、さまざまな課題が浮かび上がっている。

 過去にもヘルパーに吸引のみを認めたことがあるが、例外扱いとされ、現場は安全面で不安をぬぐえず結果的に普及しなかった。このため、ヘルパーの間では「介護職員も医療行為ができると明記してほしい」と求める声が強い。

 「技術習得向けの研修を受けられる環境が整わないと、現場の不安は解消されない」(全国ホームヘルパー協議会)とする意見もある。

 吸引を認める職員の範囲も問題だ。技術の有無を資格で認定しようという意見もあるが、難病の筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)の在宅患者で、検討会メンバーの橋本操(はしもと・みさお)さんは「急に資格が必要となっても、資格を持っていないヘルパーたちが急に取れるかどうか分からない。常に吸引を必要とする人にとっては死活問題だ」と指摘する。

ヘルパーと介護福祉士にたんの吸引など認める方針―厚労省検討会

厚生労働省の「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(座長=大島伸一・独立行政法人国立長寿医療研究センター総長)は7月22日、2回目の会合を開き、ホームヘルパーと介護福祉士に対し、たんの吸引と胃ろうによる経管栄養の実施を認める方針で合意した。次回以降の会合で、具体的な研修内容などを検討する。
 会合では、日本看護協会常任理事の齋藤訓子氏が、▽急性期やターミナル期における医行為は、医師もしくは指示を受けた看護職員が行う▽経管栄養については、現行の特別養護老人ホームにおける対象範囲・実施体制を踏襲すべき。経鼻経管栄養については、介護職員の実施は認めるべきではない▽老人保健施設におけるたんの吸引や経管栄養については、医師もしくは看護職員が実施すべき―などの内容を盛り込んだ意見書を大島座長あてに提出した。

 これに対し、ジャーナリストで国際医療福祉大大学院教授の黒岩祐治氏は、「ならば、すべてのナースは(たんの吸引などの医行為を)ちゃんとできるのか、と問いたい。看護師ならできる、介護士はできないという発想は間違い」と激しく反論した上で、法律上、介護職員がたんの吸引などの医行為ができないと定められている現状こそが危険と主張。他の構成員も、ホームヘルパーと介護福祉士に対し、たんの吸引と経管栄養を認めることを前提に、研修や法整備についての議論を進める方針に賛同した。

 さらに日本医師会常任理事の三上裕司氏は、医行為を行うことができないはずの介護職員が、たんの吸引や経管栄養を実施するという矛盾を解消するため、「(たんの吸引などは)医行為から外すことが現実的ではないか」と提言した。しかし、国学院大法科大学院長の平林勝政氏は、「介護職が医行為をできるようにするためには、どこでどんな教育をしていくのか、という議論をまず進めるべき。その上で(医行為かどうかという)法律に関する議論をすべきではないか」と主張。多くの構成員が、法整備より研修の内容の検討を優先することで一致した。

自己負担無料化廃止へ「不公平感招く」/16国保組合

医療費の自己負担を無料化している16の国保組合が23年度以降、無料化を廃止する方針であることが5月31日、厚労省の調べで分かった。給付費に対し平均4割の国庫負担が投入されている国保組合が自己負担を無料化するのは「国民の疑念や不公平感を招きかねない」と厚労省が判断、是正を促していた。結核・精神障害の医療費の自己負担を無料化している国保組合も無料化を廃止する方針。

財政力のある国保組合 補助見直しへ/23年度から

厚労省は加入者の所得が高い国保組合に対する国庫補助を23年度予算から見直す方向で検討に入った。5年ぶりに実施した国保組合の所得調査結果を踏まえ、具体的な見直しとなる対象組合や見直し額を決める。
 厚労省が昨年実施した所得調査の速報値によると、医師国保の所得(市町村民税課税標準)が676万円と突出して高かった。所得が高い国保組合は財政調整補助金を全く交付されていないケースもあることから、32%の定率補助の見直しに着手する可能性もある。
 この場合、国保法の改正が必要となる。同省は併せて財政調整補助金や国保特別対策費補助金の配分方法・補助内容も見直す構えで、国保組合の補助体形の抜本改革を図りたい考えだ。

「訪問看護知らない」が3割強

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 「訪問看護を知らない」とする人が3割強に達するなど、訪問看護サービスの周知が低いことが、7月15日までに日本赤十字看護大の福井小紀子准教授ら研究班の調査で分かった。

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 研究班による「在宅終末期医療の望ましいあり方に関する調査」は、2000人を対象にアンケート形式で実施。約1000人から回答を得た。

 訪問看護サービスの存在について、「全く知らない」は6%、「あまり知らない」は26%だった。「どちらともいえない」を含めた訪問看護サービスの存在を正しく認識していない人は4割に達した。また、終末期に保険を使って訪問看護が利用できることについては、「全く知らない」「あまり知らない」と回答したのは62%だった。

 福井准教授は、「訪問看護は国民への周知が不十分。終末期の訪問看護利用が可能なことを周知することで、在宅終末期医療や在宅看取りが進む可能性が示された」としている。

 訪問看護の自己負担額については、「入院中にかかる医療費と比べて自宅療養の自己負担額はどの程度が適当か」との質問に対し、「入院中よりはるかに安い」が28%、「入院中の半額程度」が26%だった。これについて福井准教授は、「5割以上の国民が入院中に比べて半額以下が妥当と考えていたことが分かった」としている。
( 2010年07月15日 17:11 キャリアブレイン )

「障害」の表記で作業チーム設置ー障がい者制度改革会議

内閣府は7月12日に開催した第16回の「障がい者制度改革推進会議」で、「障害」の表記に関する作業チームを設置することを決めた。
 この表記についての議論をしやすくするために、検討事項の整理を行うことが目的。作業チームのメンバーは5人で構成し、有識者からのヒアリングを通じて、幾つかの表記案についてのプラスとマイナスの両面を整理する。

 有識者は放送や新聞の団体などのメディア関係、作家らが加盟する団体などを想定。また、こうした表記について積極的に発言しているその他の団体や関係者からのヒアリングも検討する。

 ヒアリングは、9月中旬から10月中旬にかけて行い、11月中旬には障がい者制度改革推進会議にその結果を報告し、同会議は報告書となる「第二次意見」に「障害」の表記に関する見解を盛り込む方針。
( 2010年07月12日 19:42 キャリアブレイン )

認知症予防にIT活用で高齢者に生きがいを

政府の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」(IT戦略本部)は7月以降、医療・介護分野におけるIT基盤の整備に向けた本格的な議論に入る。介護分野において、本部員の東京電機大の安田浩教授は、IT活用で高齢者に生きがいを与えることで、認知症予防を促進する社会づくりが必要だと訴える。
―今後、介護のIT活用で何が重要か。
認知症の発症予防にITを活用することだ。認知症は、外部との接点がなくなり、生活に張りや緊張感がなくなることが最大の発症リスクであると考えられている。ITを活用すれば、退職後に活躍の場を見つけられない高齢者が、コミュニティーサイトを通じて地域活動を始めるきっかけになったり、テレビ電話で遠方の家族や友人たちと話し合ったりと、外部との接点が大幅に広がる。特に、男性は仕事がなくなったら一気に緊張感がなくなる。今後、団塊の世代が一気に65歳以上になっていくが、何らかの理由で生活が受け身になってしまうと、一気に認知症の発症リスクが高まる。生活が受け身になってしまう前に、自分から社会に働き掛けることができるようなシステムが必要だ。認知症の発症予防に国費を投じることも必要だろう。今後、認知症の人とそれを介護する人が増え続ければ、日本経済はその分だけの損失を負うことになる。団塊の世代が今以上の発症リスクにさらされれば、介護する人も含めて国内産業は数百万人規模の人材損失という大打撃を受けることになる。早急にITを活用するなどして認知症を予防し、できるだけ介護しない方向性を目指すべきだ。

―ITのインフラと高齢者が使いやすいデバイスがあっても、そこで提供されるサービスをどうするのかという問題がある。

 忘れてはいけないのは、人間は相手が人間でないと満足しないということだ。人は、他人に必要であると求められ、他人からその価値を認められるところに、真の喜びを感じる。「褒められるとうれしい」という感情が、生きがいとなるのだ。それは、若い人も高齢者も変わらないだろう。例えば、ITを使えば動画共有サイト「YouTube」で何か作品を発表して、それが認められるということができる人は、それでいいだろう。ただ、そうした動画を作れる才能を持っていたり、芸術作品を作れたりするのは一握りの人たちで、大半の人はそこまでのことはできない。であれば、例えば高齢者がこれまでの人生で得た経験や知識が誰かの役に立つ仕組みを新たにつくるというのはどうか。まだ議論を深める余地があるが、国費を投じることも念頭に、結果的に数年後の介護保険の財源抑制につなげていく戦略が必要だ。

―ただ、前例がないので国の腰は重そうだ。

 認知症対策が欠かせないことは明らかで、その発症予防にITが強力なツールになり得るのであれば、それは前例がなくてもやるべきだろう。本質的な問題は、平均寿命が延びる中で、高齢者が生きがいを持ちづらい社会に変容しているところにあり、それをIT活用で解決できる可能性があるのであれば、それは十二分に議論していく必要があると考える。今後のIT戦略本部に関係する議論の場では、そのことを強く進言していくつもりだ。
( 2010年07月07日 16:27 キャリアブレイン )

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