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健康保険証、予定通り廃止 厚労相、総裁選で見直し論

武見敬三厚生労働相は10日の記者会見で、自民党総裁選の一部候補が見直しを提起した現行の健康保険証の廃止期限に関し、予定通り12月2日に廃止する考えを示した。「政府方針に変わりはない」と述べた。

 健康保険証の廃止期限を巡り、自民党総裁選に立候補を表明している林芳正官房長官が見直しを検討すると言及。廃止を主導してきた河野太郎デジタル相は「真意を確認しなければならない」とけん制し、争点の一つとなっている。

 河野氏も10日の会見で「政府として従来の方針に何ら変わりはない」と強調した。

 武見氏は、林氏の見直し論について「総裁選に向けた個人の考えだ」と指摘し、直接の評価は避けた。閣内不一致ではないかとの質問には「閣僚同士の閣内における方針は全く揺るぎない」と語った。

 総裁選では、石破茂元幹事長が廃止期限の見直し論に賛同。小林鷹之前経済安全保障担当相は期限延長を否定している。

 現行の保険証は12月2日以降、新規発行されなくなる。政府はマイナンバーカードに保険証機能を持たせた「マイナ保険証」に一本化する方針。マイナ保険証の7月の利用率は11・13%と低迷している。医療現場の一部からは「高齢者にとって使い慣れた保険証を残してほしい」との声が出ている。

石破氏、保険証廃止の先送り「選択肢として当然」 総裁選の争点に

 マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」への移行をめぐり、自民党総裁選(12日告示、27日投開票)への立候補を表明している石破茂元幹事長(67)は8日、政府が今年12月とする健康保険証の廃止時期について、先送りも検討するべきだとの考えを示した。東京都内で記者団の取材に答えた。総裁選の争点の一つになりそうだ。

 石破氏は、政府方針に対する国民理解を広める重要性を指摘したうえで、「納得していない人、困っている人がいっぱいいる状況があったとすれば、(従来の保険証との)併用も考えるのは選択肢として当然だ」と語った。

 同じく総裁選に立候補を表明している林芳正官房長官(63)が7日に「不安の声に応え、必要な見直しをしっかり行いたい」と主張。石破氏は林氏に賛同する姿勢を示した。

 しかし、マイナンバー制度を所管する河野太郎デジタル相(61)は、3日の閣議後記者会見で「12月2日からマイナンバーカード保険証を基本とするシステムに移行する方針に変わりはない」と強調。総裁選の立候補予定者のなかでも考えが割れている。

 一方、拙速なマイナ保険証への切り替えに慎重姿勢を示してきた立憲民主党の泉健太代表は8日、福岡市内での街頭演説で「立憲の言っていたことはやはり正しかった。(自民は)立憲の周回遅れを走っている」と指摘した。

医療ケア児 災害に備え サークルが避難訓練 甲府市

 人工呼吸やたんの吸引など医療的ケアが必要な子どもや重症心身障害児とその家族を対象とした「インクルーシブ防災避難訓練」が1日、甲府市下飯田2丁目の甲府支援学校で開かれた。医師や看護師、理学療法士らとともに、体験やクイズを通じて災害時の行動や備えを考えた。

 県内の療育に特化した親子遊びサークル「なーさんのひきだし」が、医療従事者の立ち会いの下で避難所体験を行い、個別の避難計画を考えてもらおうと初めて企画した。家族約10組が参加した。参加者は非常用持ち出し袋や携帯用の医療機器を持参し、足踏みポンプを使った吸引や非常食の試食を体験。小児科医や防災の専門家が講演と○×クイズを行い、避難先の決め方や予備電源を使う際の注意点などを確認した。

 災害時は医療機器に必要な電源が確保できる保証がなく、防災頭巾をかぶったり靴を履いたりするのが難しい子もいる。参加した甲府市の女性(38)は「食事のときに使っているミキサーも電源なしには動かせない。備蓄する非常食を本人が食べられるかどうか、事前に確認しておきたい」と話した。

 サークル代表を務める看護師の永井由香さん(47)=甲府市=は「慣れない環境で子どもが安心して過ごすためには何が必要か、事前のシミュレーションが大切。体験を通じて、自宅待機ができるか、どんな備蓄をすべきか、考えるきっかけにしてほしい」と話している。

喫煙率14・8%、過去最低 国民健康・栄養調査

厚生労働省の2022年国民健康・栄養調査で、たばこを習慣的に吸っている20歳以上の男女の割合は14・8%だったことが28日、分かった。前回19年調査(16・7%)を下回り、03年に現行の設問になって以降の過去最低を更新した。

 政府の健康づくり計画「健康日本21(第2次)」で定めた22年度の目標値12%には達していないため、厚労省担当者は「啓発を通じ、喫煙をやめたい人のモチベーションを保てるようにしたい」としている。

 20歳以上の喫煙率の男女別は、男性24・8%(前回比2・3ポイント減)、女性6・2%(1・4ポイント減)で、いずれも過去最低となった。年齢別で最も高いのは男性が30代の35・8%、女性は40代の10・5%。喫煙者のうち、たばこをやめたいと思う人は25・0%だった。

 受動喫煙の機会がある人の割合も調査。対策を強化した改正健康増進法の施行が影響したとみられ、場所別では前回19年に比べ、飲食店は半減の14・8%、遊技場は3分の1程度の8・3%となった。一方、高かったのは路上23・6%(3・5ポイント減)や職場18・7%(7・4ポイント減)だった。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響による体重や生活習慣の変化を尋ねたところ、体重が増えたとした男性は13・2%、女性は16・7%。1週間あたりの運動日数が減ったと回答したのは男性が12・7%、女性が13・8%となった。

 調査は22年11、12月に実施し、全国の約2900世帯から回答を得た。コロナの影響で20、21年は調査中止となったため、今回は3年ぶりに実施した。

生活保護者は後発品調剤‐長期品の必要性なしで 厚生労働省

厚生労働省は21日の事務連絡で、長期収載品の選定療養が導入されることを受け、長期収載品の処方や調剤の取り扱いに関する疑義解釈を公表した。

 生活保護受給者である患者が医療上必要性があると認められないにも関わらず、単にその嗜好から長期収載品の処方・調剤を希望する場合は、医療機関、保険薬局で後発品の提供が可能である場合は長期収載品を医療扶助、保険給付の支給対象として処方、調剤できないと説明。

 そのため、長期収載品を希望した場合であっても、医療扶助の支給対象とはならないため、「後発品の処方・調剤を行う」ことになるとした。

 ただ、長期収載品の処方で医療上の必要があると認められる場合は、その長期収載品は医療扶助の支給対象とする。

 また、10月1日前に処方された長期収載品で、薬局に10月1日以降に処方箋が持ち込まれた場合、2回目以降の調剤のためにリフィル処方箋や分割指示のある処方箋が持ち込まれた場合は、制度施行前の取り扱いとなるとした。

 10月1日以降に旧様式の処方箋で処方された長期収載品で、後発品変更不可にチェックがあるものの、理由について記載されていないものについては「薬局から処方医師に対して疑義照会を行うなどの対応を行うこと」とした。

 診療報酬明細書の記載については、医事会計システムの電算化が行われていないものとして、地方厚生局長に届け出た医療機関や薬局については、薬剤料に掲げる所定単位当たりの薬価が175円以下の場合は薬剤名や投与量等を記載する必要がないとされているが、医療上の必要性等で長期収載品を処方・調剤した場合についても「記載不要」との見解を示した。

公務員薬剤師、初任給2万1700円増‐民間賃上げ反映し大幅増 人事院

人事院は8日、2024年度の国家公務員給与である月例給(基本給)を2.76%増、ボーナスを0.10月分引き上げるよう国会と内閣に勧告した。若年層に特に重点を置きつつ、全ての職員を対象に全俸給表を引き上げ改定し、ボーナスに当たる特別給の支給額を増額した。病院等に勤務する公務員薬剤師は医療職俸給表(二)が適用され、6年制薬剤師の初任給(2級15号俸)は24万4400円となり、昨年に比べて2万1700円の大幅アップとなった。

 国家公務員の給与勧告を行うため、全産業をカバーする全国約1万1700の民間事業所の事務・技術関係22職種の約42万人、研究員・医師等54職種の約4万人を対象とし、民間給与を調査した。

 その結果、月例給では国家公務員給与が民間給与を1人当たり平均1万1183円(2.76%)下回っており、民間給与との均衡を図るため、月例給を引き上げた。人材確保の観点等を踏まえ、30歳台後半の若年層に重点を置いて俸給を引き上げる方針。

 ボーナスは直近1年間の民間の支給状況を調査して官民比較を実施した結果、民間の支給月数が4.60カ月となったのに対し、公務員の支給月数は4.50カ月とわずかに0.10カ月分下回っていたため、昨年と同様に0.10カ月の引き上げとなった。

 公的病院に勤務する薬剤師は、栄養士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士等と共に医療職俸給表(二)が適用される。薬剤師の初任給は24万4400円となり、2万1700円の大幅アップとなった。

災害時「荷物を持ってあげること」でも助かる医ケア児・障害児家族支援 開かれなかった福祉避難所、一般の避難所ではカバーできない酸素ボンベや電源確保、介助スペース...能登半島地震を体験したソーシャルワーカーが見た現場の課題

 「どんな状況下でも、子どもの権利を中断させてはならない」。1月に能登半島地震に見舞われた石川県の医療的ケア児(医ケア児)支援センターの中本富美センター長(58)が、鹿児島市のハートピアかごしまで講演した。「支援者の自分自身も傷んでいる」と影響の大きさを明かしつつ、医ケア児の避難生活の実情や災害対策の課題を語った。要旨を紹介する。

 センターは2年前、県が金沢市の医王病院内に開設した。ソーシャルワーカーの私と医師1人が常勤する。家族会とともに医ケア児の暮らしを知ってもらう写真展や、在宅移行前に「先輩ママ」を派遣する事業などに取り組む。

 県内の医ケア児は約200人。18歳未満には、その子の状態や必要なケアを記した「災害時あんしんファイル」を作成し、病院では東日本大震災をきっかけに患者家族と避難訓練を行っていた。

 地震が起きた1月1日午後4時10分、日直で病院にいた。何が起こったのか分からず不安と恐怖を感じた。在宅の子どもたちの無事は、担当の医師らによって確認できた。

 震災後に家族会などが行ったヒアリングによると、福祉避難所は開かれず、人が集まる地域の避難所には行けない多くの人が車で過ごした。「車内のおむつ替えはスペースがなく大変だった」「荷物が多く苦労した」との声があった。避難所に身を寄せた人からは「夜中に大声を出したり、泣いたりするので他人の迷惑になる」という悩みも聞かれた。

 支援の中で強く感じたのは、どんな状況下でも「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」といった「子どもの権利」を中断させてはならないこと。災害は特別な状況を作り出す。子どもにとって当たり前の暮らしや経験が失われてしまうかもしれない。医ケア児は特に影響を受けやすい。

 地震翌日、医ケア児がいる能登地方の家族と連絡が取れないとの報告を受け、小児科医のネットワークと対応した。倒壊寸前の避難所にいると分かり、入院を調整。地域の基幹病院は機能不全に陥っており、県DMAT(災害派遣医療チーム)を通して金沢市内の病院に搬送した。酸素ボンベの残量は少なく、時間との戦いだった。全壊した自宅には戻れず、ホテルや応急住宅への入居手続きを支援。教育委員会と連携して転校手続きも進めた。

 震災を経て地域の指定避難所へ行くべきか、避難所の電源を確保できるのかなど疑問が浮き彫りになった。子どもの個別避難計画の作成も遅れている。研修会や避難訓練を通し「分からないことを分かる」必要がある。

 災害時は自助だけでなく共助も重要になる。医ケア児や障害児は専門職しか関われないとのイメージを持たれる。だが、当事者家族に一番してほしいことを聞くと「荷物を持ってもらうこと」と答えた。地域に住む子どもの一人として知ってもらい、日頃からつながりを築いておきたい。

薬剤性軽度認知障害に警鐘 睡眠薬や抗不安薬が原因に 中止の場合は睡眠指導も 「医療新世紀」

認知症の一歩手前とされる「軽度認知障害(MCI)」は、年齢不相応に物忘れがあるものの、日常生活には支障がない状態だ。その原因の一つにアルツハイマー病があるが、高齢者がよく使う睡眠薬や抗不安薬でもMCIになり得る。専門家は診療の場でよく見かける「薬剤性軽度認知障害」として注意喚起している。

 ▽原因はさまざま

 日本神経学会の診療ガイドラインによると、65歳以上の高齢者でMCIの割合は15~25%。政府が今年5月に公表した将来予測では、2025年に認知症は全国で471万人、MCIは564万人と推計されている。アルツハイマー病の原因とされる脳内の異常タンパク質に直接働きかけ、昨年12月に保険適用となった認知症治療薬の投与対象がMCIと軽度の認知症であることから、MCIが注目されている。

 MCIは「忘れっぽい」「言葉が出にくい」「物事の段取りがしにくい」などの症状が出るが、症状は比較的軽く、正常と認知症の間の状態という。

 診療ガイドラインによると、MCIから認知症に移行する割合は1年当たり5~15%、正常に戻る割合は16~41%とされている。

 MCIの原因はアルツハイマー病だけでない。米国精神医学会はほかに、前頭側頭葉変性症、レビー小体病、血管性疾患、脳損傷、パーキンソン病、医薬品の使用などを挙げている。

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