日本医療機能評価機構は薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業のうち、特に共有すべき事例を公表した。今回公表した事例はいずれも内服薬調剤などに関するものとなっている。
事例1では、「フェノバール散10%1g、90日分で秤量すべきところ、0.5g、90日分で秤量した」というもの。背景・要因としては「処方せんを発行した病院が当日より処方せんの書き方を変更した。1回分と1日分は括弧書きで両方の併用表記になった。1回分を1日分と勘違いしてしまった」ことをあげている。
同事例のポイントとして機構は、「処方せんの記載方法が変更されたときはより一層の注意が必要。初めて1回量と1日量が併記された処方せんに対応するときは、慎重に読まなければヒヤリ・ハットが増加する可能性がある」と指摘しており、変更点があった際の調剤には注意を怠らないことを呼びかけている。
事例2では「ベプリコール錠100㎎の処方に対して、併用薬のイトリゾールカプセル50を患者から確認した。その後、ベプリコール錠100㎎の添付文書を確認し、問題なしと判断して投薬した。患者が帰ったあと、イトリゾールカプセル50の添付文書を確認したところ、併用禁忌の記載があったため、医師に連絡、患者から感謝の電話があった」というもの。
機構は「一方の薬剤の添付文書のみに当該薬への併用禁忌記載があった例。両剤ともに併用薬に十分留意する必要性のある薬剤ではあるが、必要があれば企業においても添付文書の記載内容等を検討してもらう必要がある」とし、薬局が添付文書の落とし穴を発見した例であるとしている。
事例3では「オキシコンチン錠5㎎3錠/分3毎食後で処方されたが、食後・食前の指示がなく、時間で服用する際は通常の用法とは違う入力方法を行い、あとで薬袋の修正をかける方法をとっていた。事務員の入力ミス、薬剤師の確認不足で薬袋の表記方法が1回3錠になっており、患者が服用してしまうこととなった」という内容。
その背景としては「事務員がマニュアルどおりに入力していないことと、薬剤師も薬袋表記を確認できていなかった」ことをあげている。機構は「処方せんは1日3回の決められた時間による内容だったが、対応するコードが無いため独自入力で対応し、後で手直しする方法を採用していたと思われる。マニュアルがあってもそれに従わないと大きな問題につながるケース」とし、事務員と薬剤師による薬袋、薬剤情報提供文書の表記にチェックが重要であるとしている。
なお、薬局ヒヤリ・ハット事例収集事業への参加薬局数は6314軒となっており、増加傾向にある。