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「ひたむきに生きて」心臓外科、1万の命預かる=天野篤・順天堂大教授

◇「切る」前から術後管理まで

 初めて心臓手術を執刀してから今年で27年目、経験した手術数はまもなく7000例です。自分の執刀ではないものの管理面などで接した患者も含めると1万例を超えました。

 振り返れば、本当に多くの患者の皆さんに命を預けられたものだと身震いし、同時に心から感謝しています。中には期待以上の健康を回復された方も多い半面、少ないながらも手術をきっかけに健康状態が悪化した方、亡くなられた方もいます。亡くなられた患者の皆さんには本当に申し訳なく思い、わびて済むことではありませんが、改めておわびと合掌をした上で、このコラムを始めさせていただきたいと思います。

 読者の皆さんは、外科では何でも手術で治そうとしていると考えるかもしれませんが、外科医の仕事は手術だけではありません。患者にとって本当に手術が必要か、予定される手術に耐えられる状態かを専門家として検討することも外科医の仕事です。特に、75歳以上の高齢者では体力が低下するので、心臓手術という「人生の一大事業」に耐えられるかどうかを判断しなければなりません。現在は多くの症例から検証された手術の危険性を客観的に示す「リスクスコア」が発達しています。高リスクと判断されても手術しか選択肢がない場合は、体力・気力・意欲向上を目的とした術前のリハビリを計画することも外科医の仕事です。

 しかし、いよいよ手術となれば、外科医は慎重かつ大胆にメスを振るいます。術前の診断で見落としがないかを術野(手術する目に見える部分)で確かめながら、心臓外科では機能障害を起こした部分をよみがえらせて元気な心臓を取り戻すようにします。術野で疾患と症状のつながりを発見し、修復できたときの喜びは格別です。手術中、まだ麻酔がかかっている患者の方が元気で退院される姿が思い浮かぶほどです。

 心臓外科手術のポリシーは「早い、安い、うまい」の三拍子ですが、患者への対応や手術は早く、費用負担、薬剤や医療材料の無駄は少なく、さらに高いレベルの修復と痕が目立たない傷口を目指します。

 手術後の管理も大切です。検査結果の解釈や傷の治り具合だけではなく、術後に患者の方が社会復帰するレールにきちんと乗ったかを大局的に判断します。また、周りへの気遣いのため悪くなるきっかけを患者本人が我慢して黙っていないかどうかを聞き出すことも重要で、この役割は世間話に慣れたベテラン外科医が担います。このように一気に回復に向かうポイントを逃さず、患者の皆さんが前向きに社会復帰できるようにするのが今の私の役目です。

 患者一人一人、手術内容によって入院生活は変わり、若い方と高齢者では大きく異なります。それでもいつか手術したことさえ忘れて健康を取り戻し、思い通りの生活ができる。そんな日を取り戻してもらうために働く毎日は、忙しくてもとても充実した日々と感じています。

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 ■人物略歴

 ◇あまの・あつし

 1955年生まれ。埼玉県出身。83年日本大医学部卒。亀田総合病院、新東京病院などを経て、2002年から現職。12年に天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀したことで知られる。

食後の嘔吐が続く

84歳の女性。2年ほど前から食後の激しい嘔吐(おうと)に悩まされてきました。ひどい時は3、4日、水分もとれず、点滴を受けるほどでした。内視鏡検査では胃に異常はなく、逆流性食道炎と診断されました。薬で小康状態を保っていますが、また起きないかと心配です。(神奈川県・S)

 ■答える人 鈴木秀和(すずきひでかず)さん 慶応大学准教授(消化器内科)=東京都新宿区

 Q 逆流性食道炎とは。

 A 胃から胃酸や食べ物が逆流して、食道に炎症を起こした状態です。主な症状には胸やけや胸の痛み、げっぷ、嘔吐(おうと)があります。「酸っぱい味がする」と言う人もいます。相談者のように、食道の下に炎症のない場合も含め、総称して「胃食道逆流症」と呼びます。男性では中年以降、女性では更年期以降によく見られます。

 Q 原因は。

 A 胃の動きが悪くて食べ物が十分にためられない時や、胃から十二指腸に食べ物が下りない時に、起きやすくなります。胃や食道の筋肉がゆるんでも起きます。肥満や猫背の人もおなかに圧力がかかり、逆流症状が出やすくなります。

 Q 調べる方法は。

 A 内視鏡で食道の炎症の有無をまず調べます。胃や食道、十二指腸などに腫瘍(しゅよう)があって食べ物を通りにくくしていないかも確認します。

 Q 治療法は。

 A 胃酸を減らすプロトンポンプ阻害薬を使うのが一般的です。ほとんどの人が改善します。胃もたれやげっぷがつらい人には、胃の動きをよくする薬を使います。

 Q 相談者は再発しないか心配しています。

 A 薬で症状が治まっても、不適切な食生活を続けていると、ぶりかえす可能性はあります。どんな時に症状が出たかや、食べた物、量を毎日記録すると、見直す点がわかってきます。規則正しく食事をとり、食後3時間は横にならないようにします。あんこや生クリーム、チョコレート、サツマイモ、穀類など糖分・油分が多い食事は避けましょう。食べ物は細かく刻むと消化しやすくなります。

救命処置のトラブルに保険 東京消防庁、積極関与促す

東京消防庁は25日、事故や災害現場に居合わせてけが人らの手当てをした人が感染症にかかるといったトラブルに遭った場合に、保険金が支払われる制度を2015年度中に導入すると明らかにした。ためらわずに安心して救命措置に関わってもらうことで、傷病者の生存率を高める狙いもある。

 同庁によると、急病人や負傷者が出た際に、たまたま近くにいた人は「バイスタンダー」と呼ばれる。同庁の13年の統計では、心肺停止時にバイスタンダーが応急手当てした場合は約14%が生存し、しなかった場合の3倍以上となった。

 救急車の出動が年々増加するのに伴い、救急隊の到着時間は09年には6分強だったのが、13年には8分弱と遅くなっており、バイスタンダーの関与が生死を分けるケースも想定される。

 13年は、4割のケースでバイスタンダーが自動体外式除細動器(AED)などを利用し、救命措置を実施。一方で、ためらう理由として「責任を取れと言われるかもしれない」「感染症を避けたい」というアンケートの回答もあったという。

 同庁の担当者は「早い心肺蘇生処置があれば生存率が高くなる。ぜひ応急救護をやってほしい」と話している。

在宅ケアをはぐくむ会 定例会

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今回は「介護報酬改訂」をテーマに実施致します。

日時:平成27年4月15日(水)19:00~21:00
場所:市民交流センターCoCoDe (大ホール)
   旭川市宮前1条3丁目3-30

アセトアミノフェンの長期使用で健康リスクが上昇か

アセトアミノフェンはこれまで考えられていたほど安全ではなく、長期にわたり多量に使用すると健康リスクが上昇するという、新たな研究報告が行われた。タイレノールの商品名で知られるアセトアミノフェンは、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)よりも安全であると考えられている。
 しかし、研究の筆頭著者である英リーズ大学リウマチ・筋骨格医学研究所(イング㕏題との因果関係を明らかにするものではない。

北海道)旭川赤十字病院が創立100年 道北医療の要

旭川赤十字病院(旭川市)が今年、創立から1世紀を迎えた。救急医療を中心に、道北の基幹病院として住民が安心して暮らせる地域づくりを支えてきた。新たな100年に向け、「高齢者にふさわしい医療の提供」と「病院価値の向上」を目標に掲げる。

 4年前の3月11日。東日本大震災が発生すると、同病院の医師や看護師、災害派遣医療チーム(DMAT)などが、病院のドクターヘリなどを使って被災地に向かった。災害時の救護活動は、赤十字の大きな柱の一つだ。同年7月末までに112人を派遣し、緊急物資の搬送を続けた。

 その病院の発足は$りが増えている。回復期の病院をどこにするのか、介護ヘルパーをどうするのか。そこまで考えた医療が求められる。

 その一環として、地域の医療機関が患者の治療データを共有できるネットワークを作った。現在、旭川市周辺の他の病院や開業医、歯科や薬局など約380施設が登録している。

認知症、どう向き合う 38年の研究一冊に 山口教授

厚生労働省の推計で、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に認知症の高齢者は700万人前後に達し、現状の7人に1人から、5人に1人に増えるとされる。「歳重ね いつかは誰もが 認知症」―。こんな一句を詠んだ群馬大大学院保健学研究科(前橋市)の山口晴保教授が「認知症にならない、負けない生き方」を出版した。認知症を受け入れ、どう生きるかを考える大切さを説いている。

 山口教授はアルツハイマー病の神経病理学やリハビリテーション医学が専門。認知症の実践医療の研究や脳活性化リハビリテーションなどに取り組んできた。

 著書は群馬大医学部卒業後、歩んできた38年の集大成的な位置付け。書名とは逆に「認知症に勝つとか負けるとかではなく、認知症と仲良く生きていこうという『生き方』の本」と山口教授。ユーモアあふれる筆致で、認知症の原因や前兆、症状、予防、治療などを解説している。

 第5章「認知症と『ともに生きる』」では、家族などに向けて認知症の受け入れ方やケアのこつをアドバイス。自らが認知症になった場合に備えるべきことも記している。

 05年は3人の労働世代(20~64歳)で1人の高齢者(65歳以上)を支える「騎馬戦」型社会だったが、55年には労働世代1.2人で高齢者1人を支える「肩車」型社会になると見込まれる。

 社会保障費が増え続ける現状を踏まえ、山口教授は「高齢者は自分の健康を守り、近所同士で助け合うことが大切。子育てしやすい環境も整備すべきだ」と訴える。地域包括ケアの時代に求められる「自助と互助」の観点から、山口教授が育成に力を入れてきた本県独自の「介護予防サポーター」なども紹介。「認知症を恐れることなく正しく理解し、豊かな老後を送ってほしい」と話している。

 「認知症にならない、負けない生き方」(サンマーク出版)は四六判、260ページ。1300円(税別)。

みんなの○○ 救命・応急手当て 蘇生編 胸骨圧迫と人工呼吸繰り返し

倒れている人に普段通りの呼吸がなかったら、心肺蘇生が必要だ。手当ての要点を東京防災救急協会の大久保雄司さん(64)に聞いた。

 (1)胸骨圧迫を行う

 胸骨の上から心臓を押して血液を循環させ、脳に酸素を送り込む手当てだ。左右の乳頭の中間付近に、手のひらの厚い部分を胸骨(のどの下から胃の方へ延びる骨)に当て、他方の手を重ねる。肘を伸ばして真上から、胸が毎回少なくとも5センチ沈むくらい強く、1分間に少なくとも100回のペースで押そう。

 「救急車が来るまで絶え間なく続けて」と大久保さん。周囲に人がいれば交代しながらやろう。強く押すと胸骨が折れることもあるが、「骨折は後で治る。とにかく蘇生を優先してください」。善意の処置中なら過失は問われない。

 (2)可能なら人工呼吸も

 胸骨を30回押したら、1秒の人工呼吸を2回――できればこれを繰り返したい。

 顔にかぶせるシートと一体になった人工呼吸用のマウスピースを、倒れた人の口に差し込む。その人の鼻の根元をつまんで塞ぎ、逆の手の指2本であごを上げ気道を確保。そして口を大きく開け、倒れた人の口全体を覆うように密着させて、胸が上がるのを確かめながら1秒間、静かに息を吹き込む。これを2回。「強く大量には吹かないで」。吹き込む息が多すぎると胃に空気が入り、吐いてしまう。

 マウスピースは病気等の感染を防ぐために使う。「ない時や、出血や嘔吐(おうと)をしていれば、人工呼吸をせず胸骨圧迫だけで構いません」。インターネット通信販売などで安価で買えるので、お守り代わりに携帯しておくといい。

 (3)AEDを使用する

 自動体外式除細動器(AED)があれば、胸骨圧迫を続けながら使おう。心臓が無秩序に震えて機能しない状態の場合に、電気ショックを与えて回復させる。機械の音声指示に従って操作すればいい。体から離れるよう指示が出た時は必ず従う。

 実際の場面でも慌てないためには、救命講習の受講がお勧めだ。3時間の普通救命講習では胸骨圧迫、人工呼吸、AED使用法などを体験でき、8時間の上級救命講習なら乳幼児の心肺蘇生や、けがの手当てなども教われる。日程や料金の問い合わせは最寄りの消防署へ。東京都内なら東京防災救急協会(03・5276・0995)でも受け付けている。

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