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介護報酬、減額っていいこと? 事業者・利用者への影響は

介護保険サービスを提供した事業者に支払われる「介護報酬」が、4月から引き下げられる。収入が減る事業者には「介護崩壊」への強い不安が広がる一方、介護保険料やサービスの利用料が安くなるのも事実だ。介護の現場にどんな影響があるのか。

 ■事業者 経営に打撃、サービス休止も

 介護報酬引き下げは事業者には打撃で、サービス休止を決めたところもでてきた。

 富山県内でショートステイ(短期入所生活介護)を運営する事業者は、3月末で事業所を休止する予定だ。ここ数年、競合する事業者が増えて赤字が続き、減額改定が決め手になったという。

 ショートステイの基本報酬は約5~6%下がる。この事業所は職員10人弱の人件費を支払うめどもたたなくなった。利用者は1日7~8人。食道や肺の機能が落ちて食事介助に2時間近くかかるなど介護度が重い人も多く、休止後の受け入れ先を探し始めた。「消費税を8%に上げたのは社会保障の充実が目的だったはずなのに」。運営法人の幹部は声を落とす。

 認知症グループホームも基本報酬が約6%下がった。仙台市などで複数のグループホームを運営する「リブレ」は、職員の処遇改善のための加算をのぞくと、一つのホームで年間約300万円の減収を見込む。夜勤体制の加算は新設されたが、人手不足のなか、宿直できる人を確保する見込みはたたず、加算を取るのは簡単ではないという。

 介護度が重い人への対応に手厚くする方針にも懸念の声がある。訪問介護事業などを手がけるNPO法人「ACT昭島たすけあいワーカーズ大きなかぶ」(東京都)の事務局長・牧野奈緒美さんは「事業者が介護度の重い人ばかりを優先し、軽い人が見捨てられるのでは」と危惧する。

 訪問介護につく新たな特定事業所加算は、利用者のうち要介護3以上や認知症の症状が進んでいる人が6割以上いれば、報酬が上乗せされる。ただ、大きなかぶの場合、利用者の7割は要介護2以下の人だ。「軽度の人の介護度が重くならないように支える、という視点が欠けている」

 改定の目玉の一つが、介護職員の給料アップのための処遇改善加算の拡充だ。1人月額1万2千円相当を上乗せできるようにすると国は説明する。認知症デイサービスやグループホームなど7事業を運営するNPO法人「暮らしネット・えん」(埼玉県)でも、4月からこの加算で職員の賃上げをはかる計画だ。ただ代表理事の小島美里さんは「加算はいわば『おまけ』。3年後の報酬改定で維持されるかもわからない。処遇改善のためのお金は基本報酬に入れるべきだ」と言う。

 ■利用者 負担は減少、質の維持に懸念

 利用者目線で考えると、また違う見方もでてくる。介護報酬が下がれば、65歳以上の高齢者や、40~64歳の人が負担している介護保険料は、いずれも抑制されるからだ。

 税や保険料から介護事業者に支払われる費用は、制度が始まった2000年度の3・6兆円から10兆円(14年度)に増加。65歳以上が払う保険料(全国平均の月額)でみると、2911円(00~02年度)から4972円(12~14年度)にまで上昇。10年後には、8200円程度まで上がると厚労省は予想する。

 65歳以上が支払う介護保険料は15年度から全国平均で5800円程度になると見込まれていた。それが介護報酬引き下げで230円程度値上げが抑えられ、5千円台半ばにとどまる見通しだ。

 また介護サービスの値段である介護報酬が下がれば、その原則1割を負担する利用料も連動して減る。

 ただし負担が減ればいいということでもない。介護をしてくれている事業者が経営に行き詰まったり、サービスが悪くなったりすれば、利用者やその家族にしわ寄せは向かう。いま介護が必要ない人でも、将来必要になったときに、利用できるサービスが減ってしまうかもしれない。結果として、家族の介護の負担が重くなり、高齢者の世話のために仕事を辞める「介護離職」などが増える恐れもある。

 (森本美紀、有近隆史、立松真文)

 ■国の狙いは? 介護度重い人の在宅支援強化

 厚生労働省は6日に2015年度~17年度の介護報酬の額を公表した。全体では2.27%の引き下げで、個別のサービスの値段も決まった。

 企業のもうけにあたる「収支差率」が高い特別養護老人ホームなどの施設に限らず、在宅サービスも含めて基本報酬は軒並み減額となった。一方、介護職員の給料増額にあてる加算は拡充。さらに認知症や介護度の重い人を支える「24時間定期巡回・随時対応型サービス」などの在宅サービスでは、様々な「加算」を手厚くし、加算を含めれば増収になるようにした。

 安倍晋三首相は18日の参院本会議で「質の高いサービスを提供する事業者には手厚い報酬が支払われることとしている」と述べた。

平成26年度医療連携推進事業研修会の御案内

演題①『地域包括ケアと多職種協働』
   ②『高齢者医療・介護とかかりつけ医との関わり』

 1:日  時 平成27年2月25日(水) 18:30~20:40(受付18:00~)
 2:会  場 旭川市市民文化会館 小ホール
        旭川市7条通9丁目50番地 ℡0166-25-7331
 4:参加対象 医療・介護職関係者
 6:参加費  無料

小児慢性特定疾病:助成制度変更 患者6割、負担増 治療長期にわたる、小児がん家族懸念

今年1月の難病法施行に伴い「小児慢性特定疾病」の医療費助成制度が変わった。助成対象の疾病が増える一方、患者の自己負担額が引き上げられ、すでに助成を受けている患者の6割超に新たな負担が加わる。治療が長期にわたり、後遺症を発症するケースが多い小児がん患者の家族に、負担増への懸念が広がっている。

 東京都青梅市の小学1年、野口一樹君(7)は2歳の時、「腎明細胞肉腫(じんめいさいぼうにくしゅ)」が見つかった。小児がんの一種だ。再発のため入退院を繰り返し、現在の入院は5回目になる。

 父親(41)によると、従来の助成制度では、医療費と入院中の食費の自己負担額はゼロだった。新制度では月額で1万円以上になる見通しだ。母親(42)は一樹君の看病に追われ、病院に寝泊まりする。長女(2)を実家の両親に預けても、仕事に出る余裕はない。「家族が自宅、病院、実家でばらばらになり、生活費や交通費がかさんでいる。治療がいつまで続くか分からない中で、負担が増えるのはつらい」と父親は話す。

 小児慢性特定疾病は原則18歳未満の患者が助成対象。従来の対象は514疾病だが、昨年の難病法制定に伴い制度が見直され、同法が施行された今年1月から704疾病に増えた。これにより対象患者は現在の約11万人から約15万人になると見込まれている。

 一方、制度の見直しで、入院中の食費について1食につき130円がかかるようになったほか、世帯収入に応じた医療費の自己負担の上限額が上がった。

 がんの再発を含む「重症患者」の自己負担は従来ゼロだったが、見直し後は月最大1万円になった。

 すでに助成対象になっている患者には経過措置として3年間の負担軽減が実施される。また自己負担割合は3割から2割になるため、負担が減る患者もいる。しかし現在の助成対象のうち負担増となる患者は65%を占めると厚生労働省は試算している。

 「がんの子どもを守る会」(台東区)は昨年7月、「患者家族には精神的・経済的に大きな負担がかかり、20歳以降の(後遺症などに対する)取り組みもほとんどなされていない」として、重症患者らの負担軽減を求める請願書を1万8708人の署名とともに厚労省に提出した。

 ソーシャルワーカーの樋口明子さんは「助成対象となる疾病が拡大したことは歓迎したいが、特に入院期間が長い小児がん患者については、医療費以外にも多くの出費がかかる現状を考慮する必要がある」と話している。

高齢者肺炎、死亡リスク半減に10日

文献:Dharmarajan K,et al.Trajectories of risk after hospitalization for heart failure, acute myocardial infarction, or pneumonia: retrospective cohort study.BMJ. 2015 Feb 5;350:h411.

 心不全、急性心筋梗塞、肺炎で入院した65歳以上のメディケア受給者300万人超を対象に、退院後の再入院・死亡リスクを後ろ向きコホート研究で検討。初回再入院・死亡リスクが最大値から50%低下するのは心不全で38日目・11日目、心筋梗塞で13日目・6日目、肺炎で25日目・10日目。退院後も長期間、健康の悪化に注意が必要と示唆された。

介護報酬、認知症高齢者受け入れる施設には加算

厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会は6日、2015年度からの介護報酬をまとめた。

 社会保障費の抑制のため全体で2・27%引き下げられ、基本的なサービスを提供した場合の報酬の大部分が下がった。一方、在宅サービスや介護の必要性が高い中重度者や認知症の人向けのサービスを充実させた際に、加算を手厚くするなど、報酬にメリハリをつけた。質の高い事業者を増やし、介護を受けながら自宅などで暮らせるようにするのが狙い。

 個々の利用者から見た場合、各サービスの基本料金は下がるが、質の高い介護を受けた場合には負担が増えるケースもある。

 介護保険サービスの公定価格である介護報酬は、3年ごとに見直されている。マイナス改定は06年度以来、9年ぶり。今回の改定では、住み慣れた地域で暮らし続けられる「地域包括ケアシステム」という仕組み作りに重点を置いた。

 例えば、24時間いつでも呼び出しに応じる訪問介護について、医師や看護師などと連携してサービスを提供する場合の報酬加算(1か月1人あたり1万円)を新設。日中に通うデイサービスでは、認知症の高齢者を積極的に受け入れる施設に、1日1人あたり600円を加算する。

認知症で初の免許取り消し 予備軍800人超 14年・青森県

運転免許を更新する75歳以上を対象とした認知機能検査で、2014年に本県で848人が認知症の恐れがある「1分類」と判定され、そのうち医師から認知症と診断されて免許の取り消し処分を受けたドライバーが6人いたことが3日までに、県警への取材で分かった。検査を規定した改正道交法は09年に施行されたが、本県では14年8月の80代男性が、初の免許取り消し事例となった。14年に1分類と判定されたのは受検者20人に1人の割合だった。

 道交法は認知症のドライバーへの運転免許の交付を認めていない。警察庁は1月、1分類の該当者が速やかに医師の診断書を提出するよう義務づける道交法改正案を公表。現行では1分類と判定されても、更新前後に一定の違反があった場合に限って医師の診断を求めており、改正案は認知症ドライバーの早期発見につなげる狙いがある。

 県警運転免許課によると、14年に認知機能検査を経て医師に認知症と診断され、免許取り消し処分となったのは70代が1人、80代が5人で、いずれも男性だった。月別では8月、11月、12月にそれぞれ2人ずつ。6人全員が検査で認知症の恐れがある「記憶力・判断力の低下」と判定され、かつ更新前後に一定の違反があり、医師の診断を受けていた。

 県内で検査で「低下」とされた割合は、09~12年は1%台で推移。13年は途中から、記憶力などに比重を置く配点方法に変わった影響もあり3.2%(530人)に増加した。14年はさらに増え5.3%(848人)となった。

期限切れワクチン接種 6歳男児に北海道・旭川

北海道旭川市は27日、市内の医療機関で有効期限が切れたジフテリアなどの3種混合ワクチンを、誤って男児(6)に接種したと発表した。健康被害の報告はないという。

 旭川市によると、有効期限は2014年10月9日だったが、11月14日に接種した。今月22日に看護師が管理台帳を確認して気付いた。

高齢者施設 訪問診療に減少傾向 報酬引き下げ受け 保険医協が調査

 高齢者施設の訪問診療に関する診療報酬引き下げを受け、開業医などでつくる県保険医協会(宮崎三弘代表理事)は、県内の高齢者施設を対象に実施した実態調査の結果を発表した。大幅な訪問診療の縮小・撤退はなかったものの、グループホームで診療回数の減少傾向がみられることから、同協会は影響拡大を懸念している。

 調査は今年7~8月、介護付き有料老人ホーム▽ケアハウス▽サービス付き高齢者向け住宅▽グループホーム――の計534施設を対象に行い、194施設から回答を得た(回答率36%)。

 2014年度の診療報酬改定に伴う高齢者施設の訪問診療について聞いたところ、入居者1人当たりの月間平均訪問診療回数はグループホームが前年比0・36回減の2・08回。医師1人が1回の訪問で診る月間平均人数もグループホームで同約1人減、介護付き有料老人ホームで同約2人減だった。

 自由記述欄では「将来的に訪問診療を受けてくれる医師がいなくなるのではないか」(介護付き有料老人ホーム)、「現在の医師が辞めたら、ほかの医師は見つからない」(グループホーム)などと不安の声が寄せられた。同協会の宮崎代表理事は「各施設は今後の訪問診療医確保に不安を感じている。在宅医療を推進し、充実させるためには適切な評価が不可欠だ」とコメントした。【

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