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身元確認に国際基準を 検視の法医学者が訴え

東日本大震災の犠牲者の身元確認でミスを防ぐため、現在の手法より厳密とされる国際基準「DVI(災害犠牲者身元確認)」を採用すべきだとの声が法医学者から出ている。指紋や歯型だけでなく、目や耳の形、着衣など数百項目の生前情報と照合するため、遺体の損傷に伴い難航が予想される身元確認作業に有効という。

 岩手県で検視活動に当たる岩手医大の出羽厚二(でわ・こうじ)教授によると、現地では犠牲者の多さに加え、車やガソリン、通信手段の不足も重なり身元確認が難航。警察庁は各都道府県ごとに異なる検視の簡素化を通知したが、全国から駆け付けた医師の間に混乱があるという。

 遺体が身元不明の場合、現場の医師らはこれまで迅速な対応を優先、所持品や指紋、歯型、DNAなど最低限の試料を保存して確認の際に備えているが、出羽教授は「身元確認は時間とともに難しくなる。今後はDVIが必要だ」と訴える。

 DVIは国際刑事警察機構(ICPO)が提唱し米、英など約20カ国が採用。2月のニュージーランド地震でも使われた。数百項目にわたる照合結果は、最終的に裁判官らが客観的に判断する。

 遺族の目視による確認は「間違いの元」として認めない。時間と手間がかかるのが難点だが、国籍の違う犠牲者が多数出た場合も対応できる。

 2004年スマトラ沖地震の発生から約2週間後にインドネシア当局がDVI方式で身元確認をやり直したことを挙げ、東京医科歯科大の中久木康一(なかくき・こういち)助教も同方式の早急な導入を要請。

 出羽教授は「日本では厳密な死因究明や遺体の身元確認がなおざりにされてきた」とし、DVIに加え法医学者や検視官の増員も求めている。