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チューインガムで術後イレウスが低減

心臓手術後にチューインガムをかむことで、術後イレウス(腸閉塞)を軽減できることが、米国胸部外科学会(STS)主催のPerioperative and Critical Care Conference(9月10~11日、オンライン開催)で報告された。

 米クローザーチェスター医療センターのSirivan Seng氏らは、2017~2020年に心臓手術を受けた連続症例341例を対例に、安定が確認された後、1日3回、5~10分間ガムをかんでもらい、2013~2016年に同様の選択的心臓手術を受けた496例と術後イレウス発生率を比較。

 その結果、身体診察により腹部膨満を示し、画像診断で術後イレウスと確定されたのは、ガムをかんだ群で2例(0.59%)だったのに対し、かまなかった群では17例(3.43%)であり、この差は統計学的に有意であった。

 Seng氏は、「心臓手術を受けた患者でのガムの使用について調べた研究は過去になかったが、今回ガムが腸機能の回復を早める可能性が示された。リスクが最小でコストもわずかであることから、心臓手術後にガム介入を組み込むことは、新たな標準治療として強く検討されるべきである」と述べている。

モデルナ製ワクチン、ファイザー製より有効性わずかに高い

米国の退役軍人を対象に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)とmRNA-1273(モデルナ製)の有効性を比較。ワクチンの初回接種を受けた米国退役軍人の電子診療記録を用いて、各ワクチン群に21万9842例を登録した。

 その結果、アルファ変異株が優勢だった24週間の追跡期間中に見られた1000人当たりの推定感染リスクは、BNT162b2群5.75件、mRNA-1273群4.52件だった。BNT162b2の方がmRNA-1273よりもCOVID-19感染(1000人当たり1.23)、症候性COVID-1(同0.44)、COVID-19入院(同0.55)、COVID-19によるICU入室(同0.10)、COVID-19死亡(同0.02)の超過事象数が多かった。このほか、デルタ変異株が優勢だった12週間の追跡期間中の感染超過リスク(BNT162b2 vs. mRNA-1273)は、1000人当たり6.54件だった。

のどにパン詰まらせ患者死亡 鹿児島市立病院で医療事故 遺族に2000万円賠償

鹿児島市立病院で2017年3月、入院していた男性患者=当時(91)=が朝食のパンをのどに詰まらせ窒息し、同年12月に死亡していたことが分かった。病院側は医療事故と認め、市は賠償金約2000万円を遺族に支払い和解する方針。

 病院によると、男性は17年3月にインフルエンザ肺炎で入院。飲み込む機能が低下し食事の介助が必要だったが、配膳の看護師は男性が寝ていたため、食事を置いて部屋を離れた。男性は看護師がいない間にパンを食べてのどに詰まらせて、意識が戻らずに死亡した。

 病院側は当初から医療事故と認め遺族と協議。開会中の市議会12月定例会に賠償金を盛り込んだ補正予算案を提案した。補正予算議決後に合意書を結ぶ。

 病院は「大変重く受け止めており、二度と起こさないよう対策を徹底する」としている。この事故を受け、食事介助のリスク管理と認知症ケアの委員会を設置した。

3回目接種、高齢者・障害者施設で12月中にも 愛知県

愛知県の大村秀章知事は6日の会見で、感染リスクが高い高齢者施設と障害者施設の利用者と従業員を対象に、今月中にも新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を始める考えを示した。県内には米ファイザー社製ワクチン約58万4千回分の余剰があり、「十分対応できる。市町村間の相互融通も進める」と述べた。

 岸田文雄首相が6日の所信表明演説で、3回目接種を「できる限り前倒しする」と表明したことを受けての対応。県によると、入所施設の約21万人、通所施設の約28万人が対象となる。医療従事者向けの接種が今月から始まっているが、市民は早くても来年1月から始まる見込みだった。

 一方、県は6日、高齢者施設に求めてきた面会などの制限を撤廃する方針も決めた。11月に感染がわかったのが5施設の5人にとどまり、前月から大幅に減ったため。感染防止対策の徹底は引き続き求める。

「やぶ医者大賞」受賞の2人 へき地医療への思い語る

過疎地での医療に尽力する若手医師をたたえる「第8回やぶ医者大賞」に輝いた滋賀県長浜市の浅井東診療所の松井善典所長(41)と、北海道松前町の町立松前病院の八木田一雄院長(50)の表彰式と講演が13日、兵庫県養父市八鹿町八鹿の文化会館「やぶ市民交流広場」であった。医療関係者や市民らが参加する中、へき地医療への思いや将来の在り方を語った。(桑名良典)

 やぶ医者は、養父にいた名医が語源とされる。養父市は2014年、名医をたたえる賞を創設し、毎回、2人を表彰している。

 松井さんは、特別養護老人ホームなどでのみとりの経験を生かし、職員との連携モデルの構築について語った。患者ごとの「振り返り」の事例を示し、家族や職員を含めたケアの重要性を指摘した。また、不登校だった中学生が、対話を重ねることで大学へ進学した体験も紹介。最後に「地域と共に、患者と共に、住民の医療福祉の拠点として、今後も充実させていきたい」と結んだ。

 八木田さんは、松前町から近隣の総合病院まで救急車で約2時間かかると説明。1人の医師が内科や整形外科など複数の診療科を日替わりで受け持つ「全科診療医」で対応していると述べた。また、新型コロナウイルス禍で患者が減り、看護師も不足するなどして、診療体制を縮小せざるを得ない現状も訴え、「患者に相談してもらいやすく、信頼される病院を目指していく」と語った。

生活保護受給者200万人のレセプトデータ解析で糖尿病の実態調査

京都大学は11月16日、全国の生活保護受給者200万人のレセプトデータを用いて生活保護受給者の糖尿病の年齢別、性別、地域別の実態を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の仙石多美研究員、高橋由光准教授、中山健夫教授らと、東京都健康長寿医療センター研究所の石崎達郎研究部長の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology and Community Health」に掲載されている。

 生活保護制度は、被保護者の最低限度の生活を保障するとともに、自立の助長を図ることを目的としている。自立助長を図る基礎として、健康状態を良好に保つことは重要であるが、多くの健康上の課題を抱えている可能性がある。厚生労働省は、データに基づいた、生活保護受給者(被保護者)に対する生活習慣病予防・重症化予防のための健康管理支援を推進しているが、生活保護受給者の全国規模での生活習慣病の罹患状態はわかっていない。そこで研究グループは、生活保護受給者の2型糖尿病の有病割合を、性別、年齢別、地域別に調査。さらに、公的医療保険加入者との比較も行った。

 今回の研究は、生活保護受給者と公的医療保険加入者の1か月のレセプトデータを用いた横断研究。生活保護受給者のデータは2015年、2016年、2017年に実施された医療扶助実態調査の調査票情報を、公的医療保険加入者は2015年NDB(匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース)サンプリングデータセットを用いた。レセプト上で、糖尿病の傷病名(1型糖尿病を除く)があり、かつ糖尿病治療薬を処方されているものを2型糖尿病と定義した。粗有病割合および標準化有病割合(標準人口:1985年日本人モデル人口)を算出し、性別、年齢別、地域別(47都道府県別および112地域別)で算出。地域別(112地域)においては、マルチレベルロジスティック回帰分析も実施した。

粗有病割合7.7%、40~50代で有病割合高く、地域によるばらつきも

 2015年において、生活保護受給者の2型糖尿病の粗有病割合は7.7%。外来のみでは7.5%(公的医療保険加入者では4.1%)であり、標準化有病割合(外来のみ)は、生活保護受給者3.8%、公的医療保険加入者2.3%だった。加齢とともに有病割合が上昇したが、生活保護受給者では、公的医療保険加入者に比べ、40歳代、50歳代での有病割合が高くなった。47都道府県別では4.0~10.6%(標準化有病割合1.9%~5.0%)の幅が見られた。112地域別でのオッズ比も0.31~1.51の幅が見られた。

 生活保護受給者の2型糖尿病の有病割合は、公的医療保険加入者よりも高く、地域的なばらつきも見られた。今後、糖尿病の重症化を防ぐためにも地域レベルで実態を把握し対策を立てていくことが求められる。

社会格差や健康格差の是正、データに基づいた政策の一助に

 新型コロナウイルス感染症の影響による生活困窮や、社会格差や健康格差が社会的問題となるなか、生活保護の社会的意義は、ますます高まっている。今回の研究は、生活保護受給者の健康状態はどのようなのだろうか、そして、糖尿病の人は多いのだろうかという、極めて基礎的な問いから始まった。しかし、ある集団の「糖尿病の有病」というシンプルな情報を得るにも、医師により診断されている人、糖尿病治療薬を服薬している人、健診で指摘された人、血液検査(例えばHbA1c)においてある一定の値以上を示した人など、さまざまな考え方があり、一概に示すことは想像以上に難しい問いである。

 今回、日本で初めて、医療扶助実態調査とNDBという日本全体のレセプトデータを活用して、全国レベルで生活保護受給者と公的医療保険加入者の2型糖尿病有病割合を同基準で比較した。日本では、特定健診やレセプトのデータを健康増進や病気予防に活用するデータヘルスという取り組みが進んでいる。生活保護受給者や生活困窮者の最低限度の生活の保障、自立の助長は、一時的な感情や印象で議論せず、健康管理支援においても、データを活用してよりよい医療の提供を目指すことが重要だ。「今回の研究は、社会格差や健康格差の是正、データに基づいた政策を行うための一助になると考えている」と、研究グループは述べている。

高山義浩2日

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新型コロナウイルスワクチンの3回目接種について、厚生労働省は、2回目の接種から6ヶ月たった人も自治体の判断で対象にすると決めました。ただし、各自治体への厚労省による説明会では、感染状況が落ち着いている現状では「8ヶ月後」が原則であると強調しています。
安堵された市町村担当者もいらっしゃるでしょう。今まで8ヶ月と聞いていたのに、いきなり6ヶ月とされては準備が追い付きません。ただでさえイベントの多い12月中に会場を確保し、冬場で忙しい医師や看護師を確保することなど、絶望的ですらあったのではないかと思います。
ただし、ここからは沖縄県内の市町村へのお願いなのですが、医療従事者、介護従事者、そして施設入所者、デイサービス利用者については、できるだけ6ヶ月で実施するように準備を進めてください。5割でも6割でも良いので、接種を進めておくことができれば、それだけ被害の規模が異なります。
ここで言う被害とは、医療機関や高齢者施設における集団感染であり、積み重なる死亡者のことです。冬季は体調を崩す高齢者が多いため、感染者が多数になれば容易に医療はひっ迫し、その他の救急医療ですら維持できなくなる恐れがあります。
また、医療がひっ迫すれば緊急事態宣言が出されて長期化することも懸念されます。つまり、これは命を守り、医療を守り、経済を守るための重要な布石となります。
なぜ、8ヶ月ではなく6ヶ月でなければならないのか・・・? それは、すでに初夏に接種した高齢者のワクチン効果が減少しており、第5波のように高齢者が感染から守られなくなっているからです(添付の図を参照してください)。
加えて、第6波の到来が、年末年始の人の移動によって引き起こされると想定されていることもあります。忘年会やクリスマスなど年末イベントで感染が拡大し、冬休みに入って帰省者が増加します。地方では1月に感染拡大する可能性が高いのです。
8ヶ月を待っていては、ほとんどの高齢者の3回目接種が1月以降にずれ込んでしまいます。そして、この接種のタイミングが、地域で流行している時期に重なる可能性が高く、医療従事者の確保が困難となり、接種会場での感染リスクも考慮しなければなりません。いろいろ大変ですよ。
想像していただきたいのですが、1月から2月にかけては、沖縄ですら寒い時期であり、会場は閉めきられて風通しが悪くなっています。体調不良の高齢者も少なくなく、問診には時間を要することでしょう。どうせ接種するなら、8ヶ月を待たず、6ヶ月のうちに接種を済ませてしまいましょう。
というわけで・・・、多くの障壁があることは理解していますが、それぞれの市町村では12月中の接種をめざして、準備を進めていただければと思います。また、各地区医師会の先生方も、どうか市町村を全面的に支援してください。県担当者の方も厚労省との調整を支援いただければと思います。
最後に・・・、長々と3回目接種の重要性を申し上げましたが、1回も接種を受けていない方が、2回の接種を完了していただくことの方が大切ですよ。
とくに、ご親族が年末年始に帰省してくる予定となっている高齢者の皆さん。もし、ワクチン接種を受けておられないのでしたら、ぜひ、来週中に1回目の接種を受けるようにしてください。
たとえば、11月22日に1回目の接種を受ければ、12月13日が2回目です。おおむね、2週間後からワクチン効果が得られると考えられるので、12月27日からご親族を安心感をもってお迎えすることができるでしょう。
まさに、いまがギリギリのタイミングなんですね。市町村も年末年始を見据えた接種への呼びかけをお願いします。

無保険外国人:在留資格なし、自由診療負担3倍 無保険外国人 命の危機 訪日富裕層向け高額化、コロナ禍拍車

今年3月、名古屋出入国在留管理局の施設内でスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が病死し、ずさんな医療体制が問題となった。しかし、在留資格がない外国人は、入管施設の外でも命の危険にさらされている。就労もできず、健康保険に加入できないため、重病になると高額な医療費(100%負担)が支払えないケースもあるためだ。近年は医療費を200~300%負担させられる例も増えている。「在留資格の有無で、命を区別していいのか」。全国の外国人支援団体や医療関係者たちが抗議の声を上げている。

 今年1月23日早朝、東京都内の病院でカメルーン出身の女性レリンディス・マイさんが静かに息を引き取った。42歳だった。乳がんが全身に転移していた。婚約者の暴力や女性器切除から逃れようと、2004年に来日。その後、母国の治安が悪化し、難民認定を申請したが認められず、入管施設に2度にわたり収容された。当時から支援者に「胸が痛い」と訴えていたが、施設では十分な治療が受けられなかったという。

 18年に2度目の仮放免(条件付きの一時解放)となり、その後乳がんと診断された。在留資格がなく健康保険に入れないため、医療費は高額だ。それでも支援者らが仲介し、理解ある病院で治療を受けた。いったん退院後は一時ホームレスの状態になり、支援者らが衣食住を確保し、さらに別の病院で治療を続けた。

 支援者らが治療目的の在留資格を出すよう、国に繰り返し要請。在留(1年)を認めるカードが病院に届いたのは、マイさんが死亡して約3時間後だった。

 最初に治療を受けた病院にはマイさんの未払いの医療費計約700万円が残ったままで、解決していない。支援者の一人で牧師の阿部頼義さん(40)は「健康保険があれば、治療がスムーズに進んだはず」と悔やむ。

 健康保険は国内在住の外国人も対象だが、在留資格がない、または短期(90日以内)の資格の場合は加入できず、医療費は全額負担になる。がんなど重病の場合は数百万円に上る。一方で、在留資格がないと就労が禁止され、生活保護も受けられない。

 首都圏で支援活動をする「北関東医療相談会」(群馬県太田市)は、20年だけで48人の医療費(計480万円)を援助。このうちマイさんを含めた9人ががん患者(大腸がん、肺がん等)で、少なくとも5人は治療後に死亡した。事務局長の長澤正隆さん(67)は「お金がなく治療を控え、私たちが相談を受けた時には既に手遅れのケースも多い」と話す。

 増えているのが200~300%の医療費を請求されるケースだ。通常、医療費(診療報酬)は医療行為を1点10円で計算するが、無保険の場合は自由診療となり、病院側の判断で1点20~30円という高額設定が可能になる。保険加入者(30%負担)なら3000円程度で済む風邪の診察でも2万~3万円になる計算だ。

 政府は近年、富裕層の訪日外国人を想定した「医療ツーリズム」を成長戦略の一つに位置づけており、その流れが困窮する外国人にも影響を与えている。

 厚生労働省が20年度に実施した調査(全国4380病院が回答)では、24%の病院が外国人の医療費を1点10円を超える単価で設定していた。厚労省医療国際展開推進室は「無保険の外国人の医療費は各病院が設定するもの。困窮者であっても価格を指導する権限はない」との立場だ。

 一方、国籍にかかわらず生活困窮者に無料または低料金で医療を提供する「無料低額診療事業」もあるが、実施する病院は全国で723カ所(19年度)で、全体の1%以下。支援者によると、新型コロナウイルスの影響で病院財政が悪化、協力的な病院が減っているという。また、未払いの外国人の医療費を肩代わりする「外国人未払い医療費補てん制度」もあるが、導入しているのは東京都や神奈川県など一部の自治体にとどまる。

 深刻なのは困窮する外国人の増加だ。近年、外国人の入管施設への長期収容が問題化していたが、コロナ感染予防のため20年以降は多くが仮放免になった。また、留学生や技能実習生として来日後、さまざまな事情で在留資格が切れ、コロナの影響で収入が減った人もいる。

 厳しい現状を受け、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」は、政府に制度改善を求める署名運動(12月末まで)を展開している。▽仮放免の外国人が健康保険に加入できるように在留資格を出す。出せない場合は国が医療費を負担する▽1点10円での医療費の計算を徹底し、高額の請求をやめさせる――ことなどを要望。インターネット上の「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」でも運動している。

 神戸を中心に支援活動をしている移住連運営委員の觜本(はしもと)郁さん(68)は「帰国できず、就労もだめ、生活保護もだめで、どうやって高額な医療費を支払うのか。命の危機にある外国人を『仕方ない』と放置するのは明らかな人権問題だ」と話している。

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