首都大学東京大学院の繁田雅弘教授はこのほど、日本認知症ケア学会の第12回学術大会でアルツハイマー型認知症治療薬をテーマに講演した。この中で繁田教授は、新薬が次々登場した欧米と異なり、10年間にわたり治療薬がアリセプト(エーザイ)に限られていた国内の状況を振り返り、「薬の選択に惑わされずに、どうやってその薬を最大限生かすかという技術を身に付けられたという意味では、決して無駄ではない10年だった」と述べた。
国内のアルツハイマー型認知症治療薬は、1999年にアリセプトが発売され、今年に入り、アリセプトと同様、コリンエステラーゼ阻害薬であるレミニール(ヤンセンファーマ、武田薬品工業)、イクセロンパッチ/リバスタッチパッチ(ノバルティスファーマ/小野薬品工業)や、これらとは異なる作用機序(NMDA受容体拮抗薬)を持つメマリー(第一三共)が相次いで発売された。
このうち、レミニールについて繁田教授は、「従来のコリンエステラーゼ阻害薬で確認されている効果は、ほぼすべて確認できる」などと指摘し、「第一選択になる」との見解を示した。
また、同薬とアリセプトとの違いについて、「短期間で比較すると非常にいい勝負だが、1年後になるとレミニールの方が優れるというデータがある」などと指摘。「認知機能や生活動作については、今まで以上に長期にわたって効果が期待できる」と述べた。一方で、副作用については、アリセプトと同様に消化器症状に関する副作用があり、頻度は同等か少し高いとする海外データを紹介した。
さらに、徘徊や妄想といった行動・心理症状(BPSD)に対する効果について、「アリセプトは広くさまざまな症状に効く」と指摘。一方、レミニールは妄想や焦燥性興奮/攻撃性、異常運動行動など、「あつくなりやすい、あるいは行動が増えている人にふさわしい」とした。
このほか、アルツハイマー型認知症治療薬で唯一の貼付薬であるイクセロンパッチ/リバスタッチパッチについては、投与が簡便で、服薬管理も容易であることや、嚥下に問題がある患者にも使用できることといったメリットを紹介。一方で、貼付剤特有の痒みなどの副作用について、「患者は家族や介護者にきちんと伝えられない可能性があるので、周りの理解が必要。赤くなっているならば、貼り替えるときにふき取ったり、ステロイドなどの塗り薬を使ったりする必要が出てくる」と述べた。