手術のあとも、唇には傷あとがあり、鼻も変形していた。上あごの前方の骨がある硬い部分には、形成不全によるすき間が、生まれたときのまま開いており、樹脂製のプレートでふさいでいた。小学校に上がると、プレートを見たことがない新しい同級生たちは「それ何?」と、何度も聞いてきた。そこで毎年春、みんなの前でこう話した。「ぼくは口唇口蓋裂なので、口にプレートを入れています。給食の後に洗います。時々、病院に行くので早退します。」嫌なことをいう子は同学年にはいなかった。
朝日新聞 2012.2.23