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障害者医療費で過大支給…235市町村で4億円

障害者の医療費の一部を国や市町村が負担する自立支援医療制度で、16道府県の235市町村が2012年度、計約4億2500万円を過大支給していたことが会計検査院の調べでわかった。

 障害者のうち腎不全で人工透析を受けている人は、医療保険の特定疾病制度が優先適用され、医療費のほとんどが保険で賄われるが、市町村が制度をよく理解せず、保険で賄われる分を差し引かなかった。検査院は17日、過大支給分の回収と制度の周知を厚生労働省に求めた。

 検査院が12年度の自立支援医療費を調べたところ、京都、長崎、山梨など16道府県の235市町村は、本来、特定疾病制度により保険金が支払われるはずのケースでも、自立支援医療制度に基づき医療機関から請求された通りの額を支給していた。市町村側が請求内容の確認を怠っていたとみられる。

山口)地域医療支えて13年 やぶ医者大賞の前川さん

萩市の山あいの里に、平屋建ての市国民健康保険むつみ診療所が、ひっそりとたたずむ。常勤医師は、所長の前川恭子さん(46)1人だけだ。女性医師としての誇りを胸に、地域医療を支えて13年になった。12月には、「第1回やぶ医者大賞」を受ける。

 「やぶ医者大賞」は、兵庫県養父(やぶ)市がへき地で頑張っている医師を顕彰するために創設した。「やぶ医者」の語源が「養父にいた名医」であったことにちなんだものという。前川さんは「推薦してくれた医師が自分のことを陰で評価してくれた。受賞はめっちゃうれしい」と喜ぶ。

 東京に生まれ、1歳のころ、父を亡くした。母の郷里、萩市に戻ったが、暮らし向きは厳しかった。そんなころ、テレビアニメ「母をたずねて三千里」に登場する「お金を取らない医師」にひかれた。進路担当の先生から「自治医科大に進めば学費は不要」と教えられ、医師の道へ進んだ。

 へき地の診療所は「教育の場」でもある。毎年、山口大の医学生が実習でやって来る。問診や血圧測定をしたり、訪問診療や小学校の健診に同行したり。前川さんは、医学生たちに地域医療に携わることを求めたりはしない。だが、実習を終えた学生が「地域医療への思いが強くなった」と言ってくれたときは「うれしい」という。

 診療所に勤めながら、自身の子育てにも力を入れてきた。代わりの医師がいないため、子どもを理由に診療所を休むことは難しい。だが、前川さんは、患者たちの状態を把握したうえで、あえて休みを取ってきた。診療所におけるワーク・ライフ・バランスの実践だった。

医事雑感 食べる喜び ご近所のお医者さん

 老人ホームなどの入居者に対するアンケート調査で、日常生活の関心事で一番にあげられるのは、食事といいます。高齢者にとって、食べることは何よりの楽しみです。

 Zさんは70歳を過ぎた女性で、脳梗塞(こうそく)で倒れました。一命は取り留めたのですが、左半身不随と認知障害が残りました。嚥下(えんげ)も困難となり、直接胃に栄養を入れるための胃ろうが作られました。病状が安定したので、急性期病院から回復期リハビリ病院に転院となりました。転院当初は、ほとんど寝たきりの状態で、表情も乏しく、意思疎通もはかれない状態でした。

 摂食嚥下の専門家である言語聴覚士(ST)と栄養サポートチーム(NST)が協力して、Zさんの嚥下訓練を始めることになりました。まず、レントゲン透視を用いて、嚥下状態を評価すると、水分ではむせるものの、ゼリー状のものは、何とか飲み込むことができました。ゼリー状の栄養食を少しずつ試みることにしました。

 寝たままでは飲み込みができませんので、座位になる訓練から始める必要がありました。座った状態で、ゆっくりと、STがゼリー食を食べさせました。日に日に食べる量が増えました。1カ月ほどで、柔らかいものなら嚥下できるようになり、表情が明るくなりました。簡単な会話も可能となりました。自助食器を使って、利き腕の右手で食べる訓練も始めました。NSTは必要な栄養量を計算して、胃ろうからの注入を減らしてゆきました。

 さらに1カ月ほどたった頃には、時間をかけて全粥(ぜんがゆ)刻み食を完食するまでになり、胃ろうは必要なくなりました。この頃には、夫が来ると、自分から会話を交わすようになりました。嚥下訓練を続けながら、車椅子にも挑戦しました。

 リハビリの効果もさることながら、食べることの喜びが、めざましい回復につながったように思います。半年後には、毎食にかかる時間が30分以内となりました。車椅子での自力移動も可能となり、退院の日を迎えました。夫は「こんな日が来るとは奇跡としか思えません」と言って、病院を後にしました。

診療所のスプリンクラー、普及いまだ進まず 福岡市の医院火災から1年

10人が死亡した福岡市博多区の安部整形外科の火災から11日で1年。火災をきっかけに初期消火に有効なスプリンクラーの必要性が指摘された。国は病院や有床診療所に対する設置義務の拡大に動き、補助金も創設したが、普及は思うように進まない。経営が苦しい有床診療所が求める低コストの「簡易型スプリンクラー」の設置基準などを定める法令整備が遅れ、ブレーキをかけている実態がある。

 昨年10月11日未明に火災が発生した整形外科にはスプリンクラーの設置義務はなかったが、未設置だったことが被害拡大につながったとの指摘が相次いだ。

 このため総務省消防庁は7月、消防法施行令などの改正案をまとめ、2016年4月から自力避難が困難な患者がいる病院と有床診療所は面積にかかわらずスプリンクラー設置を義務化、簡易型スプリンクラーも一定面積以下の施設に設置を認める方針を示した。既存施設には10年間の経過措置を設ける見込み。

 厚生労働省もスプリンクラーを設置する医療機関に1平方メートル当たり1万7千円の補助金を出すことを決め、昨年度の補正予算には約100億円を計上した。

 従来型のスプリンクラーの設置には1平方メートル当たり3万5千円前後かかり、施設側に数百万円もの負担が生じるケースが多い。全国有床診療所連絡協議会は、コストが従来型のほぼ半分で済む簡易型を認めるよう国に働き掛けてきた。

 厚労省は6月末、簡易型を含め、申請があった約2100施設のうち約600施設に助成を内示。ただ、消防庁は当初、簡易型の設置基準などを盛り込んだ改正消防法施行令などを8月中に公布予定だったが、「条文の調整」を理由に遅れている。このため、施設側と消防署との事前協議が進まず、内示後も着工できないケースが多いようだ。

 福岡市や長崎市は「法令が公布されるまでは、判断のしようがない」と説明。鹿児島市は、今後、設置基準などが変わる可能性があることを説明した上で、施設側との事前協議に応じるとしている。

 関係者の間では、法令整備後に設置希望が集中した場合、業者の施工能力の限界から対応が遅れることへの懸念も漏れる。

 一方で、有床診療所連絡協で防火担当理事を務める田坂健二医師(福岡市)のもとには、内示を受けた全国の医師から「補助枠を大幅に超える工事見積もりで困っている」という相談が連日寄せられている。簡易型でも、想定外に多額の自己負担が必要な見積もりを示す業者もあるという。

 3割が赤字経営とされる有床診療所には死活問題。同連絡協は「多額の負担が必要なら、いったん補助金を辞退するように」と呼び掛けざるをえない状況だ。

 火災はきょう起きるかもしれない。田坂医師は「患者の安全が第一だが、厳しい経営状況の中で借金を抱えるようでは入院受け入れをやめる施設が出かねない」と、早期の解決を訴える。

 

介護利益率、大半5%超 経営安定、厚労省調査

厚生労働省は3日、介護サービス事業所の今年3月の経営実態を調査した結果を発表した。収入に対する利益の割合である「収支差率」は、大半のサービス類型で5%を超えた。厚労省は「おおむね安定的な経営と言える水準だ」と分析。2015年度の介護報酬改定の基礎資料となり、引き下げを求める圧力が強まりそうだ。

 職員の給与は一部を除いて3年前調査に比べて改善した。処遇改善に取り組んできた効果が一定程度出た。

 収支差率が10%を超えたのは、認知症グループホーム(11・2%)や通所介護(デイサービス)(10・6%)など。特別養護老人ホーム(特養)は定員30人以上の施設で8・7%、定員29人以下の小規模施設でも8・0%と高い水準だった。

 ケアマネジャーが介護利用計画を作る居宅介護支援は、前回より1・6ポイント上がったもののマイナス1・0%と低迷。12年4月に新たに始まった「24時間地域巡回型サービス」も0・9%と低かった。

 看護と介護の職員の平均月給は、定員30人以上の特養では約32万6千円と3年前から約2万2千円増えた。訪問介護は約3万5千円上がって約25万9千円、通所介護も約3万円増の約25万7千円だった。一方、介護型療養病床では約3千円下がって約34万円となった。

 調査は全国の3万3339事業所を対象に実施。うち48・4%に当たる1万6145事業所から有効回答を得た。

 ※介護報酬改定

 介護サービスを提供する事業者に支払われる費用の公定価格の見直しで、原則3年に1度実施される。報酬が上がれば、介護現場は質の向上につながると期待する一方で、利用者や国の負担が増え、保険料のアップにもつながる。2015年度の改定では、不足する介護職員の確保に向け、どれだけ賃金の改善につなげられるかが焦点となる。

【滋賀】医事雑感 摂食・嚥下障害 ご近所のお医者さん

◇最期まで「食べる喜び」を--堀泰祐さん(県立成人病センター緩和ケア科)

 滋賀在宅医療セミナーが先日、開催されました。高齢化社会に対応して、患者が病院ではなく、暮らしの場所で医療を受けられるように在宅医療の普及を目指す取り組みです。

 セミナーには、医師や看護師、薬剤師、理学療法士など多くの職種が集まり、熱い思いを感じました。講義やグループワークを通して、在宅医療の知識を高め、さまざまな職種の顔の見える交流を図ることが狙いでした。

 私はがん疼痛(とうつう)緩和の講義を担当したのですが、セミナーの中で摂食・嚥下(えんげ)障害に関する講義は新鮮で「目からうろこ」でした。

 まず、歯科の先生から、口腔(こうくう)ケアの重要性が示されました。口腔ケアは虫歯や歯周病を予防するだけでなく、咀嚼(そしゃく)や嚥下機能を保ち、肺炎の予防にもなります。次いで、摂食・嚥下や栄養学に関する講義がありました。老化が進むと、食欲の低下、歯の喪失、咀嚼力の低下、消化液の分泌低下などから、次第に低栄養状態になりやすくなります。栄養状態が悪化すると、筋力の低下によりさらに咀嚼・嚥下力が低下するという悪循環に陥ります。

 嚥下機能が障害されると、誤嚥(ごえん)しやすくなり、肺炎の危険性も高まります。高齢者の死亡原因の中で、肺炎はがんや心疾患とともに常に上位を占めています。

 高齢化や脳卒中など、いろいろな疾患で摂食・嚥下障害が生じるのは、ある程度やむを得ないものと考えられてきました。食べられなくなれば、すぐに胃ろうやチューブ栄養に頼ってしまうような、安易な対処が行われがちでした。

 摂食・嚥下障害に対しては、さまざまなアプローチがあります。まず、嚥下状態を詳しく観察し、内視鏡やレントゲンを用いて、嚥下機能を評価します。嚥下訓練にはさまざま方法があり、専門の言語聴覚士(ST)による指導が行われます。

 口腔ケアや日常的に行う嚥下体操、食べやすい食事形態にすることや、食べるときの体位や環境の工夫なども有効です。

 多くの職種が協力して、高齢者ができるだけ最期まで食べる喜びを失わないよう、支えてゆくことが大切です。

【京都】高齢者の肺炎予防=大塚健さん ご近所のお医者さん

 肺炎にはすぐに治る軽いものから命に関わる重いものまでありますが、高齢になるほど死亡率が高く肺炎で死亡する人の多くは65歳以上です。

 肺炎の原因になる病原体には、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌(かんきん)、マイコプラズマやクラミジア、各種のウイルスなどがありますが、高齢者の肺炎の原因の多くは肺炎球菌です。体力の低下した高齢者では重症の肺炎になったり、時には死亡することもあります。そこで肺炎にかかってから治療するのではなく、かかる前にワクチンで予防することが推奨されています。

 肺炎球菌ワクチンは1回の接種で5年間、肺炎球菌による肺炎を予防できます。今までは、肺炎球菌ワクチンを接種する場合、全額(8000円程度)を自分で支払う必要がありました。しかし、この10月から費用の一部を自治体が負担することが決まりました。

 自分で払わなければならない金額は、所得の有無で変わりますが、おおまかに「半分ぐらいの値段で予防接種してもらえる」と考えていただけるとよいかと思います。また希望すれば誰でも接種できるわけではなく、年齢や病気の有無などで細かい決まりがあります。今までに肺炎球菌ワクチンを接種したことのある人も公費補助は受け付けられません。今年度は65歳、70歳、75歳……と5歳刻みの人が接種対象になります。どこの医療機関でも接種ができる訳ではないので、かかりつけの医師に相談されると良いでしょう。

 一方、重度の認知症の方に発症する誤嚥性(ごえんせい)肺炎は、ワクチンでは予防できません。誤嚥性肺炎になりやすい高齢者には嚥下(えんげ)しやすい「トロミ」を使った食事を食べてもうらうことで肺炎の予防ができます。トロミの入ってない水やお茶を認知症の人に飲ませるとムセてしまい、食べ物が胃ではなく肺に入ってしまうことがあります。これが誤嚥性肺炎の原因です。トロミは調剤薬局などで買うことができます。簡単ですので、家庭で高齢者を介護されている方は薬剤師さんに相談されると良いでしょう。

健康寿命10年より延びる 男性71歳、女性74歳 13年、厚労省

厚生労働省は1日、介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」が、2013年は男性71・19歳(13年の平均寿命は80・21歳)、女性74・21歳(同86・61歳)だったと公表した。

 前回10年時点の健康寿命は男性70・42歳、女性73・62歳で、これと比べると男性が0・7歳以上、女性が0・5歳以上延びたが、平均寿命との差は9~12年となっている。

 高齢化が進展する中、厚労省は、国民が健康な状態で過ごせる期間の指標として12年に10年時点の健康寿命を初めて公表しており、今回が2回目。政府は20年までに健康寿命を1歳以上延ばすことを目標に掲げている。

 厚労省は12年に01、04、07年時点の健康寿命も併せて算出しており、今回の13年時点も含め男女とも緩やかに延び続けている。同省は「国民の健康に対する意識が高まってきている」と要因を分析している。

 同省は地域間の健康寿命の格差縮小を目指しており、今後、自治体別のデータも出す予定。

 健康寿命は、国民生活基礎調査で「健康上の問題で日常生活に影響がない」と答えた人の割合や年齢別の人口、死亡数などから算出している。

 厚労省は13年度から10年間の国民の健康づくり計画で、健康寿命を延ばすため、がんや脳卒中などの生活習慣病の死亡率低減や、喫煙や飲酒に関する数値目標を設定。同省の専門委員会で進捗(しんちょく)状況を確認しており、健康寿命は1日の会合で報告された。

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