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介護保険料、過去最高更新 65歳以上月額6225円 24~26年度、全国平均 利用増、改革議論加速も

厚生労働省は14日、65歳以上の高齢者が2024~26年度に支払う介護保険料(月額)が全国平均で6225円になったと発表した。前期21~23年度より211円(3・5%)上昇し、過去最高を更新。00年度の制度開始当初(2911円)の2・1倍となった。25年には団塊の世代が全員75歳以上となり、40年度には高齢者人口がほぼピークを迎え、介護サービス需要は急増する見通し。保険料の抑制に向け、サービス利用時の自己負担を支払い能力に応じて増やすなど制度改革の議論が加速しそうだ。

 介護職員の賃上げを行うためサービスの公定価格「介護報酬」を24年度に増額改定したことも保険料アップに影響した。介護が必要な高齢者は24年度に705万人、40年度に843万人に上ると推計されている。武見敬三厚労相は14日の記者会見で「介護保険制度が全世代にとって安心なものとなるよう健康寿命の延伸や負担の在り方の検討を進めたい」と述べた。

 65歳以上の介護保険料は今後の介護需要などを考慮し、市区町村や広域連合がそれぞれ3年に1度見直す。厚労省は全1573の市区町村と広域連合の保険料を集計し、4割超の712カ所が保険料を引き上げた。585カ所が据え置き、276カ所が引き下げた。

 据え置きや引き下げでは、運動や交流の推進など介護予防の効果が出ているとみられ、余った保険料を積み立てた基金を取り崩して財源に充てたケースもあったという。

 月額保険料は725カ所で6千円を上回り、うち85カ所は7千円を超えた。最高は大阪市の9249円で、1人暮らしの高齢者が増加しサービス利用が増えたことが要因。大阪府守口市8970円、大阪府門真市8749円、岩手県西和賀町8100円が続いた。

 最低は東京都小笠原村の3374円で、他に北海道音威子府村と群馬県草津町が3千円台だった。都道府県別の平均では、最高が大阪府の7486円、最低が山口県の5568円だった。

肥満予防薬「アライ」、実力は

今月8日、「内臓脂肪・腹囲減少薬」をうたった「アライ」が大正製薬(東京都豊島区)から発売された。医師の処方箋不要で、薬局・薬店で買える一般用医薬品だが「要指導医薬品」に該当し、薬剤師から説明を受けることが条件だ。消費者の関心も高い新薬の実力を探った。

 ●脂質分解吸収を阻害

 アライは膵臓(すいぞう)から分泌され小腸で脂質を分解し吸収を助ける消化酵素、リパーゼを阻害する薬剤だ。アライの有効成分である「オルリスタット」によってリパーゼの働きが阻害されると、食べ物に含まれる脂肪分が体内に吸収されず、便として排せつされる。同社は「食べた脂肪の約25%が排せつされると期待できる」と説明する。服用方法は食事中または食後1時間以内に1カプセルを1日3回。価格は6日分が税込み2530円、30日分が同8800円。

 内臓脂肪の減量が重要なのは、蓄積すると糖尿病や脂質異常症、高血圧などの多くの生活習慣病になりやすいためだ。日本肥満学会の横手幸太郎理事長(千葉大学長)は「内臓脂肪の脂肪細胞が増えると、血糖値や血圧に作用する生理活性物質のバランスが崩れ、生活習慣病の発症につながる」と説明する。このため同学会は、肥満や肥満症の人に対して「体重の3%以上の減量」を呼び掛けている。

 同学会の定義によると、肥満と肥満症は主に体格指数(BMI)と健康障害の有無で分けられる。体格指数は、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った数値で、25以上が肥満に該当する。肥満症は、肥満に加え糖尿病や高血圧など11の健康障害(疾患)が一つ以上ある場合だ。BMI35以上の場合は健康障害がなくても「高度肥満症の可能性あり」、BMI35以上で健康障害があれば「高度肥満症」として治療対象となる。アライの対象はBMI35未満かつ健康障害がない人で、肥満症の「予防薬」にあたる。

 アライは2007年に米国で一般用医薬品として承認された。大正製薬は08年に海外の製薬会社と導入契約を結び、開発に16年をかけた。19年に承認申請した後の審査も23年まで約4年という異例の長期に及んだ。同社は「『腹囲減少』という新規の薬効や適正使用できるかという点などの説明に時間を要した」と話す。

 ●販売に厳しい条件

 「やせ薬」としての安易な使用が懸念されるため、販売条件は厳しく決められた。購入者は薬剤師と対面し、腹囲(男性85センチ以上、女性90センチ以上)や生活習慣改善への取り組み状況の確認を受ける。更に服用中も体重や腹囲の記録が求められる。同社は使用者が簡単に生活習慣を記録できるよう、スマートフォン向けアプリを開発。また適正販売のため、薬剤師もアライ専用の研修プログラム修了者のみが販売に従事できる体制とした。出荷先も条件を了承した薬局・ドラッグストアに限定し、同社から直接販売する。

 ●「漏れ」は起こる

 服用の際に注意が必要なのが、薬の働きに伴う特有の症状だ。脂肪分をそのまま排せつするため、便や油の漏れが起こるという。臨床試験を通じて報告された消化器系の副作用は440例中180例で全体の約4割。具体的な症状としては、油の漏れのほか、便や油を伴う放屁(ほうひ)や油性排せつ物、脂肪便、便失禁などが挙がった。

 これらの症状に対し、同社は「脂肪分の多い食事を控える」「下着に便漏れパッドやナプキンをつけておく」「替えの下着を準備しておく」「服用開始は終日自宅で過ごせる休日にする」「おならが出そうな時はすぐにトイレに行く」「外出時はトイレの場所を把握しておく」といった対策を呼び掛けている。

学校側へ「プライバシー配慮を」 健診で川崎市教委 国の通知受けチェックリストに新項目

川崎市教育委員会は本年度から、年度初めの内科健診実施前のチェックリストに、児童生徒のプライバシーや心情への配慮に関する項目を新たに設けた。文部科学省の通知を受けた対応で、各校で順番を待っている間に体操服やタオルで体を隠せるようにしているかや、検査や診察時に周囲から体が見えないように囲いやカーテンを用意しているかなどを確認するよう促している。

 文科省が1月に各都道府県や政令市の教育委員会などに出した通知では、正確な検査・診察の実施と、児童生徒のプライバシーや心情への配慮が重要だとして、環境整備の考え方を示している。

ダウン症児の白血病 再発原因の変異発見/弘大など

弘前大学大学院医学研究科の伊藤悦朗特任教授(小児血液学)らでつくる研究チームが、ダウン症の子どもが発症しやすい血液のがん「骨髄性白血病」の発症と再発の原因となる遺伝子変異を発見した。2013年にも遺伝子変異を新たに確認していたが、今回はさらなる変異と再発原因につながる遺伝子を見つけた形。発症メカニズムの解明に向けた大きな一歩で、新たな治療法の開発に期待がかかる。

 研究成果は、血液学の分野で最も権威ある学会誌「Blood(ブラッド)」(米国血液学会)の電子版に21日付で掲載された。

 研究チームによると、ダウン症の新生児の一部は「前白血病」とされる一過性異常骨髄増殖症にかかり、さらに骨髄性白血病を発症する場合がある。骨髄性白血病は治りやすく、適切な治療を受けると8~9割が完治する。ただ、残りの1~2割の患者は治療が効かずに再発する。ある患者群だけが再発を繰り返す原因は不明だった。

 伊藤特任教授らによる13年の研究では、26の遺伝子の変異が、骨髄性白血病の発症に関与していることが分かっていた。ただ、当時は調査した検体数が少なく、発症メカニズムの解明にはさらなる調査が必要だった。

 

自閉症診断に視線追跡機器による評価の有用性

米国で、視線追跡に基づいた視覚的な社会的関与(social visual engagement)の測定が自閉症診断のバイオマーカーとして有用かどうかを検討した。自閉症専門クリニックに紹介された生後16-30カ月の幼児を対象に、自動化された視線追跡機器を用いて視覚的な社会的関与を測定し、専門家による臨床診断との比較で感度と特異度と評価した。

介護施設への往診、入所者の入院などの評価新設へ

 介護報酬改定と同時改定となる2024年度診療報酬改定では、介護保険施設内で医療保険で実施可能な医療行為を評価したり、施設からの入院受け入れを容易にする点数が新設される。介護保険施設の入所者の急変時に医療機関が往診した場合の「介護保険施設等連携往診加算」、入所者の入院を受け入れた場合の「協力対象施設入所者入院加算」などがその例だ。

 介護保険施設や障害者支援施設において、悪性腫瘍の患者に対する放射線治療の医学管理や緩和ケアの医学管理など、施設内での対応が困難な医療行為について医療保険による算定も可能とする。

 その他、在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院、在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟において、「介護保険施設の求めに応じて協力医療機関を担うことが望ましいこと」を施設基準に加えるなど、医療機関と介護保険施設との連携強化を図る。

 厚生労働省が1月26日の中医協(会長:小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)で「個別改定項目」(短冊)として提示した(資料は、厚労省のホームページ)。

入院料や初再診料引き上げへ、賃上げ対応

厚生労働省は1月26日の中医協総会(会長:小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)に2024年度診療報酬改定に向けた「個別改定項目について」を提示、具体的な改定内容についての議論が始まった。焦点の「賃上げ」について入院基本料、初再診料、外来診療料、調剤基本料で対応することを明示するとともに、「賃上げに向けた評価」を新設する。具体的な点数設定は今後示される(資料は厚労省のホームページ)。

 2023年12月の厚労・財務相折衝で改定率のうち賃上げに用途を限定した財源が設定されており、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種については、2024年度にベア+2.5%、2025年度にベア+2.0%と数値目標が定められている。診療側は初再診料や入院基本料での対応、支払側は条件を付けた加算などでの対応を求めていた(『医師らの賃上げ、初再診料・入院基本料の増点か加算か』)。

 診療所については入院・外来医療等の調査・評価分科会で「透析や内視鏡といった初再診料による収益が多くない施設には対応が必要ではないか」との指摘があったことから追加で分析。賃金増率が1.2%に達しない医療機関を対象とした追加の評価も新設する。点数の増加分が実際に賃上げに使われているかを担保するため、計画と実績の報告も求める。

 入院基本料については、施設基準で標準的な栄養評価手法の活用や、退院時も含めた定期的な栄養状態の評価を栄養管理手順に位置づけることを明確化することや、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)など適切な意思決定支援についての指針策定、身体的拘束の最小化などを要件化する。

 健康保険組合連合会理事の松本真人氏は、「基本料に溶け込ませると病院と診療所の経営格差、職員配置の違いを反映できない。なぜ加算ではだめなのか」と質問。厚労省保険局医療課長の眞鍋馨氏は、若手の勤務医が大学医局人事などで短期間に勤務先が変わることや、事務職員は派遣や委託も多いことなど雇用形態が複雑であることから「広く算定されている基本料等に上乗せする対応が適切ではないかという提案だ」と回答すると、松本氏は、「最大限の実態把握と効果の検証を行い、対応が不十分な場合は見直すことを前提に了承する」と述べた。

 実績報告について、診療側は日本医師会常任理事の長島公之氏が、事務的な負担、非常勤や異動のある医師も多いことから「収入と支出の総額を把握するのが限界だ」と主張。支払側は、松本氏が時間外手当は労働時間数によって変動するため、含めてしまうと賃上げによるものかどうかの判断ができなくなるとして「少なくとも基本給は(報告を)やっていただかないと実績把握は難しい」と話した。

コーヒー飲み過ぎ認知症か 「医療新世紀」

 コーヒーを1日に4杯までなら認知症を発症するリスクが下がるが、5杯以上になるとリスクが上がる可能性があるとの分析結果を、韓国の研究チームが国際医学誌に発表した。

 チームは、コーヒー摂取と認知症リスクの関係に触れた500本以上の論文から、分析に適した2002~22年の11研究を取り上げた。北米と欧州、日本の7カ国約6千人の自己申告に基づくコーヒー摂取量と発症リスクが分析の対象。

 その結果、毎日1、2杯と答えた人は認知症になるリスクが32%下がり、2~4杯と答えた人は21%減少した。5杯以上になると、4%上昇する可能性が示された。

 注)国際医学誌はジャーナル・オブ・ライフスタイル・メディシン

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