記事一覧

おいしい「嚥下食」レシピ出版 赤磐医師会病院スタッフ出版

赤磐医師会病院(赤磐市下市)のスタッフでつくる「あかいわチームクッキング」は、かんだり、飲み込んだりするのが難しくなったお年寄りでも食べやすい「嚥下(えんげ)食」をまとめたレシピ集「きょうもいっしょに食べよ!」を出版した。医師や管理栄養士が約1年半をかけて研究。家庭で手間を掛けずに簡単にできる調理法を紹介している。

 執筆したのは、副院長で内科医の柚木直子医師(51)と管理栄養士の上山ひさよさん(63)、草谷悦子さん(55)、勝井美紀さん(40)、伊達愛さん(31)の5人。

 のどを通りやすくする市販の「とろみ剤」を使った通常の嚥下食よりもおいしく食事ができるようにと、2013年秋から試作。食材の硬さ、粘度を調整するため、試作を何度も繰り返してきた。

 メニューは全61種類。うどんや食パンなど主食のほか、コロッケ、エビフライなどの総菜、レトルト食品をアレンジした調理法を分かりやすく紹介。食欲をそそるよう色鮮やかな料理の写真も添えている。

 とろみ剤の代わりになる、はんぺん、わらびもち粉など“おすすめ商品”もきめ細かく収録し、購入先も記した。アップルパイやシュークリーム、マカロンなどのスイーツは、東京のパティシエの協力を得て作った。柚木医師は「家族で同じ食事を囲むことで、心の触れ合いを深めてほしい」と話している。

 変形判(縦24センチ、横18センチ)、90ページで2千円(税別)。ライフサイエンス出版。6日午後2時からは、同病院会議室で嚥下食の試食会も予定している。事前の申し込みが必要。

 同スタッフは2012年にはクリスマスやお月見、お正月といった季節の料理を紹介した「嚥下食レシピ集」を発刊、約4500部が売れている。

 問い合わせは同病院地域医療連携室(086―955―5709)。

札幌医大、教授を懲戒解雇、兼業で

 札幌医科大学(島本和明理事長)は5月25日、医学部の50歳代の外科系教授が、学外での兼業回数や収入を過少報告していた事実が確認されたことなどを理由に、懲戒解雇処分とした。発表は5月26日(プレスリリースは、同大のホームページ)。教授は、大学側の聞き取りに応じておらず、全容は不明だが、ここ2、3年は、「(大学からの収入を)大幅に超える給与収入」を得ながら、必要な届け出をしていなかったという。

 同大学は、規定で「月に5日間まで、社会通念上許される金額」での兼業を認めていて、その金額については、「(年間で)大学からの年収を超えない金額」との申し合わせがあるという。

 大学の調査や広報担当者によると、教授は北海道内の医療機関で、5、6年前から兼業を実施。回数や報酬について、一部しか報告しておらず、大学側で確認できた事実だけでも、報告していない兼業が、報告の2倍以上あり、ここ2、3年は大学からの収入を大幅に超える収入を得ていたという。学会などで道外への出張届けを出している期間中に、道内に戻って、兼業を実施し、再び道外に戻ったケースも確認された。

 大学は、教授の講座が管轄する病床稼働率が低いことから、注意を実施していたが、2014年末に、大学内外の医師から、「教授が兼業規定に違反しているのでは」とする通報があった。島本理事長が事実関係を確認した際、教授は「違反はない」と回答したものの、具体的な資料の提示はなかった。2015年1月に設置された調査委員会の事情聴取にも応じず、教授は文書で「違反はない」「(出張のケースは、出張変更の)届け出を忘れていた」と説明したが、大学側の具体的な指摘事項に対する回答はなかった。大学は、教授の懲戒解雇を決め、監督者の医学部長と附属病院長について、訓告とした。

 島本理事長は、「皆様の信頼を裏切り、心からお詫び申し上げる。再発防止に向けて、より一層倫理の向上を図る」旨のコメントを出した。

eye 食べる幸せ、感謝の笑顔 リクエスト食で終末期ケア

「あした、何が食べたいですか」。終末期ケアに取り組む淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院(大阪市東淀川区)では金曜日の午後、管理栄養士の大谷幸子さん(65)が病室を回って笑顔で患者にこう問いかける。土曜日の夕食は「リクエスト食」で、患者一人一人が望むメニューを院内で調理して出している。

 黒川和子さん(92)は先月、転院してきて初のリクエスト食を口にした。前日、看護師に刺し身が食べられると聞くと「本当? うれしい」。昨年12月に胃がんが見つかった。それまでは、孫娘やひ孫らと回転ずしに行くのが楽しみだった。

 当日は調理師がマグロとタイの刺し身や茶わん蒸しなどを病室に届けた。まずタイを1切れ。「歯ごたえがあって、おいしい」。大好物のマグロに「大きいねえ」と笑みがこぼれた。30分ほどかけてすべてをたいらげると、目を閉じて手を合わせた。「生きて、おいしいものが食べられたことに感謝です」

 内田温久(はるひさ)さんは一昨年秋、胆管がんで余命1年と言われ、今年2月に転院してきた。その月、院内のパーティールームに経営する会社の仲間や同級生ら20人が集まった。すき焼きと寄せ鍋がテーブルに並び、内田さんも肉2切れと白菜を口にした。

 その日の夕食はリクエスト食で、海鮮ちらしずしを食べた。長女に少しずつ口に運んでもらい、「ほんまにおいしい。病院ですしとは幸せ者やなあ」と穏やかな笑顔になった。その8日後、内田さんは家族に見守られて静かに息を引き取った。63歳だった。

 家族との思い出が詰まっていたり、懐かしい母親の味だったり。池永昌之副院長は「食べることと生きることは密接に結びついている。リクエスト食に人生が反映されることもあり、心のケアにもなる」と語る。大谷さんは2009年に夫を肝臓がんで亡くした。入院した時は手遅れで、好きなものが食べられなかった。大谷さんは「たとえ少しでも、食べられるうちに望むものを食べてほしい。医師や調理師と相談しリクエストに可能な限り応えたい」と話している。

のどなくしても声を出す がん社会はどこへ 第2部 働き続けたい/1

東京の下町、葛飾区柴又の住宅街の一角にある小さなオートバイショップに独特の「声」が響いた。経営する鈴木裕司さん(68)が声帯を失ったあとに体得した、食道を使う声だ。話す際は、声が出やすいように、首の付け根に開けた10円玉大の呼吸用の穴に手をあてる。

 まだ現役世代の60歳の時、実兄と営んでいた自転車店をたたみ、自宅のガレージを店舗にした。古いオートバイを修復し、再び走らせる仕事で、長年の趣味が実を結んだ。しかし、開店後間もなく、耳の痛みがひどくなり、下咽頭(かいんとう)がんが分かる。

 咽頭がんは、音楽プロデューサーのつんく♂さんがかかった喉頭(こうとう)がんと同じ「のど」のがんだ。鈴木さんは発見時、進行した「ステージ3」。放射線治療などは「間に合わない」(医師)状態だった。告知後すぐに主治医から治療の選択を迫られた。声帯を摘出する▽声帯は残すが、栄養摂取のためおなかに穴を開ける「胃ろう」に▽治療をせず、痛みをコントロールする――だ。

 「生きる以外に選択はない」と、鈴木さんは声帯摘出を選んだ。主治医から「もう声は出ない」と言われたが、病院の待合室で、喉頭(声帯含む)を摘出した人を支援する公益社団法人「銀鈴会(ぎんれいかい)」(東京都港区)を紹介する本を見つけ、門をたたくことにした。

 ●食道をふるわせ

 銀鈴会は1954年に設立された。喉頭摘出者に新たな発声法を伝授し、「早期の社会復帰を手助けする」ことを目的に活動する。秋元洋一副会長は「がん患者は、体だけでなく心も病みがちですが、社会に参加することで立ち直ることができる」と話す。

 発声法は主に3種類。電動式器具を首に密着させる方法もあるが、広く採用されているのは「食道発声法」だ。食道などから空気を吐き出す際に、入り口部分を振動させて声を出す。早ければ半年の訓練で話せるが、途中で挫折する人も少なくないという。

 自らも喉頭を摘出した太田時夫専務理事は「噺家(はなしか)やミュージシャンが、声帯を残して命を失う。そんな話を聞くと、『ここに来てくれていれば』と残念でなりません」と話す。「元の声を失っても、その人にしかできない仕事があるはず。人生観は人それぞれだが、新たな声を得る可能性があることだけは知ってほしい」

 ●会話がリハビリ

 鈴木さんも努力して食道発声法を習得し、店を再開した。初めての客も来店するが、皆、話をよく聞いてくれる。「仕事で人と話すこと自体がリハビリなんです。家に閉じこもれば、発声力が途端に衰えてしまう」

 5年前には大腸がんも見つかり、腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた。今は治療を終え、定期的に検査するが、がん再発の不安から逃れることはできない。「仕事をしていなければ、余計なことばかり考えて不安に押し潰されたかもしれない。そうなれば死ぬことを考えたかも」。笑顔が絶えない鈴木さんが、神妙な表情を見せた瞬間だった。

 妻(67)は薬剤師として働き、鈴木さんの収入は、自分や孫に使うこともできる。今は週3回、銀鈴会の指導員も務め、自分の経験も伝える。

 ●仕事と両立に壁

 2012年度から5年間を対象とする国の「がん対策推進基本計画」には、がん患者への就労支援が盛り込まれており、厚生労働省は昨年2月、検討会を設置し、支援の仕組みづくりが進む。

 ただ、がん患者がいったん休職して復帰し、さらに治療と仕事を両立するには、依然として多くの壁がある。

 がん患者の治療と仕事の両立に向け、病院としての取り組みを研究する聖路加国際病院(東京都中央区)の山内英子ブレストセンター長は指摘する。「雇う側と患者が同じテーブルに着く土壌はようやくできつつあります。一方で、がんに対するマイナスのイメージは根強く、病を公表できない患者もまだ多い」【三輪晴美】

    ◇

 がん患者にとって仕事は、暮らしと治療を支える手段だけでなく、病に対する不安やつらさを紛らし、社会で自らの存在を確かめつつ生きる力となる。日本人の2人に1人ががんになる時代。さらに、新たにがんが発覚する約30%は、15歳から64歳の働く世代だ。がんになっても仕事を続けられる環境を作るにはどうしたらいいのか。悩める患者や雇用側を訪ね、今、何が必要かを探る。=つづく

8割が患者・家族から暴力や暴言◆Vol.1

「最近、ハードクレーマーが激増している」。そんな声が、m3.com編集部が今年3月に実施した医師調査で寄せられた(『「外来にレコーダー必須」「1年後の返戻、対応困難」◆Vol.18』を参照)。理不尽な要求をする患者とのトラブルは、最近では、患者の高齢化や認知症患者の増加を背景にしたケースや、医療を否定する内容の本やニュースの影響を受けたとみられるケースも指摘されている。

 突然のトラブルが起きた時、まず対応を迫られるのは現場の医師。どうすればトラブルを防げるのか、関心は高いものの抜本的な対応策はなかなか見つからないのが現状だ。

医療費支払いを負担に感じて受診ためらい死亡 秋田県央部の60代女性

秋田県央部の60代女性が昨年秋、医療費の支払いを負担に感じて医療機関の受診をためらい、がんで亡くなっていたことが明らかになった。亡くなる直前に救急搬送されたものの、手遅れだった。女性は国民健康保険の保険料(税)を滞納し、医療費を窓口でいったん全額支払わなければならない「被保険者資格証明書(資格証)」の交付を受けていた。

 昨年秋の夕方、女性は近くに住む親族を通じて「自宅で動けなくなった」と119番した。秋田市の中通総合病院に救急搬送され、末期がんと判明。手術ができないほど進行していた。

 女性はそのまま入院し、同病院医療福祉相談室の医療ソーシャルワーカーに「以前、腫瘍があると診断を受けた。ただ、医療費が払えないので通院しなかった」と打ち明けた。

 女性はアパートに1人暮らしで、パートを二つ掛け持ちしていた。支払う保険料は月1万3千円程度だったという。医療ソーシャルワーカーは「仮に払ったとしても、収入が少ないため、通常の自己負担(医療費の3割)も重荷になると考えたのではないか」と推測する。

 医療ソーシャルワーカーは女性の資格証について地元自治体へ相談。女性が重病であることを説明し、有効期限は短いが窓口負担が軽くなる「短期被保険者証(短期証)」に切り替えてもらった。女性は働けなくなって収入も途絶えたため、生活保護も申請する予定だった。だが、入院から約1週間後、息を引き取った。

 地元自治体によると、女性は保険料支払いの相談に訪れておらず、女性宅は民生委員の訪問対象でもなかった。このため女性の家計状況や健康状態を把握しておらず、行政のセーフティーネット(安全網)ですくい上げることができなかったという。

第三者機関の受け付け開始 医療事故調査制度で厚労省

厚生労働省は8日、10月から始まる医療事故調査制度で、診察や検査、治療に関連した患者の予期せぬ死亡事例が起きた際に医療機関側からの届け出を受け付ける第三者機関「医療事故調査・支援センター」の募集を始めた。

 申請できるのは、医療の安全確保などを目的とする一般社団法人か一般財団法人。22日までの応募期間を経て、要件を満たしているかを審査した上で厚労相が指定する。

 同制度は全国の病院や診療所、助産所の計約18万施設が対象。患者の予期せぬ死亡事例が起きた際、第三者機関への届け出や院内調査の実施を医療機関側に法的に義務付ける。

 第三者機関は、医療機関が行う院内調査の報告を受け、分析した上で類似事案ごとに整理。患者の名前を匿名にするなどし、各医療機関にも報告する。院内調査の内容を不服とする遺族側からの依頼を受け、直接調査することもできる。

 厚労省は8日、こうした内容を定めた運用指針を正式決定し、関係機関などに通知した。これまでに「病院職員が匿名で内部告発できる外部組織を別に設け、その組織から病院の管理者に事故調査を行うよう命令できるようにすべきだ」といった指摘のほか、院内調査の報告書の扱いについて、遺族側に渡すことを努力義務とした点への賛否など151件の意見が寄せられた。

発達障害の夫を持つ妻が悩みを共有 心身の回復を目指す活動、横浜市で始まる

成人した人の発達障害の認知が進む中、当事者を身近で支える家族をケアする必要性が指摘されている。なかでも深い悩みを抱えがちなのが、発達障害の配偶者を持つ妻。夫の障害特性から生じる悩みや困難があっても「どこの家庭にもあること」と取り合ってもらえなかったり、「夫ではなく、あなたが悪いのでは」と責められたりして、心身の調子を崩してしまう人もいる。その苦しみを分かち合い、回復を目指す活動が横浜市内で始まっている。

 4月16日、発達障害の夫を持つ女性の自助グループ「フルリールかながわ」の集まりが、かながわ県民センター(同市神奈川区)で開かれた。

 参加者は6人。「時間に正確すぎて、待ち合わせ時刻ちょうどに相手がいないと帰ってしまう」「『気持ちを考えて』と言ったら、『気持ちって何?』と聞き返された」「夫の両親に『息子の行動がおかしいのはあなたのせい』と言われた」…。夫の行動の特徴や周囲からの反応が語られるや、「うちも同じ」と共感の声が次々に上がる。

 夫と子どもの関係、金銭管理の問題やその対処法など、話題は幅広い。約3時間語り合った後、参加者の1人は「ここで話し合うことが生きていく力になる」と晴れ晴れとした笑みを浮かべた。

 フルリールかながわの代表を務めるのは、シニア産業カウンセラーの真行(しんぎょう)結子さん(51)=同区。自身も発達障害の元夫(56)と20年以上暮らし、気持ちを分かち合えないことや、さまざまな誤解に苦しんだ一人だ。

 元夫は、真行さんが仕事の悩みや子どもの進路を相談しても自分の考えを何も答えられず、感情を共有することもできなかった。「一緒に暮らしていても一人」のようでつらかったが、仕事や地域活動に熱心な元夫は周囲からの評判もいい。真行さんは自分を責め、体調を崩して通院もしたが、相談した医師に「僕も妻の話はあまり聞かない」と言われるなど、苦しみは理解されなかった。

 知人から元夫の発達障害の可能性を指摘され、同じ立場の女性が集まる都内の自助グループに参加。「私だけじゃないんだ」と安堵(あんど)を覚えた。同様の悩みを持つ人が気持ちを語り、否定されずに思いを共有できる場を県内にもつくろうと、昨秋立ち上げた。

 フルリールかながわでは話せる場づくりだけでなく、発達障害への理解を広める活動も行う。真行さんの元夫をはじめ参加女性の配偶者は、本人も周囲も障害に気づかないまま成人した人が大半だ。障害の特性を知れば、妻自身が配偶者にどう対応すればいいかが分かり、周囲の「妻が悪い」という誤解も解くことができる。活動を通じ、どんな人も暮らしやすい「共生社会」を実現することも目的だという。

 北里大医学部の宮岡等教授を招き、成人の発達障害を配偶者の視点から考える講演会も開催したところ、新潟や福岡からも参加者があり、関心の高さを裏付けた。真行さんは「悩んでいるのはあなた一人だけではない。抱え込まず、気持ちを分かち合う場に来てみてほしい。それだけで随分、楽になるはず」と話す。

 フルリールかながわのホームページのアドレスはhttp://fleurirkanagawa.blog.fc2.com/

過去ログ