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75歳以上の医療保険料、1人あたり年4千円増検討 現役は負担減へ

医療保険制度の見直しについて、厚生労働省が検討する改正案の全容が16日、わかった。75歳以上の高所得者の保険料上限を年66万円から80万円へと大幅に引き上げ、中所得者の保険料も増やす。これにより75歳以上の高齢者1人あたりの保険料は年4千円増える。一方、現役世代らの保険料負担は抑え、1人あたりで1100~300円下げる。来年の通常国会で関連法案を提出し、2024年度からの実施を目指す。

 同省の制度見直し案は、現役世代の負担を和らげるため、年齢によらず支払い能力に応じた負担を求める考えを前面に打ち出した。

 75歳以上が入る後期高齢者医療の保険料上限額の引き上げ幅(14万円増)は過去最大となる。08年度の制度開始以降、これまでも段階的に引き上げられてきたが、一度の上げ幅は最大でも5万円だった。

75歳医療保険料、14万円増 高所得の年上限額引き上げ 政府調整、中間層も

 政府は、75歳以上が入る後期高齢者医療制度の保険料に関し、一部の高所得者の年間上限額を現行の66万円から80万円程度に引き上げる方向で調整に入った。保険料は年約14万円増える。年間上限額の引き上げに併せ、比較的所得の多い中間層の保険料も増額する。高齢化で医療費が膨張する中、経済力に応じた負担を求める狙い。2024年度の実施を目指す。政府関係者が8日、明らかにした。

 25年には団塊の世代が全員75歳以上となり、医療費が一層膨らむ見通し。財源の半分弱は現役世代の保険料で賄われており、政府は75歳以上の保険料を増やし、現役の負担軽減につなげたい考えだ。保険料の上限額の引き上げ対象者は全体の約1%で、中間所得層の増額の内容については今後詰める。対象の線引きや引き上げ額によっては、反発を招く可能性がある。

 政府は、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)で議論し、22年末に結論を出す。23年の通常国会に関連法改正案を提出する方針。

 後期高齢者医療制度の保険料は、原則加入者全員が負担する定額部分と、収入が年金だけで年153万円を超える人(75歳以上の約4割)が払う所得比例部分からなる。保険料の年間上限額は現在66万円で、年金と給与の合計が約1千万円以上の人(75歳以上の約1%)が対象となっている。

 今回、年間上限額を80万円程度に引き上げ、所得比例部分を重視した仕組みに改めて、高齢者の支払いを増やす。

 75歳以上の医療費全体は22年度、窓口負担を除き約17兆円。うち約5割に国や自治体の公費を投入し、約1割は75歳以上の保険料、残り約4割を現役世代の保険料の一部を使った「支援金」で賄っている。

塩野義製薬、新型コロナワクチンの承認申請は「11月末~12月」

塩野義製薬は31日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、11月末から12月に厚生労働省に承認申請する考えを示した。2020年に臨床試験(治験)を開始し、昨年後半の時点では今年3月末までの申請を目指していた。しかし、治験の遅れや量産体制の確保などに問題があり、今春以降、数度にわたり申請目標の時期を遅らせていた。

 この日あった22年9月中間決算の説明会で手代木功社長が「ワクチンは本当に遅れていて、国民のみなさまからお叱りをいただいている。どんなに遅くても年内には承認申請したい」と述べた。製造の準備や、治験での情報開示の調整に時間がかかっているという。

 実用化の時期は明言しなかったが、すでに治験のデータなどは厚労省に提出を始めているという。手代木社長は「承認に時間はかからないだろうと思っている」との見通しを述べた。想定通りに承認されれば、国内メーカーが開発した初の「国産ワクチン」となる。

 塩野義が開発しているワクチンは「組み換えたんぱく」という手法で、4月に承認された米ノババックスと同じタイプだ。

後期高齢者の保険料、上限引き上げを検討

厚生労働省は10月28日、社会保障審議会医療保険部会(部会長:田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)に、後期高齢者の保険料の賦課限度額や所得割の比率を引き上げる案を提示した。後期高齢者の保険料と現役世代の負担を比べると、現役世代の負担の増加が大きいことがその背景にある(資料は、厚労省のホームページ)。

 委員からは、現役世代の負担軽減のため仕組みを見直すことに賛同する意見が集まった。引き続き具体案の取りまとめに向け議論を続け、2023年の通常国会にも関連する法案の改正案を提出する。

 後期高齢者が増加する中、現役世代の負担は増加の一途をたどる。2008年度を100とすると、後期高齢者1人当たりの保険料は2022年度に121、現役世代1人当たりの支援金は168となる見込みだ。こうした状況について委員からは「いびつな構造になっていると言わざるを得ない。同程度になるようにするべきだ」といった意見が複数上がった。

 後期高齢者の保険料は、▽被保険者全員が負担する均等割と、▽所得に応じて負担する所得割から成る。

 制度見直しのポイントの一つが、後期高齢者の保険料の賦課限度額を現状の66万円から引き上げる案。厚労省は具体的な引き上げ額はこれから検討・提示するとした。もう一つの見直しが、現状1:1である均等割の総額と所得割の総額の比率について、所得割の比率を引き上げるというもの。こうした改革により、後期高齢者の保険料も負担能力に応じたものという色が強くなる。

国保の賦課限度額、上限引き上げを検討

 同日の部会で厚労省は、自営業やフリーランスの人が加入する国民健康保険の保険料の上限を、現状の102万円から2023年度に104万円に引き上げる案を提示した。医療費が増加する中、収入確保のため、上限を引き上げずに保険料の「率」を引き上げると、高所得層は負担が変わらない中、中間所得層の負担が重くなる。これを避けるため、賦課限度額も引き上げる方針。2022年度も限度額を3万円引き上げており、2年連続の引き上げとなる。

胃ろう高齢者、薬剤耐性菌の保菌率高まる 広島大など発表、対策急務

広島大などの研究チームは25日、栄養をチューブで胃に送る胃ろうをしている介護施設の高齢者は「薬剤耐性菌」を保菌しやすい、との調査結果を発表した。胃ろうの有無で保菌率は便で2倍、口内で5倍の差が出た。抗生物質(抗菌薬)が効かない薬剤耐性菌が増えると感染症治療が難しくなるため、介護施設での対策が急務と提起している。

誤嚥性肺炎患者、入院24時間以内の食事再開...退院まで日数短縮

福島医大大学院医学研究科臨床疫学分野大学院研究生の片山皓太氏(35)は24日、65歳以上の誤嚥(ごえん)性肺炎の入院患者に対し、入院後24時間以内に口での食事を開始したところ、入院日数が短縮したとの研究結果を発表した。

 誤嚥性肺炎は食べ物を誤ってのみ込むことで発症し、高齢者の肺炎の約7割を占める。入院後は数日間、誤嚥を恐れて絶食状態になることが多い中、片山氏は患者の状態を考慮し、早く食事を取ることが早期退院につながることを示した。

 片山氏は、勤務経験がある白河厚生総合病院に入院した65歳以上の患者398人について、24時間以内に口での食事を始めた後の状況を調べた。その結果、食事再開までの時間(中央値)は29.8時間で、日本全体の医療データから判明した4日より短かった。また約3割の患者が24時間以内に食事を再開できた。

 急性期医療を担う白河厚生総合病院では9割の患者が口での食事が可能な状態で退院している。入院後24時間以内の食事開始によって入院日数は短縮したが、口での食事が可能なまま退院した患者の割合に変化はなかった。食事は患者ののみ込む力の状況によって固形物やピューレ状などさまざまだった。

 片山氏は、医師やリハビリなど多職種による患者への介入に力を入れている白河厚生総合病院の高田俊彦医師や宮下淳医師らと共同で研究した。

15都道県が医療機関に直接支給へ、物価高対策

物価高騰に苦しむ医療機関への支援が各都道府県で進んでいる。m3.com編集部が47全ての都道府県に取材したところ、既に15都道県が医療機関への直接支給を決めたことが分かった。ほかの4県は省エネ設備投資への補助というかたちで支援する。ただ、支給額や無床のクリニックを対象とするか否かなど、自治体によって支援に差があり、戸惑いの声も上がっている。残る28府県は検討中・未定としている。

 政府は9月、総額6000億円の「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」を創設し、医療機関などへの支援を推奨事業に挙げている。具体的な支援対象や金額は都道府県が決める。m3.com編集部は10月11~20日に全ての都道府県に取材し、同交付金などを活用した支援策をまとめた。

 病院・有床診療所に対しては、15都道県が9月補正予算などで直接支給を決定した。東京都は1床当たり最大5万1000円を支給する(『都が1床最大5万1000円を支給へ、光熱費・食材費支援』を参照)。病床数の少ない病院が多い地方では、一律で70万~80万円を支給した上で、病床に応じて加算するケースもあった。和歌山県は病床の区分によって、単価が異なり、急性期は1床3万7000円、慢性期は2万5000円とした。

 差が出たのは無床の診療所への対応だ。病院・有床診への支給を決めた15都道県のうち、13道県は無床診にも支給を決めた。ただ、金額は2万5000円から27万円まで大きく差が出た。

小児の肥満対策には2歳までの正しい食習慣の確立が重要

はじめに
 学校健診で肥満を指摘され、医療機関を受診される子どもへの対応が分からないとおっしゃる先生もいるのではないでしょうか。子どもはクリニックや病院を受診しても、「病識がない」もしくは困っていないので、血圧測定、血液検査、腹部超音波検査で、脂質異常症、脂肪肝や糖尿病など、さらなる異常を検出できたとしても、子ども自身は積極的に肥満に向けた取り組みはしません。それよりも2歳までの食育、家族と地域を巻き込んだ合理的配慮の方が大事だと思います。この論文では、子どもの肥満への戦略が検討されていたため、着目しました。

論文の概要
 この論文では、2歳までの食習慣は8歳になっても変わらないことが示されているため、小児の肥満を予防するための統合的な戦略として、2歳になるまでに健康的な食習慣を身につけさせることが大事であるとされています。また、小児の肥満予防は出生前から始まっており、母親の体重増加は新生児の肥満に影響を及ぼすことが分かっていることから、子どもの肥満予防には妊娠中の体重コントロールが必要であるとされています。

 さらに、①食事回数は肥満予防における重要な決定要因であり、1日2食以下よりも5食など補完が大事であること、②母乳栄養が効果的だが、人工栄養の場合には低タンパク質ミルクを選ぶこと、③2-17歳においては、60分程度の中等度から強度の運動負荷が大事であること、④家庭のみならず学校でもファストフードのようなものを食べさせず、学校に自販機を置かないといった協力が必要であること――などが重要な点として述べられています。

私の視点
 小児の肥満は、1975年から2016年にかけて世界で10倍に増えています。この傾向がこのまま続けば、2050年には16歳未満の子どもの25%以上が肥満になると推定されています。

 子どもの肥満は将来、糖尿病や心血管疾患のリスクとなることが明らかになっていますが、いまだに効果的な戦略は分かっていません。その背景には、子どもは肥満やその合併症の怖さが理解できていないことが挙げられます。夜中まで起きていて、身体も動かさずにゲームやSNSに没頭する生活は、肥満のみならず、子どもの心と身体にとって不健康そのものだと言えます。この論文でも述べられていますが、最近話題となっている「食育」に関して、食事の回数や内容、家族で食卓を囲むことの意義について、親に対してのみならず学校や地域における啓発が大事だと思われます。

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