現代の日本人は和食から洋食へと食生活の転換が進み、繊維質の多い食品をあまり食べなくなりました。また、味が濃く軟らかい加工食品の消費が増えたこともあり、あまりかむ必要もなくなったのです。では、どれくらいかまなくなっているのでしょうか。食文化研究家の永山久夫氏と斉藤滋氏が昔の食事を復元して、実際にかむ実験を行っています。それによると玄米や魚の干物、クルミや長イモなど、よくかまないと栄養素として吸収されにくい食材を食べていた弥生時代の日本人は、平均して1食あたり4千回かみ、食事時間は50分でした。野菜の煮物やたくあん、半づき米などを食べていた戦前の食卓でも1400回で20分でしたが、現代は620回で10分と、戦前の半分、弥生時代の6分の1以下です。一応消化できているから問題ないじゃないかと思う人もいるでしょう。しかし、かむ回数が減ると唾液の量も減り、唾液のさまざまな恩恵が得られないだけでなく、肥満などの問題につながりかねません。次回はよくかむことと肥満予防についてお話します。
北海道新聞 2011.7.27