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胃ろう、差し控えや中止も 老年医学会が新指針

日本老年医学会は27日、高齢者の終末期医療における胃ろうなどの「人工栄養」について、開始する際は慎重に検討し、差し控えや中止も選択肢とする新たなガイドラインを公表した。

 管を使って胃に栄養を送る胃ろうをめぐっては、患者に苦痛を与えたり、穏やかな最期を妨げたりする場合があるとして医療関係者らから疑問の声が上がっていた。医療や介護の現場に向け、近く学会ホームページで公開する。

 ガイドラインでは、人工栄養を開始する際は「口からの栄養摂取ができないかどうかを見極める必要がある」と指摘。その上で、延命効果が得られるかどうかだけでなく「本人の人生をより豊かにするかどうか」という観点から、差し控えも含めた最善の方法を選択すべきだとした。介護する家族の負担や、患者の生活環境についても個別に配慮するよう求めている。

 作成に関わった飯島節(いいじま・せつ)筑波大大学院教授は「医学的な妥当性だけでなく、倫理的な妥当性を目指した」と説明。「現場の声を聞き、社会情勢を考慮しながら一定期間ごとに見直していく」とした。

 胃ろうは本来、口からの栄養摂取ができなくなった患者が、回復するまでの栄養補給が目的。しかし、回復の見込みがない高齢者にも使われるケースが増え、問題となっていた。

※胃ろう

 口からの食事ができなくなった患者の腹部に小さな穴をあけ、流動食や水分を胃に直接送り込む方法。管理が比較的簡単で、不要になった場合は閉じることもできる。在宅介護の増加や技術の進歩を背景に、ここ10年ほどで急速に普及した。人工的に栄養を送る方法には、血管から点滴で注入する「静脈栄養」や、鼻から管を入れる「経鼻栄養」などもある。