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運動不足で筋肉減少なぜ? タンパク3種関与、神戸大

運動しないと筋肉の量が減少するのは、細胞内のカルシウム濃度の低下が引き金となり、3種類のタンパク質の量が増減することで起こっていることを、神戸大の小川渉(おがわ・わたる)教授(糖尿病)らのチームが突き止め、米科学誌に15日発表した。小川教授は「筋肉の減少を抑制する治療薬開発につなげたい」と話している。

 チームは、動かないようギプスで固定するなどしたマウスの脚を特殊な顕微鏡で観察。細胞の外から中にカルシウムを取り込む入り口となるタンパク質「Piezo1」の量が減少し、細胞内のカルシウム濃度が低下することが分かった。

 さらにカルシウム濃度が下がると、免疫に関わる「インターロイキン6(IL6)」など2種類のタンパク質の量が増加。筋肉量を減らす働きをすることが分かった。

 IL6の働きを抑える物質をマウスに投与すると、脚を動かせないようにしても筋肉量は減らなかった。人でもこの3種類のタンパク質が筋肉量の減少に関わっており、これらを標的にした治療薬開発が期待できるという。

共食の機会を月に複数回以上もつことが高齢者の体重減少予防につながる可能性

東北大学は3月11日、共食頻度が「毎日」という人と比べて、「月に何度か」以上の頻度で誰かと一緒に食事を有する人では、体重減少のリスクに有意な違いは観察されなかった一方、「年に何回か」の人では1.07倍、「ほとんどない」人では1.17倍、体重減少リスクが高くなるという関係が観察されたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科の草間太郎助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Age and Ageing」に掲載されている。

 誰かと一緒に食事をする「共食」は、ヒトにとって基本的な社会活動の一つである。過去の研究から共食の機会を有することが健康状態の維持に有益である可能性が示唆されてきた。体重減少は高齢者において重要な健康問題の一つであり、過去の研究から死亡リスクの上昇と関連することが明らかとなっている。共食の機会を有することは、栄養摂取に影響する可能性があるが、これまで追跡研究により共食と体重減少といった栄養状態の悪化との関連は明らかにされていなかった。

 研究グループは今回、要介護状態にない高齢者を対象とした3年間の追跡調査から、共食の頻度と体重減少のリスクとの関連を明らかにすることを目的として研究を行った。

共食頻度が「毎日」の群と比較して、「年に何度か」以下の頻度では体重減少リスク「高」

 2016年と2019年に実施されたJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study; 日本老年学的評価研究)調査に参加した要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象として、2016年から3年後の2019年時点までの間の「5%超の体重減少」の有無について、追跡研究を行った。

 5%超の体重減少は栄養状態の悪化の指標の一つであり、過去の研究から死亡リスクの上昇と関連することが示されている。共食の頻度については、「毎日」「週に何度か」「月に何度か」「年に何度か」「ほとんどない」の5区分を用いて、比較を行った。分析では、性別・年齢・教育歴・等価所得・婚姻状況・世帯人数・現在歯数・併存疾患(がん・脳卒中・糖尿病・認知症)・手段的日常生活動作・認知機能・うつ・野菜果物の摂取頻度・肉魚の摂取頻度・友人と会う頻度・ベースライン時点でのBMIの影響を取り除き、共食の頻度が「毎日」と比較したときの、それぞれの共食頻度の区分における相対的な体重減少のリスクを、ポアソン回帰モデルを用いて算出した。

 対象者5万6,919人のうち、3年間の追跡期間中に5%超体重が減少した人は15.1%(n=8,596)だった。また、共食頻度ごとの5%超体重が減少した人の割合はそれぞれ、「毎日」:14.3%、「週に何度か」:14.8%、「月に何度か」:14.6%、「年に何度か」:16.2%、「ほとんどない」:19.0%だった。

 他の要因を考慮して行った多変量解析の結果、共食頻度が「毎日」と比較したときに、5%超の体重減少のリスクが、「年に何度か」:約1.07倍(95%信頼区間:1.01-1.07)、「ほとんどない」:約1.17倍(95%信頼区間:1.08-1.27)において、統計学的に有意に高かった。つまり、共食頻度が「毎日」の群と比較して、「月に何度か」以上の頻度では有意な差が見られなかったものの、「年に何度か」以下の頻度では、体重減少のリスクが有意に高くなっていたという。これらの結果から、高齢者において、月に複数回程度以上、共食の機会を有していることが体重減少のリスクの低減に貢献している可能性が示唆された。

共食の機会をもつことが高齢者の健康維持に寄与する可能性

 新型コロナウイルスの流行は、高齢者の共食の機会に大きな影響を与えたと考えられる。今後は、流行状況を鑑みて、換気や人数制限といった適切な予防対策を実施した上で、人々が共食の機会をもつことが、高齢者の健康状態の維持に寄与する可能性がある、と研究グループは述べている。

看護学生、追試なく悲痛 感染で国家試験受けられず

新型コロナウイルスに感染したため今月13日の看護師国家試験を受験できなかった学生らから、追試がないことに悲痛な声が上がっている。医療関係者有志でつくる「国試追試を求める会」には「就職の内定が取り消される」「来年の受験までどう生活すればいいのか」といった相談が寄せられているという。

 熊本県の女性(24)は自宅でもマスクをして過ごしていたが、受験5日前に発熱し、検査で陽性と分かった。合格を条件とした病院の内定も取り消しになる恐れがあるとし「奨学金も返さなければいけない」と頭を抱える。

 シングルマザーとして小学生を育てながら正看護師を目指していた長崎県の准看護師の女性(29)も、9日前に陽性となり受験できなかった。インターネット上では「サーモグラフィーさえ通れば受けられる」「陽性でも申告しない」とのコメントも見かけたといい「黙って受ければ良かったのか。正直者が報われないのが悔しい」と話す。

 同会は14日、追試の実施を求める約3万3千筆の署名を厚生労働省に提出した。山路未来(やまじ・みく)代表は記者会見で「国は感染で受験できなかった人の調査や追試を検討すべきだ」と訴えた。

国立函館病院、3回接種後の感染多数

 【函館】国立病院機構函館病院で1月31日に認定された新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)は、ワクチン3回目接種を終えた多くの医師と看護師らの感染が判明しており、「ブレークスルー感染」となっていることが3日、関係者への取材で分かった。

 同病院によると3日現在、医師1人、看護師16人、作業療法士1人、入院患者14人の計32人の感染が判明。感染者はいずれも無症状か軽症という。病院は全国で医療従事者向けに3回目接種が始まった昨年12月1日から接種を始め、昨年中に出入り業者を含む約600人の接種を終えていた。

医療職国家試験「追試を」 受験者のコロナ陽性対応

医師や看護師など医療職の国家試験に関し、民間医療機関や医師の労働組合で構成する「医療団体連絡会議」は8日、新型コロナウイルスの検査で陽性となり受験ができなくなった人への対応として、追試の実施を求める要請書を厚生労働省に提出した。

 医療職の国家試験を巡ってはこれまでも、関係団体などが陽性者対応の追試を要望。しかし後藤茂之厚労相は「職業資格を担保するための国家試験なので、短期間で作成するのは困難だ」との見方を示してきた。

 連絡会議を構成する全日本民主医療機関連合会(民医連)などが8日、厚労省で記者会見した。看護師国家試験の受験を控えた男性はオンラインで会見に参加。就職先が既に決まっているとして「感染したら、試験合格を前提とした内定が取り消されることになる。努力が報われるよう、国は追試を検討してほしい」と訴えた。

医師国家試験、感染者は「受験を認めない」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した受験生への対応をめぐり、文部科学省が大学入学共通テストの救済措置を発表、大学の個別試験についても再追試を設けるように要請する方針を示すなど、大学入試はコロナ対応に追われている。

 一方、2月5、6日に控える医師国家試験について、厚生労働省は感染者の受験は認めないとする方針を示しており、追試も予定していない。今後も方針に変更はない予定といい、厚労省の担当者は「受験機会の確保も重要だが、感染拡大の防止も重要な観点。議論した上でこの対応となった」と苦悩をにじませる。

 厚労省は「医療関係職種国家試験における新型コロナウイルス感染症対策について」として、対策を発表(詳しくは、厚労省ホームページ)。「新型コロナウイルス感染症に罹患し、入院中、宿泊療養中または自宅療養中の受験者は、受験を認めない」とした。試験場入り口では検温を実施し、37.5度以上あった場合は迅速抗原検査を実施。結果が陽性だった場合は、受験することができない。

 濃厚接触者については、初期スクリーニングの結果が陰性であり、受験日当日も無症状、公共交通機関を利用せずに会場に行き、別室で受験するとの条件を満たすと受験が可能だ。検温で37.5度以上だった場合も、陰性の際は別室で受験できる。

 今回の対応は、2020年度の医師国家試験の対応とほぼ類似している。2020年度は抗原検査の後にオンライン診療を実施していたが、医療用抗原検査キットの販売が開始されるなど検査キットの精度の高まりを受け、2021年度は抗原検査のみで判断することとした以外、変更はない。

 2020年度に会場でCOVID-19陽性と判断され、受験できなかった受験生はいなかった。一方で、受験会場に来なかった学生が受験しなかった理由は確認しておらず、COVID-19を理由に受験できなかった人数を把握するのは困難だ。厚労省の担当者は「受験しなかった人数の推移は注視していた」と言う。医師国家試験での受験者数を見ると、2020年度は出願者1万160人に対し受験者9910人(97.5%)、2019年度は出願者1万462人に対して受験者1万140人(96.9%)、2018年度は出願者1万474人に対して受験者1万146人(96.7%)と、COVID-19流行前後で受験割合に大きな差はなかった。

 「なんとか受験機会の確保をしたいと追試等も検討した」(同担当者)が、「医療関係職種の国家試験はしっかりと問題を用意しなければならず、医師国家試験ならば100人近い関係者が問題作成に関わっている。もう1回実施しますというのは難しい」と判断。陽性者の別室受験などについては、「受けに来てもらう最中に感染を引き起こすといけない。感染拡大防止も重要な観点であり難しい」と実施しない理由を述べた。

市立旭川病院・感染症センター公開 全個室にWi―Fi 患者増なら使用前倒しも

市立旭川病院は27日、新型コロナウイルスなどの感染症患者を受け入れる「感染症センター」を、報道機関に公開した。一般病棟とは別棟の感染症病棟を大幅改修し、病床数を6床から9床に増床、全室個室でシャワー、トイレを完備した。旭川市保健所などの認可を受けて1月中にも使用を始める予定だが、新型コロナの状況次第では前倒しする可能性もある。

 鉄筋コンクリート7階建てでセンターは1~6階。4~6階が病床で、1、2階が問診室や診察室、3階は看護師らの更衣室や休憩室となっている。建物内は気圧を屋外より低くし、汚染された空気が外に出ない仕組み。全室でWi―Fiを使えるようにし、患者がスマートフォンなどで、家族と連絡を取りやすくした。2~6階には、身体障害者用のトイレも新設した。

医学部地域枠は労基法に抵触か、医師の「人身拘束」の懸念

一般社団法人「医療法務研究協会」は12月19日、「医学部地域枠の運用上の法律問題」をテーマに都内でセミナーを開催、医学部の地域枠について、卒後に長期間の従事要件を設けたり、臨床研修や専門研修において、「不同意離脱」した場合にペナルティーを科すことは不当な「人身拘束」の防止規定を設ける労働基準法に抵触する可能性が指摘された。

 2022年度入試から地域枠の運用が厳格化されるほか、新専門医制度についても2021年度から、都道府県の同意なく離脱(不同意離脱)する医師に対しては、専門医として不認定とする方針が打ち出されている。同協会会長で弁護士の井上清成氏は、セミナーの冒頭、法的な問題が内在する可能性があることから、本セミナーを企画したと説明。「必ずしも解決の糸口が見えないかもしれないが、今後運用面の改善をしていくにあたって、問題点を意識してもらいたい」。

 「奨学金返済など、お金の問題なら解決しやすい」とも述べ、地域枠が臨床研修や専門医資格などにかかわる現状を問題視。「いろいろな相談が弁護士に行っている現状だ。中には提訴に値する問題もある。早急に組み直しをしないと、大きな裁判が勃発することを危惧している」と指摘し、医学生、研修医、専門医のほか、地域の住民などの利害関係者全てが集まり、法的な整理をする必要性を強調した。

 スプリング法律事務所の弁護士の石井林太郎氏は、地域枠出身者に対し、特定就業先での長期間の就業義務を設けたり、違反(離脱)時に専門医を不認定としたり、奨学金の一括返済などのペナルティーを科すことは、労基法5条(強制労働の禁止)、14条(契約期間の制限)、16条(賠償予定の禁止)に抵触する可能性があるとし、警鐘を鳴らした。さらに日本専門医機構が、「不同意離脱」をしているか否かの情報提供を当該都道府県から受けるのは、第三者提供の観点から個人情報保護法に抵触する恐れもあると指摘した。

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