「口が開きにくい」「あごが痛い」などの症状が出る顎(がく)関節症。症状の軽いケースも含め、日本人の3~4割が経験するともいわれる。ここ数年は歯を削らずに、患者の癖を直す生活指導や、関節や筋肉のトレーニングによって症状を改善する手法が主流になってきた。
顎関節症はとくに20歳代と30歳代に多い。代表的な症状は「口が開かない」「あごが痛む」「あごの関節がカクカクと鳴る」の3つ。大学入学や就職などで生活スタイルの変化から感じるストレスで歯を食いしばる癖が出やすい。
大半はそれほど悪化しないが、あごに負担がかかり続けると痛みなどの症状が出る。顎関節症の原因は長らくかみ合わせに問題があるからだと考えられてきた。治療法は歯を削ったり、樹脂製マウスピースを口にはめたりして、かみ合わせをよくする方法が主流だった。だが、なかなか改善しないだけでなく、かえって悪化する患者も多かった。
日本顎関節学会などが中心となり5~6年前から、原因や新しい治療法を検討した。癖によるあごへの負担や、あごの筋肉のこわばりなどが顎関節症の原因と考えられるようになってきた。
顎関節症をめぐる治療法はまだ統一されていないのが現状だ。医学的な根拠に乏しい自己流の治療法を実施している歯科医もいる。インターネット上には間違った治療法を紹介しているウェブサイトも多く、戸惑う患者も多い。高額な治療費を払っても症状が改善しないなど、トラブルになることもあるという。
日本経済新聞 2010.6.25