早食いが太りやすいことは今や常識となりつつあります。よくかまずに早く食べることで、脳が満腹感を感じる前につい食べ過ぎてしまい、カロリーオーバーとなって肥満を招きやすくなる、早食いにより食欲を抑制するホルモンの量が減るなどが理由だと考えられています。しかし、食べる量が同じでも、早食いは太りやすいのです。名古屋大医学部のグループが、愛知県内の約5千人を対象に、食べる速度を「かなり遅い」から「かなり速い」まで5段階に分類。食べる量の違いや運動習慣が体重に与える効果を統計的補正した上で、純粋に食べる速さと肥満との関係を調査しました。その結果、食べるのが「かなり速い」人は「かなり遅い」人に対して、男性で6.9キロ、女性で5.9キロも平均体重が重いことが明らかとなったのです。早食いが肥満を招くのは、一気に食べることで急上昇した血糖値を抑えるためにインスリンが大量に分泌され、血液中の糖が脂肪に転換されるためと考えられています。「早食い」という行為そのものが肥満の原因になるわけです。また、毎回のようにインスリンが大量動員される食生活は膵臓の消耗を招くため、早食いは糖尿病予防の点からも好ましくありません。現代の若い人に多い、高カロリーのファストフードを糖分たっぷりのドリンクでほとんどかまずに流し込む食べ方は、肥満のみならず糖尿病への危険性が高いといえます。早食いの癖は若い時に身につきやすいようです。子供のころから、繊維質の多い歯応えのある食材を、ゆっくりよくかんで食べる習慣を身につけることが肥満や糖尿病の予防につながるのです。
北海道新聞 2011.8.3