厚生労働省の「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(座長=大島伸一・独立行政法人国立長寿医療研究センター総長)は7月22日、2回目の会合を開き、ホームヘルパーと介護福祉士に対し、たんの吸引と胃ろうによる経管栄養の実施を認める方針で合意した。次回以降の会合で、具体的な研修内容などを検討する。
会合では、日本看護協会常任理事の齋藤訓子氏が、▽急性期やターミナル期における医行為は、医師もしくは指示を受けた看護職員が行う▽経管栄養については、現行の特別養護老人ホームにおける対象範囲・実施体制を踏襲すべき。経鼻経管栄養については、介護職員の実施は認めるべきではない▽老人保健施設におけるたんの吸引や経管栄養については、医師もしくは看護職員が実施すべき―などの内容を盛り込んだ意見書を大島座長あてに提出した。
これに対し、ジャーナリストで国際医療福祉大大学院教授の黒岩祐治氏は、「ならば、すべてのナースは(たんの吸引などの医行為を)ちゃんとできるのか、と問いたい。看護師ならできる、介護士はできないという発想は間違い」と激しく反論した上で、法律上、介護職員がたんの吸引などの医行為ができないと定められている現状こそが危険と主張。他の構成員も、ホームヘルパーと介護福祉士に対し、たんの吸引と経管栄養を認めることを前提に、研修や法整備についての議論を進める方針に賛同した。
さらに日本医師会常任理事の三上裕司氏は、医行為を行うことができないはずの介護職員が、たんの吸引や経管栄養を実施するという矛盾を解消するため、「(たんの吸引などは)医行為から外すことが現実的ではないか」と提言した。しかし、国学院大法科大学院長の平林勝政氏は、「介護職が医行為をできるようにするためには、どこでどんな教育をしていくのか、という議論をまず進めるべき。その上で(医行為かどうかという)法律に関する議論をすべきではないか」と主張。多くの構成員が、法整備より研修の内容の検討を優先することで一致した。