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アンチエイジング(5)ちょきちょき 顔トレ

東京都内の喫茶店。40代から60代の女性約10人が集まっていた。この日、喫茶店は貸し切り。「表情筋エクササイズ」、別名「顔トレ」の講習会が行われるためだ。教えるのは、歯科医の宝田恭子さん。

 顔トレとは、顔のトレーニング。足や腕の筋肉は使わないと衰える。顔も同じだ。皮膚の下の表情筋という様々な筋肉を使わないと、支える力が弱まり、しわやたるみを招く。筋肉を鍛えて、少しでも防止しようというのが顔トレだ。

 しわの中でも嫌われるのが、鼻の両脇から唇の両端に伸びる「法令線」。このしわが深くなるほど、年をとった印象を与える。顔トレ最大のテーマでもある。

 グミキャンディーが参加者に配られた。よし、よくかんで口の周りの筋肉を鍛えよう。早速口に入れると、宝田さんからくぎを刺された。「いつも同じ場所でかむと、そこの法令線が深く長くなります」。そうか、気をつけないといけない。

 次いで、ちょきちょきトレーニング。年とともに顔の輪郭がぼやけ、二重あごのようになっていく。それをすっきりさせる。

 人さし指と中指であごの線をはさみ、ちょきちょきと指を動かし、耳のところまでさすり上げる。参加者が一斉にちょきちょきを始めた。皆真剣だ。事情を知らないと、「一体何やっているんだ」と不思議に思いそうな光景ではあるが……。

 1年前から参加した50代の女性は「顔がたるむのは仕方ないとあきらめていました。それが少し収まったのでうれしい」と話す。

 目指す自分に向かって努力あるのみ。やる気が伝わってきた。

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 アンチエイジングは、豊かさの指標とも言われる。医療の進歩で寿命が延び、食べ物に事欠かない社会になったからこそ、この言葉が生まれた。そうでなければ、老化を気にする前に寿命がつきかねない。

 政治も経済も問題山積で不安だらけの今の日本。アンチエイジング熱は、まだゆとりがあることを示しているのかもしれない。

 取材の過程で何度か聞いた。アンチエイジングで重要なのは、食の豊かさを享受しないこと、つまりカロリー制限だそうだ。

 鶴見大歯学部付属病院でアンチエイジング外来を担当する斎藤一郎教授はこう話す。「食糧が少ない時期は子孫を残しにくい。このため、食糧が手に入る時期まで寿命を延ばそうという生命力が働く、という説があります」