抗がん剤や放射線治療の影響で粘膜や唾液腺が傷つけられて、広範な口内炎による痛みや重い口腔乾燥症など口の中の合併症が起きやすいことは意外に知られていません。米国がんセンターの調べでは、発生率は一般的な抗がん剤治療で約40%、強い抗がん剤を使う造血幹細胞移植で約80%、口やのどの周囲にできたがんの放射線治療でほぼ100%に及びます。
唾液の分泌減少による口腔乾燥症の影響は深刻です。唾液の潤滑作用が失われて口内炎の痛みがよりひどくなったり、会話や飲食に支障を来すことがあります。また唾液の自浄作用が損なわれて口の中が汚れやすくなり、細菌が繁殖しやすくなります。さらに抗がん剤治療の間は体の免疫力も落ちているので、虫歯や歯周病の急激な悪化や口の中の細菌による肺炎が起こることも少なくありません。
北海道新聞 2011.12.14