東日本大震災の被災地には、専門知識を持つ多くの「支援のプロ」が駆け付けている。日本看護協会の「災害支援ナース」もその一つで、4月末までに全国から936人が派遣され、北海道からは東日本で東京(67人)、埼玉(42人)に次ぎ多い40人の看護師が現地入りした。4月中旬、宮城県石巻市で支援に当たった岩見沢訪問看護ステーションの三原清美さん(46)は「今後は福祉系など、いろいろな職種の人の力が必要になる」と語る。
6~7割が高齢者で、病歴も、受けていた医療も分からない――。4月8~11日、三原さんが赴いた避難所の小学校の当時の状況だ。震災直後は約700人に上った避難者は約70人に減っていたが、医療や介護が必要な災害弱者が多く残されていた。
お年寄りの中には、寝具や栄養状態の悪さから床ずれを起こしている人もいた。プライバシーなどに配慮しながら状況を探り、必要なケアをするのが三原さんの役目だった。
東北人の気質なのか、避難している人は誰もが辛抱強くて遠慮がち。健康状態を尋ねると、熱があっても「私は大丈夫」との答えが返ってきた。「迷惑をかけて申し訳ないと感じているようだった。だからこそ、こちらから看護師の目で、昨日と今日の様子の違いを見つけなければならなかった」と振り返る。
派遣2日目、前日は問題なく歩いていた60代男性が片足を引きずっていることに気付いた。男性は「大丈夫」と答えたが、何度も聞くと、以前に脳梗塞(こうそく)を経験したことがあり、それ以来飲み続けていた血流改善の薬が3日前から切れていることが分かった。日本赤十字社の医療スタッフに橋渡しして薬を処方してもらったが、症状は改善しない。そこで、病院を手配して検査を受けてもらったところ、脳腫瘍が見つかったという。
三原さんは09年、看護師仲間に誘われて計4日間の災害支援ナース研修を受け、登録をした。震災直後から「いても立ってもいられなかった」といい、被災者の役に立てて「行けてよかった」と話す。北海道看護協会の高橋結子常任理事は「震災前199人だった道内の登録ナースは、3月末には226人になった。登録者の交流会なども開いており、派遣されたナースの経験を共有していきたい」と話している.
2011年5月14日 提供:毎日新聞社