上を向いてガラガラとうがい(嗽)をすると、喉の奥まできれいになったような気がします。外出から帰宅すると手を洗って、うがいをすることはいいことです。ところで、上を向いてガラガラうがいをすると、ほんとうに喉の奥(咽頭腔の後壁や側壁)まで水やうがい液が行きわたり、口のみならず喉まですすぐことになるのでしょうか。レントゲン撮影をしながらガラガラうがいをしてもらいました。その結果は、いくらガラガラしても口の中の水は咽頭には入らず、口の中で空気と混ざって跳ねているばかりでした。いわゆるガラガラうがいのときは、軟口蓋と舌で口腔の後方を閉じ、水が咽頭に入らないようにしながら、その隙間から空気を前方に送り出し、口の中で水を弾ませているに過ぎないのです。
しかし、うがい中に意識して軟口蓋と舌との閉鎖を緩めると、少しの水を咽頭に送ることもできますが、ごくわずかの水が咽頭側を伝うだけで、咽頭腔でガラガラと水が踊ることはありません。むしろ、水が多過ぎると、次の瞬間には水が気管に入り咽せ返ったり、鼻から吹き出したりして、踊っているのは水ではなく本人ということになります。このように、うがいは口の中をきれいにすることはできても、咽頭腔をきれいにすることはできません。咽頭腔は、水を飲み込んだときにはじめて拭われてきれいになるのです。