進行した歯周病に対しても、抜歯はせず、歯磨きの励行指導と定期的な歯周の洗浄ケアで歯を残す治療を実践してきた。しかし、一生懸命やっても歯がだめになる人がいた。日常的に上下の歯列を不必要に接触させる癖が大きく影響していることを突き止めた。上下の歯は安静時にはわずかな隙間があり、本来必要な接触時間は食事の時など1日20分ほど。気付かずに歯を合わせているだけで顎に余計な負担がかかる。強い噛みしめや、食いしばりまで至らず、本人も自覚がないことが多い。「歯を食いしばって頑張れ」などと言われて育ち、いつも歯を接触させている人は決して珍しくない。接触癖は歯の表面がすり減ったり、治療した補填物が外れる、また虫歯でないのに歯が痛んだり、入れ歯や治療後の歯の原因不明の不具合感、さらに、歯を支える歯槽骨に過度な負担がかかり歯周病を悪化させる要因につながっている。
日本経済新聞 2011.8.8