みなさんは、口の中に「唾液」という液体があるのをご存知ですね。口の中をいつも潤し、物を食べたとき、湧き出てくるあの液体です。いわゆる「ツバ」ですね。
この唾液、たいせつな働きをしているのですが、あまり知られておらず、ほとんどの人にとって「くさい」「汚い」「気持ち悪い」の3Kのイメージを持たれているようです。
唾液を冠した言葉も「天にツバする」「ツバも引っかけない」「睡棄すべき」「眉ツバもの」「虫唾がはしる」など、ろくなものがありません。嫌われ者の唾液ですが、私たちが物を食べたとき、唾液が食べ物のうま味を溶かし出してくれるからこそ、おいしく味わうことができます。
また、唾液は消化管の入り口である口を浄化し、その環境を維持していく働きを担っています。唾液が少なくなることは、唾液が本来持っている機能を損ない、口の中の”砂漠化”を促進します。
もし私たちの唾液の量が半分になったら、食事の際、物をかんだりのみ込むのに苦労するようになります。また、口の中がいつも乾いて、ひりひりべたべたするだけでなく、歯茎から血が出やすくなり、口臭も強くなります。ひどくなると食べ物の味が分からなくなったり、口の中の痛みや渇きで夜も眠れなくなることさえあります。現代人の食生活やライフスタイルは、ストレスなど口の中を砂漠化させる要因に事欠きません。
北海道新聞 2011年(平成23年)6月1日