歯周病が怖いのは、歯が奪われるだけではなく、体のさまざまな場所で病気などの引き金となる点だ。歯周病の原因となるプラーク(歯垢)は、歯と歯茎の間の歯周ポケットに蓄積され、歯周病菌が塊になった「バイオフィルム」という状態で存在している。こうして増えた歯周病菌が、血液や唾液などとともに侵入すると、さまざまな悪影響を及ぼす。まず気を付けたいのが、高齢者などに多い「誤嚥性肺炎」だ。唾液に含まれる歯周病菌が気道に入り、感染防御機能が落ちているため感染症を起こしてしまうのだ。
一方、動脈硬化などによって起きる心筋梗塞にも、歯周病菌がかかわっていることが近年わかってきた。奥田名誉教授らは、動脈硬化によって詰まった心臓の周囲の冠状動脈に存在する細菌の遺伝子が、歯周病菌の遺伝子と一致することを発見し、04年に論文発表した。また妊娠中の女性にとっては、歯周病が早産や低体重児出産などのリスクともなる。96年に米国の研究者が関連性を初めて報告。その後も同様の報告が相次ぎ、07年には、歯周病菌が早産した妊婦のうち3割の人の羊水中から検出されたとの内容の論文も出ている。
毎日新聞 2010.11.23