よく噛まなくても食べられる軟らかいものが好まれるなど、食生活が変化したこともあり、最近の日本人は食事の際に噛む回数が極端に減っている。
日本チューインガム協会が調べたところによると、1回の食事で噛む回数は約620回。戦前の1420回に比べて半分以下に減っており、もちろん、それだけ咀嚼力が衰えているのだという。
こうした現状を憂い、噛むことの重要性を訴えているのが小野塚實神奈川歯科大教授である。
「噛むことは心身の健康を保ち、命をつなぐための重要な習慣なのです。特に最近は噛む力が脳機能に大きな影響を及ぼすことが科学的にも解明され、記憶力や認知力を向上させる有効な手段だと考えられています」
噛むというと、食べ物を飲み込みやすいように小さく砕いたり、唾液の分泌をよくすることだけが、その動きだと思われがちだが、実はそうではない。噛むことには脳の血流量を増やし、神経活動を高めるため、結果的に脳の動きを良くするという効果もあるのだ。
日刊ゲンダイ 2010.1.25