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特養、62%が赤字経営 物価高、22年度団体調査

 寝たきりなど要介護度の比較的高い人が生活する特別養護老人ホーム(特養)の62・0%が2022年度、赤字経営だったことが13日、全国老人福祉施設協議会の調査で分かった。02年度の調査開始以来、初めて60・0%を超えた。前年度は43・0%。担当者は「新型コロナウイルス禍の利用控えに加え、光熱費や食材費など物価高で一層厳しくなった」と述べた。

 介護事業者がサービスの対価として受け取る報酬は、国が3年に1度改定して決める公定価格。その間に物価高などで出費が増えても、自由に価格に転嫁できないという事情がある。

 国や自治体がコロナ禍などでの経営を支えるため配った補助金を収支に加えても、22年度は特養の51・0%が赤字だった。

 各施設の収入に占める利益の割合「利益率」を平均すると、前年度比3・6ポイント減のマイナス2・8%だった。マイナスは初めて。施設を運営しても損失が発生しやすい状況となった。

 特養の一部は、高齢者を日帰りで受け入れ、入浴介助など通所介護(デイサービス)も実施している。この通所介護の利益率は、3・8ポイント減のマイナス5・0%だった。

 調査は今年7~8月、協議会に加入する全国の特養1600施設の回答を集計した。

てんかん:てんかん精通の薬剤師対応 都島に薬局オープン 大阪市立総合医療センターそば 複雑な服薬法、詳しく説明

てんかん:てんかん精通の薬剤師対応 都島に薬局オープン 大阪市立総合医療センターそば 複雑な服薬法、詳しく説明 /大阪

 てんかんに詳しい薬剤師をそろえた保険薬局が2日、大阪市都島区都島本通2の市立総合医療センターのすぐそばにオープンした。難治性のてんかんでは、さまざまな用途の薬を組み合わせたり、症状に応じて変更したりするなどの対応が必要。患者本人や家族も服用に慣れないため、診療時間内に十分な説明を受けられない現状がある。代わりに知識を持った薬剤師が対応することで医師、患者双方にメリットがあると期待されている。【高野聡】

 「nanacara(ナナカラ)薬局」。てんかん患者向けアプリ「ナナカラ」を開発したベンチャー企業「ノックオンザドア」(東京都港区)が運営する。開業に際してスタッフを募集し、理念に賛同する薬剤師2人を含む4人を採用した。

 てんかん治療薬は約30種あるとされ、先発品、後発品を区別すれば約60種にも及ぶ。これらを適切に組み合わせれば、日常的に発作を抑え、通常の生活が送れるが、それには患者の年齢や症状によって薬を変更したり、複数の薬を組み合わせたりする必要がある。また主治医が患者やその家族に薬の服用方法を説明しても、複雑でわかりにくく、診療時間に影響するという弊害があった。詳しい説明を薬剤師に任せられれば、より診療に時間が充てられる。

 採用されたスタッフは約2カ月間、てんかん専門医の講習会を受講したり、患者から聞き取りをしたりして、専門知識を蓄積した。薬局の統括責任者で薬剤師の中田紘史さん(47)は「今後も継続的にてんかん専門医らから知識を吸収していく」と話す。

 薬局はバギー型車椅子を使うてんかん患者やその家族が訪れやすいよう、スロープや多目的トイレを設けてバリアフリー化を実現した。また総合医療センターは遠隔地と結んだてんかんのオンライン診療も実施しており、必要な薬剤の発送業務もナナカラ薬局で対応する。

百歳以上、9万2139人 53年連続増、女性が88% 最高齢は116歳 「敬老の日」で厚労省

 「敬老の日」(今年は18日)を前に、厚生労働省は15日、全国の100歳以上の高齢者が過去最多の9万2139人になったと発表した。昨年から1613人増え53年連続で増加。全体のうち女性が8万1589人と88・5%を占め、男性は1万550人。最高齢は116歳だった。

 老人福祉法で「老人の日」と定めた15日時点で100歳以上の高齢者の数を、1日時点の住民基本台帳を基に集計した。昨年からの増加数は男性が185人、女性は1428人。2023年度中に100歳になる人は4万7107人(前年度比1966人増)だった。

 女性の最高齢は大阪府柏原市の巽(たつみ)フサさんで、1907(明治40)年4月25日生まれの116歳。男性は千葉県館山市の薗部儀三郎(そのべ・ぎさぶろう)さんで、11(明治44)年11月6日生まれの111歳。

 人口10万人当たりの100歳以上の高齢者数は73・74人。都道府県別では、島根が11年連続最多で155・17人、次いで高知146・01人、鳥取126・29人の順だった。埼玉が44・79人で最も少なかった。

 100歳以上の高齢者は調査を始めた63年が153人で、81年に千人を突破。98年には1万人を超えた。医療や介護などの充実が背景とされる。

 厚労省によると、22年の日本人の平均寿命は女性が87・09歳、男性が81・05歳となり、2年連続で前年を下回った。新型コロナウイルス流行の影響とみられる。

特養で誤嚥死、賠償命令 2500万円

〇市の特別養護老人ホームで2021年、パーキンソン病だった入所者の80代男性が食事中に誤嚥(ごえん)死したのは、施設が注意義務を怠ったためだとして、遺族3人が運営元の社会福祉法人に約3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、地裁は7日、約2500万円を支払うよう命じた。

 裁判官は判決理由で、亡くなる1カ月半前にも朝食を喉に詰まらせ、むせ込んだことがあり、同じように食事を提供すれば、より重大な結果が生じる危険を認識できたと指摘した。

 その上で、介護記録にむせ込んだ事実が記載されていないなどとして「十分な情報共有や原因分析がされなかったとうかがわれる」と過失を認定した。

 判決によると、男性は19年に入居。21年11月26日、朝食のロールパンを喉に詰まらせ、病院に救急搬送されたが、死亡した。

 

ヘルパンギーナ:ヘルパンギーナ、流行警報レベル

乳幼児がかかりやすい夏風邪「ヘルパンギーナ」の流行が拡大している。国立感染症研究所が11日に公表した速報値によると、直近1週間の全国の1医療機関あたり患者数は6・48人(前週は5・79人)。過去10年で初めて、全国平均では警報レベル(6人)となった。

 ヘルパンギーナは接触や飛沫(ひまつ)などによって感染する。38~40度の発熱と、口の中やのどに直径1~5ミリ程度の小さな水疱(すいほう)ができるのが特徴。

 感染研によると、全国約3000の小児科定点医療機関からの報告数は6月に入って急増している。直近1週間(6月26日~7月2日)の感染者数は、都道府県別では宮城(15・85人)、三重(12・38人)が多く、25都道府県で警報レベルとなった。

 この他、乳幼児に多い呼吸器疾患「RSウイルス感染症」の患者も増加傾向が続き、直近1週間の小児患者数は9981人、1医療機関あたりの患者数は3・17人と前年同期の約3倍に増えている。

やぶ医者大賞:栄えある「やぶ医者」大賞 佐賀・阿部さん、福井・井階さん /兵庫

養父市が全国の過疎地で活躍する医師をたたえる第10回「やぶ医者大賞」に、佐賀県唐津市の医療法人慈孝会七山診療所長の医師、阿部智介さん(43)と、福井県高浜町のたかはま地域イノベーションセンター長の医師、井階友貴さん(42)が選ばれた。

 7道県から8人の応募があり、審査委員長の枚田一広・養父市医師会長、西村正樹・公立八鹿病院長ら8人でつくる審査会で1日、決まった。

 阿部さんは、医師不在だった佐賀県旧七山村(現唐津市)に開設された父親の診療所を2012年に引き継いだ。高齢者世帯の増加、交通網の縮小に対して訪問診療、巡回診療などで地域を支える。診療所、歯科診療所、調剤薬局を市役所支所に移転集約させたほか、高齢者の自立した生活のための予防啓発に力を注ぎ、歯科医師、保健師と共に集落を巡回。近年は他地域の在宅医療、介護体制づくりにも携わる。

 丹波篠山市出身の井階さんは、住民もまちも健やかに存続できる「まちづくり系医師」として、町の和田診療所を拠点に活動。地域医療の主役に住民を据え、住民による地域医療サポーターの会を09年に設けて支援。課題解決のための自由参加型住民会議も開くなど住民同士のつながり作りに励む。センターは福井大学、病院、町が22年に開設。福井大学医学部地域プライマリケア講座教授も務める。

 やぶ医者大賞は、若手医師の育成、地域医療の発展などを目的に、全国の過疎地などで活躍する50歳以下の医師や歯科医を表彰する制度。養父市が文献に基づいて「やぶ医者」の由来を「養父にいた名医」という説を唱えて、14年に創設した。

マイナ不具合でも3割負担 厚労省、患者窓口10割回避 病院不足分補填

マイナンバーカードと一体の「マイナ保険証」の不具合により「無保険扱い」となった患者が医療費10割を請求される問題で、厚生労働省の対策案が分かった。医療機関に対し、患者の自己負担を本来の3割などにするよう求める。その後、加入保険を確認できなくても、病院などが残りの医療費を受け取れずに不足が生じないよう補填(ほてん)する。関係者が28日明らかにした。

 29日にマイナ保険証の厚労省推進本部で議論し、月内にも医療機関などに通知する見通し。

 厚労省は保険証がなくても保険診療を受けられる災害時と同様の仕組みを活用。患者は本来の自己負担分で済む。マイナ保険証を巡る国民や医療現場からの批判をかわしたい考えだ。

 無保険扱いとなる要因は、転職などによる加入保険変更の反映遅れや、カード読み取りや通信のトラブルなど。

 対策案では、マイナ保険証に不具合があり、従来の健康保険証も持参していない場合、医療機関はマイナカード券面の顔写真や生年月日などで本人確認をした上で、患者に3割分などを請求。患者は医療機関に保険の加入情報を申告、国の審査機関がこれを基に確認した上で、患者負担分を除く診療報酬を医療機関に支払う。

 一方、無保険などで加入保険が不明のままとなるケースも想定される。この場合は通常、医療機関に診療報酬が支払われないが、特例的に健康保険組合など各保険者間で負担を分け合い対応する。

 加藤勝信厚労相は20日の記者会見で「保険料を払っている人が3割などの負担をした上で必要な保険診療が受けられ、医療機関には追加的な経済的負担をかけないようにする」と述べていた。

マイナ保険証「無効・該当資格なし」65.1%が経験、1万施設回答

 全国保険医団体連合会は6月21日、記者会見を開き、約1万施設への調査で、マイナ保険証トラブルを経験したのは65.1%に上るという最終結果を公表した。トラブルの内容は、マイナ保険証で「無効・該当資格なし」との内容が最多で65.1%、その対応法として「健康保険証で資格確認した」が74.9%で最も多かった。

 資格確認できず、医療機関の窓口でいったん10割を請求したのは、38都道府県1291件、「他人の情報がひも付けされていた」が31都道府県114件と、トラブルは各地域で発生している。その他、他人の顔でもマイナ保険証が認証された事例が把握できただけでも3件、障害者手帳のひも付けミスなども発覚している。

 衆参両院の国会議員に対して緊急アンケートを実施したところ、回答があったのは62人で回答率は10%に満たず、自民、公明両党の議員からは回答がなかった(6月14日~20日に実施)。62人の回答は、保険証について「廃止に反対」が55人(88.7%)、マイナ保険証を起点とするオンライン資格確認システムの運用について「いったん停止して総点検すべき」が57人だった(91.9%)。

 保団連会長の住江憲勇氏は、▽さまざまなトラブルが噴出する中で、個人にとっての機微情報に富む医療情報をマイナンバーカードにひも付けることの危険性、▽申請主義の資格確認書により無保険者を作り出す懸念、▽ヒューマンエラーを起こさない制度設計を政府は怠りながら、さまざまなトラブルをヒューマンエラーに矮小化し、現場に責任を押し付ける政府の危機管理意識の欠如、▽結果として国民にとっても、医療現場にとってもマイナ保険証の利用は危険であり、利用に堪えない状況になっている――という4点を指摘。

 住江会長は、「直ちに運用停止、全件チェック、全容解明し、解決策および再発防止に取り組み、それを国民に明らかにすることこそが、政府が取るべき喫緊の課題だ」と訴えた。

 保団連では、今秋にも衆議院の解散を想定し、「待合室から健康保険証を存続させるキャンペーン」を実施する。具体的には、▽保険証廃止法案に対する各党採決結果を記した待合室掲示用ポスター、▽保険証廃止知っとくパンフレット(マイナ保険証トラブル回避法、資格確認書などを現時点の到達に基づき患者に分かりやすく解説したパンフレット)、▽ショート動画(記者会見参加医師、歯科医師の発言を素材としたショート動画)、▽国会質疑での各党の姿勢、個別議員アンケート――などを作成、展開する。

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