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介護保険料、月5514円 10年後は8千円超に 65歳以上、地域差拡大

厚生労働省は28日、65歳以上が支払う介護保険料が4月分から全国平均5514円になると発表した。2012~14年度の4972円から542円増え、初めて5千円台に達した。5年後の20年度には月6771円、10年後の25年度には月8165円まで上昇するとの推計も明らかにした。

 65歳以上の保険料は市区町村や広域連合ごとに決められ、3年に1度見直される。高齢化の進行に伴いサービス利用の需要が高まり、保険料は急激に上昇。介護保険制度が始まった00年当時から2倍近くになった。保険料の最高8686円と最低2800円の差は約6千円となり、地域差が拡大している。

 厚労省が全1579の市区町村や広域連合の保険料を集計した。15~17年度に月6千円を超えるのは215カ所で、うち13カ所は7千円超だった。1488カ所が保険料を引き上げる一方、64カ所は保険料を据え置き、27カ所は引き下げた。介護予防などの取り組みが奏功したとみられる。

 月額保険料の最高は奈良県天川村の8686円で、福島県飯舘村の8003円、奈良県黒滝村と岡山県美咲町の7800円と続いた。最低は鹿児島県三島村の2800円。次いで北海道音威子府村3千円、北海道中札内村3100円だった。

 厚労省は「高齢化率、要介護の認定率が高い自治体ほど、保険料が引き上がる傾向にある。サービス提供事業者が少ないため、保険料が低く抑えられている地域もあるようだ」と分析する。

 都道府県別の平均では、沖縄県が6267円で最も高く、埼玉県の4835円が最も低い。

 00年度の介護費用は3兆6千億円だったが、15年度予算では10兆1千億円。政府は、事業者に支払う介護報酬を4月から2・27%引き下げたが、費用と保険料の上昇は止まらなかった。

早歩きで健康生活を 「医療新世紀」

 手軽な早歩きで健康寿命を延ばそうと提案する「人生を変える15分早歩き」(ベースボール・マガジン社、1512円)が出版された。

 著者の奥井識仁(おくい・ひさひと)氏は、性ホルモンの働きを熟知する泌尿器科の開業医。膝の靱帯(じんたい)損傷を克服し、マラソンをこよなく愛するランナーでもある。

 1時間で5~6キロ程度の早歩きで乳がんや大腸がんのリスクが減ったなど、最新の医学研究の成果が分かりやすく紹介されている。自らのクリニックで、骨粗しょう症や前立腺がんの患者にも早歩きの習慣を指導しているという。

 豊富な高齢者の診療実績とランニング趣味から導かれた実践的な健康生活の勧めだ。

声帯摘出、再び話せた 食道を振動させる発声法 「生きがいも取り戻す」

音楽プロデューサー、つんく♂さん(46)の声帯摘出公表をきっかけに、声帯の代わりに食道を振動させて声を出す「食道発声法」に注目が集まっている。声が出なくなれば生活に大きな影響を及ぼす。声帯や喉頭の摘出後、発声法を身に付けた人たちは、声ばかりか「生きがいも取り戻せた」と喜んでいる。

 「お茶を口に含んで空気と一緒に食道に取り込み、『あ』と、声を出してみましょう」

 声を取り戻そうとする人を支援する「銀鈴会(ぎんれいかい)」(東京都港区)の発声教室。「初心クラス」の男性に、自らも声帯を摘出して発声法を習得したボランティアの訓練士が、マンツーマンで指導に当たっていた。週3回開かれる教室には、喉頭がんや咽頭がん、食道がんなどで声帯や喉頭を摘出した約150人が通う。

 通常、声を出すためには、吸い込んだ空気を肺から吐き出し、喉頭にある声帯を振動させる。

 同会によると、食道発声法では食道に取り込んだ空気を、げっぷを出す要領で逆流させ、食道の入り口の粘膜を振動させて声を出す。練習を重ねれば、多くの人が1年ほどで会話できるようになるという。

 「最初は母音の発声から始めて、声が出せたら徐々に言葉の数を増やしていきます」と銀鈴会会長の松山雅則(まつやま・まさのり)さん(71)は話す。松山さんも58歳の時に喉頭がんで摘出手術を受け、食道発声法で声を取り戻した。

 がんが見つかって治療を受けたが、再発が判明。悩みに悩んで摘出を決断するまでが最もつらかったという。「食道発声法で初めて声を出せた時の喜びは、言葉で言い表せない。それからはどんどん練習が楽しみになった」と振り返る。

 手術で摘出した部位などにより個人差はあるが、スポーツ選手や腹式呼吸に慣れた音楽家は比較的上達が早いという。中には3カ月ほどの練習で会話できるようになる人も。上達すると歌が歌えるようにもなり、歌の発表会も開かれている。

 銀鈴会のような、全国約60の支援団体を統括する「日本喉摘者(こうてきしゃ)団体連合会」によると、同会所属の喉頭摘出者約7千人のうち、約5千人が食道発声法で会話をしているとみられる。年齢が若いほど習得率が高い傾向があるという。

 下咽頭がんで手術を受け、食道発声法を習得した銀鈴会専務理事の太田時夫(おおた・ときお)さん(70)は穏やかな声で語る。「教室で同じ境遇の仲間と練習に励んでいるうちに、不安や孤独感は消えていった。声を再び出せるようになり、生き生きと生活できるようになりました」

 ※声帯摘出後の発声方法

 食道を振動させる食道発声法の他に、電動式の人工喉頭を喉に当てて振動を音声に変換する方法、気管と食道を結ぶシャント手術で発声する方法がある。食道発声法は比較的自然な発声が可能で、器具に掛かる費用が必要ないといった利点があるという。

肥満は認知症を予防するのか

中年期に過体重あるいは肥満だった人では、正常体重または低体重の人に比べ認知症を発症しにくいことが、200万人近くを対象とした大規模研究結果から示された。

 過体重者や肥満者では、正常体重者に比べ15年後の認知症発症率が30%低かった一方、低体重者は正常体重者より認知症発症率が34%高いことが分かったという。

 研究を主導したスペインOXON Epidemiology社のNawab Qizilbash氏は、「過体重者や肥満者の認知症リスクが抑制されるとは予想外だった」と述べている。

 ただし、今回の後ろ向き研究は肥満と認知症リスク低下の関連を示しただけであり、因果関係を示したわけではない。

 同氏はまた、本研究では過体重者や肥満者における早期死亡リスク上昇がみられたことを踏まえれば、今回の予備的知見に基づいて認知症予防を体重増加の言い訳にすべきではないと指摘。「過体重や肥満に認知症予防効果があるとしても、その便益を得るだけの長生きはできないかもしれない」と述べている。

 「The Lancet Diabetes & Endocrinology」オンライン版に4月9日掲載された報告によると、今回の検討では、研究開始時に平均55歳だった英国の成人約200万人について、医療記録を約20年分解析した。15年間の追跡期間中に4万5,500人が認知症を発症していた。

 解析の結果、体重と認知症発症との関連は、被験者の生年や診断時年齢を調整後も認められることが分かった。認知症の危険因子として知られる飲酒や喫煙といった因子は、この結果にはほとんど影響していなかった。

 Qizilbash氏は、この関連性についての生物学的な説明はなく、さらなる研究が必要であるとしながらも、この知見からアルツハイマー病やその他の認知症の治療や予防への道が示される可能性があると説明。

 「認知症の発症機序や治療法開発に新たな考察を提供できる可能性がある。医師や公衆衛生の研究者、政策立案者も認知症ハイリスク者を特定する方法について再考が必要かもしれない」と述べている。

 この結果について同誌に付随論説を著した米ニューヨーク州立大学(SUNY)ダウンステート医療センター(ニューヨーク市)のDeborah Gustafson氏は、中年期の体重が15年後の認知症リスクに反映されるのかという点に疑問を提示。

 「解析対象数は多いが、方法論における疑問を考えるとこの結果が最終的な結論とはいえない。さらなる検討が必要だ」としている。

子ども誤飲、薬が最多…厚労省調査

 病院から2013年度に報告のあった子どもの誤飲事故について、薬がたばこを抜き初めて最多となったと、調査した厚生労働省が発表した。

 親が目を離したすきに薬をテーブルや冷蔵庫から取って誤飲する子どもが多く、「保護者は手の届かない場所に薬を置くように」と厚労省は呼びかけている。

 指定する9病院の小児科が対応した誤飲事故を集計した。事故は531件で、うち医薬品と医薬部外品が96件(18%)でトップだった。調査が始まった1979年度以降、最多はたばこが続いていた。

 薬を誤飲した約3割で眠気や吐き気などの症状が表れた。年齢別では、自分でふたや包装を開けられるようになった1~2歳が7割を超えた。

 具体的な例では〈1〉精神神経用薬を飲み意識障害となり1週間入院した〈2〉母親のバッグから取り出した風邪薬を最大で14錠飲み2日入院した――などがあった。

 その他上位は、たばこ94件、ビニールなどプラスチック製品60件、おもちゃ51件だった。

在宅ケアをはぐくむ会 再掲載

ファイル 4003-1.pdf

今回は、介護保険改定についてです。

アセトアミノフェン、腰痛に無効

Machado GC,et al.Efficacy and safety of paracetamol for spinal pain and osteoarthritis: systematic review and meta-analysis of randomised placebo controlled trials.BMJ. 2015 Mar 31;350:h1225.

 脊椎痛および変形性関節症へのアセトアミノフェンの効果を、無作為化プラセボ対照試験13件のシステマティックレビューとメタ解析で検証。アセトアミノフェンは腰痛の疼痛強度および障害の軽減または生活の質の改善に無効で、変形性膝・股関節症の疼痛および障害に対する効果は有意だが臨床的意義がないことを示す質の高いエビデンスが得られた。

【原文を読む】
British Medical Journal

飲めずに「残薬」、山積み 高齢者宅、年475億円分か

高齢者宅から薬が大量に見つかる事例が目立っている。「残薬」と呼ばれ、多種類を処方された場合など適切に服用できず、症状の悪化でさらに薬が増える悪循環もある。年400億円を超えるとの推計もあり、薬剤師が薬を整理し、医師に処方薬を減らすよう求める試みが広がる。

 大阪府忠岡町の女性(78)宅を訪れた薬剤師の井上龍介さん(39)は、台所のフックにかかった10袋以上のレジ袋を見つけた。「ちょっと見せて」。中は全部、薬だった。

 胃薬や血圧を下げる薬、血糖値を下げる薬、睡眠薬――。10年ほど前の日付の袋に入った軟膏(なんこう)もあり、冷蔵庫にインスリンの注射薬が入れっぱなしだった。錠剤は1千錠を超え、価格に換算すると14万円超にのぼった。

 井上さんは昨夏、女性を担当するケアマネジャー上(うえ)麻紀さん(37)の相談を受けた。上さんによると、女性は糖尿病や狭心症などで3病院に通い、

15種類の薬を処方されていた。適切に服用しなかったので糖尿病は改善せず、医師がさらに薬を増やし、残薬が増える悪循環に陥っていた。

 「高齢で認知能力が落ちている上、3人の主治医が処方する薬が多く、自己管理が難しかったのだろう」。井上さんはみる。

 残薬は使用期限前で、保存状態が良ければ使える。井上さんはそうした薬を選び、曜日別の袋に薬を入れる「服薬カレンダー」に入れ、台所の壁にかけた。約3カ月後、寝室から約25万円分の薬も見つかり、薬の種類を減らすため主治医の一人に相談し、ビタミン剤の処方を止めてもらった。

 在宅患者や医療関係者に薬の扱い方を教える一般社団法人「ライフハッピーウェル」(大阪府豊中市)の福井繁雄代表理事によると、1日3食分の薬を処方されながら食事が1日1食で薬がたまる高齢者や、複数の薬を処方され「何をどう飲めばいいか分からない」と90日分も残薬があった糖尿病患者などの事例が各地から報告されている。

 日本薬剤師会は2007年、薬剤師がケアを続ける在宅患者812人の残薬を調査。患者の4割超に「飲み残し」「飲み忘れ」があり、1人あたり1カ月で3220円分が服用されていなかった。金額ベースでは処方された薬全体の24%にあたり、厚労省がまとめた75歳以上の患者の薬剤費から推計すると、残薬の年総額は475億円になるという。

 慢性病の患者を診ている医師4215人が回答した日本医師会のアンケート(10年)でも、36%が「患者の飲み忘れや中断で症状が改善しなかったことがある」と答えた。

 医師で日本在宅薬学会の狭間研至理事長は「薬を飲んでいない患者に、飲んだことを前提に対応しているわけだから、治療自体が崩壊する。薬代も無駄になる」と話す。薬の処方が必要以上に膨らめば、社会の高齢化が進むなかで医療費の拡大も危惧されるという。

 残薬を減らすため厚生労働省は昨年、薬剤師が受け取る調剤報酬の規定を改訂した。「薬剤服用歴管理指導料」の条件の一つに、薬の飲み残しがないか調剤前に確かめることを盛り込んだ。

 ただ、店頭で薬剤師が口頭で尋ねるのが大半で、厚労省医療課は「家まで行って服薬を管理するなど、薬剤師がどれだけ在宅医療に踏み込むかが検討課題」と話す。

 各地では対策が始まっている。福岡市薬剤師会は「節薬バッグ運動」を進める。市内31薬局で12年、バッグ1600枚を患者に配って残薬の持ち込みを呼びかけたところ、約3カ月で患者252人が約80万円相当の残薬を持ってきた。薬剤師が整理し、安全性が確認された約70万円分の薬を使ってもらった。

 13年には参加薬局を約650薬局に拡大。小柳香織担当理事は「残薬は調べると想像以上。今後も飲み残しを持ち込んでもらい、残薬を減らしたい」と話す。

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