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「取り残された」支援なく コロナ後遺症、募る不信感

 新型コロナウイルスの感染者数は減少傾向で、政府は社会経済活動の全面再開を探る。一方で重い後遺症に苦しみ、生活に支障を来す人が全国で相次いでいる。各党の参院選公約で後遺症への言及はほとんどない。症状を訴える夫妻の夫は「国は何もしてくれない。取り残されてしまったと感じる」と政治への不信感を募らせる。

 どうにもならない倦怠(けんたい)感。少し無理をすると激しい疲労で身動きできなくなる。北海道東部に住む60代の夫と50代の妻は2年以上、体の不調が続いている。夫は一時ほぼ寝たきりとなって休職し、今も外出は難しい。体調不良をこらえながら妻が介助している。

 夫妻は2020年2月、道内のホテルに宿泊した後、せきや発熱などコロナの症状が出た。夫が1週間後に受けたPCR検査は陰性。妻は検査を受けられなかった。夫はひどいだるさや耳鳴りにさいなまれ、妻の体調も悪化した。

 地元の病院を回ったが「精神的なもの」と相手にされず、医師に「コロナかも」と尋ねると鼻で笑われたことも。夫は「保健所に連絡しても『なんのために電話してきた』と言われた」と憤る。

 20年8月に車で4時間かかる道内の医療機関を受診。2人とも筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と診断された。ウイルス性疾患流行後に集団発生することが知られており、コロナ感染後に発症するケースが多発している。

 オンライン受診した東京の専門医には「典型的なコロナ後遺症だ」と明言された。だが検査が陽性でなかったため自治体の相談窓口は対応してくれず、支援の枠組みからこぼれ落ちている。

 妻は「誰も助けてくれない。先が見えず、夫の症状が本当にひどかった時は死ぬことも考えた」。夫は「医師が対応しないと福祉も動かない。同じ境遇の人は大勢いるが、一部の医師が奮闘しているだけで政府は何もしていない」と吐露した。

 外国人観光客の受け入れが再開し、新たな観光支援事業も取り沙汰される。岸田政権は防衛費の大幅増を掲げ、参院選では安全保障が争点の一つに。妻はもどかしそうな口調で言った。「こっちにも安全をくれ。コロナは終わっていない。後遺症をなかったことにするのだけはやめて」

子ども自傷行為の対応集 成育医療研究センター

国立成育医療研究センター(東京)が、自分の体を傷つける子どもを支援しようと、対応策をまとめたリーフレットをホームページで公表している。担当者は「自傷行為を頭ごなしに否定すると、つらい状況の子どもたちを一層孤立させかねない」と指摘し「まずはひとりではないと伝えたい」と強調した。

 センターが昨年12月、およそ300人を対象に実施した調査によると「自分の体を傷つけたことがある」と答えた割合は小学4~6年生で14%、中学生12%、高校生25%に上る。

 リーフレットには、傷つけたくなった場合は「手首や腕に赤ペンで線を引く」「スマートフォンや紙に書き殴る」といった対応策を示した。気持ちが落ち着いている状況ならば、自分だけが読める日記をつけてみる。自分がいつ傷つける傾向があるのかの分析も提案した。傷つけてしまったら、その部分を清潔にするといった手当てを行う。

 つらい状況を解決する手段は自傷だけでないと思える日が来るかもしれないと指摘。相談に関しては「相談先リストから幾つかを選ぶ」「期待と違ったら、やめても大丈夫」と呼びかけている。

研修医が点滴誤投与、患者の血圧・心拍数上昇

医療事故の再発防止を目的に、過去の医療事故情報やヒヤリ・ハット事例(※)から原因や対策を知る「医療事故、ヒヤリ・ハット事例に学ぶ」シリーズ。今回は「薬剤を投与する前のダブルチェックを怠った」事例を取り上げます。
※出典:公益財団法人 日本医療評価機構の「医療事故情報収集等事業」
※事例は「研修医」のキーワードが含まれる事例から掲載。

【発生場所】
救急外来

【患者】
入院/20歳代(男性)

【疾患名】
アナフィラキシーショック

【当事者】
医師(1年)

【事故の内容】
 アナフィラキシー患者に観察室のベッドに臥床してもらい、研修医がポララミンを投与する予定がボスミンを誤って点滴投与した。

 看護師が点滴に貼ってある注射のラベルを確認すると、ポララミンであるはずがボスミンを投与したことを発見。

 直後、患者の血圧、心拍数が上昇。

 直ちに投与を中止し酸素投与、ポララミンをショットで投与し経過を見守ったところ、血圧、心拍数とも投与前の値に落ち着いた。

【事故の背景】
薬剤を投与する前のダブルチェックを怠った。
【改善策】
急ぐ場面であっても薬剤投与する前は必ずダブルチェックで確認する。

母子健康手帳デジタル化 吉備中央町、子どもの予防医療充実へ

岡山県吉備中央町は母子健康手帳をデジタル化する。先端技術によって医療や健康分野の課題解決を図る政府の「デジタル田園健康特区」(仮称)としての取り組み。スマートフォンがあれば、いつでも必要な情報が取り出せることから保護者の利便性が高まるほか、妊娠中の生活状況から出産、子どもの成長過程といった情報を町が集積して予防医療の充実につなげる。今夏にも利用を始める予定。

 導入するのは、岡山大発の医療ITベンチャー企業が開発したアプリ「WeLoveBaby(ウィラバ)」で、スマホにダウンロードして使用する。新たに妊娠した人だけでなく、すでに手帳を持っている人も使える。紙の手帳の発行も続け、併用してもらう。

 従来の手帳をアプリで撮影すると、記載情報を自動でデータ化して記録する。助産師や栄養士にオンラインで相談に乗ってもらったり、妊娠時の体調変化や子どもの食事内容をチャット形式で質問に答えて記録したりできる機能もある。

 それぞれの情報はアプリを通じてビッグデータとして集積され、町の関連施策の展開に活用する。母親や祖母が使っていた手帳を読み取ることも可能で、健診での情報や家族の病歴といったデータの蓄積が進めば、子どもの将来の疾患リスクの予測や早期対応に役立てられるという。

 5月上旬、町子育て支援センターでアプリのデモ体験会を開き、町内の母親8人が参加。外出先で急に手帳が必要になった際もスマホで確認できるといった利便性などをアプリの開発担当者が説明した。乳児から小学生まで4人の子どもを育てる女性(38)は「4冊も手帳を持ち歩くのは大変だった。アプリがあればとても助かりそう」と話した。

 参加者からは「予防接種の通知がほしい」「子どもが過去に服用した薬を記録したい」といった要望があり、町は機能拡大を検討する。

 町保健課は「アプリを通じて母子医療の安全安心を提供し、出生数増加に向けた仕組みづくりを進めたい」としている。

食事で認知症予防を 玉野の病院、朝食試食会始める

高齢化とともに認知症患者の増加が見込まれる中、由良病院(玉野市深井町)は4月から認知症予防の朝食メニュー試食会を始めた。認知症病棟で比較的状態が安定している朝に必要栄養素を摂取できるよう工夫してきた経験を伝えるとともに、専門医や管理栄養士の講座を通じ、地域に認知症への理解を広め、自発的に予防に取り組んでもらう。

 「認知症の根本的な治療はない。だからこそケアをしっかりする必要がある」「一人だけでケアしないで専門職に相談して」。4月26日の初回。精神科専門医、認知症診療医でもある南辰也院長が、集まった地域住民ら22人に認知症の基礎知識を優しく語りかける。

 吉田孝栄管理栄養士は「何か一つ食べれば予防できるものではない」として、バランスのよい食事▽摂取カロリーを守る▽塩分・糖分を控える―といったポイントを説明した。

 試食のメニューは、雑穀めしを主食に、サケの明太子あえ、厚焼きたまご、ヒジキの煮付け、ブロッコリーのごまあえ、ゆずなますをワンプレートに盛り付け。具だくさんのみそ汁を添えた。副菜は作り置きでき、朝から食物繊維、ミネラル、葉酸など幅広い栄養素を取れるようにしている。参加者は「朝からしっかり食べた方がいいんですね」「塩分が控えめでもおいしい」などと味わった。

 当面、月1回のペースで実施していき、将来的には朝食を提供する認知症カフェの開設を検討している。南院長は「初回から大勢参加いただきうれしい。認知症は誰がなってもおかしくない病気。地域の皆さんと一緒に予防の取り組みを進められれば」と話している。

長沼町で開業

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長沼町立病院の院長だった倉敏郎先生が、長沼町で開業されました。
胃瘻など消化器内科で著名な先生です。高校のクラスメートです。

日本の肝炎ウイルス持続感染者数、2035年までの動向を予測

 広島大学は3月17日、日本における2015年時点の肝炎ウイルス持続感染者数の算出と2035年までの動向を予測した結果を発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科の田中純子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Lancet Regional Health-Western Pacific」に掲載されている。

 B型肝炎ウイルス(HBV)・C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染は、肝硬変・肝がんの主病因であり、死亡リスクを上昇させる。2019年時点、WHOは世界で2億9600万人がHBVに、5800万人がHCVにそれぞれ持続感染しており、それが世界人口の4.4%に相当すると推定している。

 日本における肝炎ウイルス持続感染者数は、2000年時点で300~366万人、2011年時点で209~284万人と、厚労省肝炎疫学研究班から報告されている。HBワクチンの普及や、ウイルス排除が可能なHCV DAA治療薬の開発と普及により、WHOは2030年までのウイルス肝炎撲滅の目標を2016年に掲げた。日本の肝炎ウイルス対策への歴史は長く、1986年から開始したHBV母子感染防止事業や、2002年から開始された老人健康事業/健康増進事業による住民健診への肝炎ウイルス検査、2008年に開始した肝炎医療費の公的助成など、世界に先駆けて実施している。今後10年以内にウイルス肝炎撲滅を達成可能な主要国の一つに、日本が含まれている。

 今回、研究グループは、National database(NDB)や全国初回献血者集団等のリアルデータベース、政府の公表統計資料および、大規模血清疫学調査から得た成果をもとに、2015年時点のHCV・HBVの持続感染者数を算出。また、2035年までの予測を実施した。

障害者虐待最多2400件 20年度、家族や職員から

 厚生労働省は29日、2020年度に障害者が家族や福祉施設・事業所の職員から受けた虐待が2400件あり、被害者が2665人に上ったと発表した。前年度から198件、267人増え、いずれも過去最多。このうち1人が死亡した。自治体への相談・通報も9421件で最多だった。

 12年施行の障害者虐待防止法に基づく調査。厚労省は同法の通報義務が浸透したことが増加理由とみている。新型コロナウイルス感染拡大の影響については「一概に増加につながるとは言えない」としている。

 職員による虐待は632件で、被害者は890人だった。内訳(複数回答)は暴力や拘束などの身体的虐待が53%と最も多く、暴言などの心理的虐待が42%、性的虐待が16%だった。被害者は知的障害が72%。加害者は生活支援員が38%、管理者が10%などだった。死亡したのは、精神障害でグループホームに入居する40代の男性だった。

 家族による虐待は1768件、1775人。身体的虐待が67%、次いで心理的虐待が31%、障害年金を渡さないといった経済的虐待が17%だった。被害者は知的障害が48%、精神障害が42%。

 このほか、昨年8月に公表した職場での虐待が401件あり、被害者は498人だった。

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