たいていの人の口の中には、飲んだり食べたりした物に含まれる糖質を餌にするミュータンス菌という悪玉菌がいて、これが歯のエナメル質にあるカルシウムやリン酸などのミネラル分を溶かしてしまう。「脱灰」という現象で、予防歯科学では「早期う蝕」「早期初期虫歯」などと呼ばれている。
普通、脱灰は唾液が修復してくれる。食べ物の消化を助けたり、味を感じやすくしたりする唾液には、歯をつくるカルシウムやリン酸が含まれ、これらが歯の表面に沈着して結晶し、元の状態に戻すからだ。これを「再石灰化」という。
歯は、この脱灰と再石灰化を繰り返して次第に硬くなり、虫歯になりにくくなる。しかし、あめをなめたり、甘いジュースを飲んだりして糖質を取る時間が長くなると、脱灰も長くなり、再石灰化が追いつかなくなってしまう。すると、歯石などに巣くっているミュータンス菌が増殖して歯に穴開き、歯の表面が黒ずんだり、穴が開いたりする本格的な虫歯に至る。
産経新聞 2009.6.4