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歯の色を再現した患者の数 600人 人生を変える仕事。妥協できない 歯科技工士

40代の女性患者は何を聞いても、うつむいたままだった。聞き取れないほどの小声で話すだけ。神経を抜いた前歯は茶色の変色していた。
 どんな義歯にしたいのか、いつものようには会話からうまく探れず、陶製の差し歯を健康な隣の歯を参考に作った。歯の上部と下部で白の濃淡が異なる特徴も再現した。
 治療が終わって1週間。差し歯の具合の確認に来た女性はまるで別人だった。はつらつと前を向き「やっと私の歯が戻ってきました。ありがとう」と何度も繰り返した。08年夏、忘れ得ぬ思い出だ。
         朝日新聞 2009.8.24