1つ目は、日本人の健康にこれだけ貢献してきた国民皆保険制度が、高齢社会の到来、雇用形態の変化、官僚主義などによって殺されかけているということです。全国に3500もの保険者が存在し効率性が落ちています。保険者によって保険料が大きく異なり、格差が拡大しています。特集号では、保険者を都道府県レベルで統合し、保健医療資源の配分や財源について権限と責任を都道府県に移譲せよ、といった踏み込んだ提言をしています。とにかく、抜本的な構造改革が喫緊の課題です。
もう1つの弱点はプライマリケアです。急性期医療の水準は非常に高いのですが、慢性疾患の医療の質が高くありません。高血圧や脂質異常症の管理目標は薬剤が投与されている患者の半数程度でしか達成されておらず、喫煙、肥満への介入も不十分との分析結果がでています。加えて、ゲートキーパーとしての訓練を十分に受けたプライマリケア医が不足しているため、患者の振り分けが効率的になされておらず、それが高次医療機関の医師たちの疲弊を招いています。