抗がん剤や放射線によるがん治療は、がん細胞を死滅させると同時に、正常な細胞まで影響を及ぼし、さまざまな副作用が現れる。そのうち、口の粘膜の炎症を「口腔粘膜円」と呼ぶ。がん治療が決まった時点から口の中を清潔に保つなどのケアが、炎症の痛みを軽減し、術後の合併症を防ぐ効果があることが分かってきた。
「これまではほっておいても治る、我慢すればよいと言われ、何の予防策もなかった」と話すのは歯科口腔外科の大田洋二郎部長。しかし1990年ごろ以降、手術単独の治療から、手術と放射線、抗がん剤を組み合わせた治療が広く行われるようになり、口腔トラブルを抱える患者が急増した。
「がん治療に口腔ケアを加えると、治療中の痛みを和らげ、治療を長引かせずに行える。術後の合併症を防ぎ、患者の生活の質を維持する。結果的に治療成績を上げることにつながる」と説明する。ケアの基本は、口の中を清潔に保つ▽口の中を湿らせる▽痛み止めの薬を使って痛みを和らげるの3つ。
東京新聞 2010.4.2