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市立旭川病院・感染症センター公開 全個室にWi―Fi 患者増なら使用前倒しも

市立旭川病院は27日、新型コロナウイルスなどの感染症患者を受け入れる「感染症センター」を、報道機関に公開した。一般病棟とは別棟の感染症病棟を大幅改修し、病床数を6床から9床に増床、全室個室でシャワー、トイレを完備した。旭川市保健所などの認可を受けて1月中にも使用を始める予定だが、新型コロナの状況次第では前倒しする可能性もある。

 鉄筋コンクリート7階建てでセンターは1~6階。4~6階が病床で、1、2階が問診室や診察室、3階は看護師らの更衣室や休憩室となっている。建物内は気圧を屋外より低くし、汚染された空気が外に出ない仕組み。全室でWi―Fiを使えるようにし、患者がスマートフォンなどで、家族と連絡を取りやすくした。2~6階には、身体障害者用のトイレも新設した。

医学部地域枠は労基法に抵触か、医師の「人身拘束」の懸念

一般社団法人「医療法務研究協会」は12月19日、「医学部地域枠の運用上の法律問題」をテーマに都内でセミナーを開催、医学部の地域枠について、卒後に長期間の従事要件を設けたり、臨床研修や専門研修において、「不同意離脱」した場合にペナルティーを科すことは不当な「人身拘束」の防止規定を設ける労働基準法に抵触する可能性が指摘された。

 2022年度入試から地域枠の運用が厳格化されるほか、新専門医制度についても2021年度から、都道府県の同意なく離脱(不同意離脱)する医師に対しては、専門医として不認定とする方針が打ち出されている。同協会会長で弁護士の井上清成氏は、セミナーの冒頭、法的な問題が内在する可能性があることから、本セミナーを企画したと説明。「必ずしも解決の糸口が見えないかもしれないが、今後運用面の改善をしていくにあたって、問題点を意識してもらいたい」。

 「奨学金返済など、お金の問題なら解決しやすい」とも述べ、地域枠が臨床研修や専門医資格などにかかわる現状を問題視。「いろいろな相談が弁護士に行っている現状だ。中には提訴に値する問題もある。早急に組み直しをしないと、大きな裁判が勃発することを危惧している」と指摘し、医学生、研修医、専門医のほか、地域の住民などの利害関係者全てが集まり、法的な整理をする必要性を強調した。

 スプリング法律事務所の弁護士の石井林太郎氏は、地域枠出身者に対し、特定就業先での長期間の就業義務を設けたり、違反(離脱)時に専門医を不認定としたり、奨学金の一括返済などのペナルティーを科すことは、労基法5条(強制労働の禁止)、14条(契約期間の制限)、16条(賠償予定の禁止)に抵触する可能性があるとし、警鐘を鳴らした。さらに日本専門医機構が、「不同意離脱」をしているか否かの情報提供を当該都道府県から受けるのは、第三者提供の観点から個人情報保護法に抵触する恐れもあると指摘した。

チューインガムで術後イレウスが低減

心臓手術後にチューインガムをかむことで、術後イレウス(腸閉塞)を軽減できることが、米国胸部外科学会(STS)主催のPerioperative and Critical Care Conference(9月10~11日、オンライン開催)で報告された。

 米クローザーチェスター医療センターのSirivan Seng氏らは、2017~2020年に心臓手術を受けた連続症例341例を対例に、安定が確認された後、1日3回、5~10分間ガムをかんでもらい、2013~2016年に同様の選択的心臓手術を受けた496例と術後イレウス発生率を比較。

 その結果、身体診察により腹部膨満を示し、画像診断で術後イレウスと確定されたのは、ガムをかんだ群で2例(0.59%)だったのに対し、かまなかった群では17例(3.43%)であり、この差は統計学的に有意であった。

 Seng氏は、「心臓手術を受けた患者でのガムの使用について調べた研究は過去になかったが、今回ガムが腸機能の回復を早める可能性が示された。リスクが最小でコストもわずかであることから、心臓手術後にガム介入を組み込むことは、新たな標準治療として強く検討されるべきである」と述べている。

モデルナ製ワクチン、ファイザー製より有効性わずかに高い

米国の退役軍人を対象に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)とmRNA-1273(モデルナ製)の有効性を比較。ワクチンの初回接種を受けた米国退役軍人の電子診療記録を用いて、各ワクチン群に21万9842例を登録した。

 その結果、アルファ変異株が優勢だった24週間の追跡期間中に見られた1000人当たりの推定感染リスクは、BNT162b2群5.75件、mRNA-1273群4.52件だった。BNT162b2の方がmRNA-1273よりもCOVID-19感染(1000人当たり1.23)、症候性COVID-1(同0.44)、COVID-19入院(同0.55)、COVID-19によるICU入室(同0.10)、COVID-19死亡(同0.02)の超過事象数が多かった。このほか、デルタ変異株が優勢だった12週間の追跡期間中の感染超過リスク(BNT162b2 vs. mRNA-1273)は、1000人当たり6.54件だった。

のどにパン詰まらせ患者死亡 鹿児島市立病院で医療事故 遺族に2000万円賠償

鹿児島市立病院で2017年3月、入院していた男性患者=当時(91)=が朝食のパンをのどに詰まらせ窒息し、同年12月に死亡していたことが分かった。病院側は医療事故と認め、市は賠償金約2000万円を遺族に支払い和解する方針。

 病院によると、男性は17年3月にインフルエンザ肺炎で入院。飲み込む機能が低下し食事の介助が必要だったが、配膳の看護師は男性が寝ていたため、食事を置いて部屋を離れた。男性は看護師がいない間にパンを食べてのどに詰まらせて、意識が戻らずに死亡した。

 病院側は当初から医療事故と認め遺族と協議。開会中の市議会12月定例会に賠償金を盛り込んだ補正予算案を提案した。補正予算議決後に合意書を結ぶ。

 病院は「大変重く受け止めており、二度と起こさないよう対策を徹底する」としている。この事故を受け、食事介助のリスク管理と認知症ケアの委員会を設置した。

3回目接種、高齢者・障害者施設で12月中にも 愛知県

愛知県の大村秀章知事は6日の会見で、感染リスクが高い高齢者施設と障害者施設の利用者と従業員を対象に、今月中にも新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を始める考えを示した。県内には米ファイザー社製ワクチン約58万4千回分の余剰があり、「十分対応できる。市町村間の相互融通も進める」と述べた。

 岸田文雄首相が6日の所信表明演説で、3回目接種を「できる限り前倒しする」と表明したことを受けての対応。県によると、入所施設の約21万人、通所施設の約28万人が対象となる。医療従事者向けの接種が今月から始まっているが、市民は早くても来年1月から始まる見込みだった。

 一方、県は6日、高齢者施設に求めてきた面会などの制限を撤廃する方針も決めた。11月に感染がわかったのが5施設の5人にとどまり、前月から大幅に減ったため。感染防止対策の徹底は引き続き求める。

「やぶ医者大賞」受賞の2人 へき地医療への思い語る

過疎地での医療に尽力する若手医師をたたえる「第8回やぶ医者大賞」に輝いた滋賀県長浜市の浅井東診療所の松井善典所長(41)と、北海道松前町の町立松前病院の八木田一雄院長(50)の表彰式と講演が13日、兵庫県養父市八鹿町八鹿の文化会館「やぶ市民交流広場」であった。医療関係者や市民らが参加する中、へき地医療への思いや将来の在り方を語った。(桑名良典)

 やぶ医者は、養父にいた名医が語源とされる。養父市は2014年、名医をたたえる賞を創設し、毎回、2人を表彰している。

 松井さんは、特別養護老人ホームなどでのみとりの経験を生かし、職員との連携モデルの構築について語った。患者ごとの「振り返り」の事例を示し、家族や職員を含めたケアの重要性を指摘した。また、不登校だった中学生が、対話を重ねることで大学へ進学した体験も紹介。最後に「地域と共に、患者と共に、住民の医療福祉の拠点として、今後も充実させていきたい」と結んだ。

 八木田さんは、松前町から近隣の総合病院まで救急車で約2時間かかると説明。1人の医師が内科や整形外科など複数の診療科を日替わりで受け持つ「全科診療医」で対応していると述べた。また、新型コロナウイルス禍で患者が減り、看護師も不足するなどして、診療体制を縮小せざるを得ない現状も訴え、「患者に相談してもらいやすく、信頼される病院を目指していく」と語った。

生活保護受給者200万人のレセプトデータ解析で糖尿病の実態調査

京都大学は11月16日、全国の生活保護受給者200万人のレセプトデータを用いて生活保護受給者の糖尿病の年齢別、性別、地域別の実態を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の仙石多美研究員、高橋由光准教授、中山健夫教授らと、東京都健康長寿医療センター研究所の石崎達郎研究部長の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology and Community Health」に掲載されている。

 生活保護制度は、被保護者の最低限度の生活を保障するとともに、自立の助長を図ることを目的としている。自立助長を図る基礎として、健康状態を良好に保つことは重要であるが、多くの健康上の課題を抱えている可能性がある。厚生労働省は、データに基づいた、生活保護受給者(被保護者)に対する生活習慣病予防・重症化予防のための健康管理支援を推進しているが、生活保護受給者の全国規模での生活習慣病の罹患状態はわかっていない。そこで研究グループは、生活保護受給者の2型糖尿病の有病割合を、性別、年齢別、地域別に調査。さらに、公的医療保険加入者との比較も行った。

 今回の研究は、生活保護受給者と公的医療保険加入者の1か月のレセプトデータを用いた横断研究。生活保護受給者のデータは2015年、2016年、2017年に実施された医療扶助実態調査の調査票情報を、公的医療保険加入者は2015年NDB(匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース)サンプリングデータセットを用いた。レセプト上で、糖尿病の傷病名(1型糖尿病を除く)があり、かつ糖尿病治療薬を処方されているものを2型糖尿病と定義した。粗有病割合および標準化有病割合(標準人口:1985年日本人モデル人口)を算出し、性別、年齢別、地域別(47都道府県別および112地域別)で算出。地域別(112地域)においては、マルチレベルロジスティック回帰分析も実施した。

粗有病割合7.7%、40~50代で有病割合高く、地域によるばらつきも

 2015年において、生活保護受給者の2型糖尿病の粗有病割合は7.7%。外来のみでは7.5%(公的医療保険加入者では4.1%)であり、標準化有病割合(外来のみ)は、生活保護受給者3.8%、公的医療保険加入者2.3%だった。加齢とともに有病割合が上昇したが、生活保護受給者では、公的医療保険加入者に比べ、40歳代、50歳代での有病割合が高くなった。47都道府県別では4.0~10.6%(標準化有病割合1.9%~5.0%)の幅が見られた。112地域別でのオッズ比も0.31~1.51の幅が見られた。

 生活保護受給者の2型糖尿病の有病割合は、公的医療保険加入者よりも高く、地域的なばらつきも見られた。今後、糖尿病の重症化を防ぐためにも地域レベルで実態を把握し対策を立てていくことが求められる。

社会格差や健康格差の是正、データに基づいた政策の一助に

 新型コロナウイルス感染症の影響による生活困窮や、社会格差や健康格差が社会的問題となるなか、生活保護の社会的意義は、ますます高まっている。今回の研究は、生活保護受給者の健康状態はどのようなのだろうか、そして、糖尿病の人は多いのだろうかという、極めて基礎的な問いから始まった。しかし、ある集団の「糖尿病の有病」というシンプルな情報を得るにも、医師により診断されている人、糖尿病治療薬を服薬している人、健診で指摘された人、血液検査(例えばHbA1c)においてある一定の値以上を示した人など、さまざまな考え方があり、一概に示すことは想像以上に難しい問いである。

 今回、日本で初めて、医療扶助実態調査とNDBという日本全体のレセプトデータを活用して、全国レベルで生活保護受給者と公的医療保険加入者の2型糖尿病有病割合を同基準で比較した。日本では、特定健診やレセプトのデータを健康増進や病気予防に活用するデータヘルスという取り組みが進んでいる。生活保護受給者や生活困窮者の最低限度の生活の保障、自立の助長は、一時的な感情や印象で議論せず、健康管理支援においても、データを活用してよりよい医療の提供を目指すことが重要だ。「今回の研究は、社会格差や健康格差の是正、データに基づいた政策を行うための一助になると考えている」と、研究グループは述べている。

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