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歯科医院での言葉の勘違い

印象・バイト・マージン 治療も順調に進み、いよいよ歯の型を取りました。歯科医師とスタッフとの会話が聞こえてきます。「この患者さんの印象良くないね」と言っています。ドキッとしますが、悪口ではありません。「印象」とは英語「impression」(名詞)の訳で、「ひとつの物質をもう一つの物質の表面上またはその内部へ押さえつける行為」の意味であり、歯型を取ることをそのまま「印象」と呼んでいます。この場合は患者さんのことではなく、歯型がうまく取れていないことを伝えたのでした。

 続いて、上下の噛み合わせを取りました。今度は「バイトはOKだね」と聞こえてきます。「アルバイトがやるのは心配」と思うかもしれませんが、「バイト」とは英語の「bite」(名詞)で、噛み合わせのことを指します。

 次の治療日、技工物が完成して歯科医師が試しに歯に合わせた後、電話口などで歯科技工士に「マージンが不足しているよ」と注文をつけています。「ここの歯医者は技工士からバックマージンを取っているのだろうか」と不審に感じるかも知れません。しかしこれも英語「marjin」(名詞)で、「辺縁、輪郭」の意味で使われています。つまり技工物が指示通りの形をしていないとクレームをつけたのです。

 明治初期、西洋歯科医学が導入されましたが、米国人歯科医師の影響が強かったため、英語の直訳や発音が臨床現場で使われた名残ではないかと考えられます。