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「親父は幸せだ」と家族が感じた看護とは?

Hが病室に足を踏み入れると、人工呼吸器をつけて寝ているお父様の姿が目に
入りました。挿入されているカテーテルの数に驚いたといいます。
「VAPは大丈夫だろうか?」
 Hは挿管後48時間以内に呼吸器関連肺炎が発症するリスクが高いことを知っ
ていたのです。

 室内の洗面台には『柄付きくるリーナ』が置かれていました。これは看護師さ
んに言われてお母様が購入したそうです。
 Hが病状と口腔ケアについて看護師さんに尋ねると、こう答えてくれました。

「肺炎が絶対に起こらないとは言えませんが、私たちは口腔ケアを1日に数回行
なっています。ところで、サクションができる『くるリーナ』はないんでしょう
か?」
 Hは挿管患者向けの『吸引ICUブラシ』があると伝え、早速調達の手配を済
ませました。

 その後お父様は徐々に快方に向かい、3ヶ月後に晴れて退院できたのです。
「口腔ケアのおかげで回復できたのかどうかはわかりません。でもVAPや誤嚥
性肺炎にならなかったのは、口腔ケアをしてくれたからだと考えています。何よ
りもあれだけ手厚い看護をしてもらえて、『親父は幸せだ』と感じました」

 Hの話を聞いて、ヴァージニア・ヘンダーソンの言葉が私の脳裏をかすめまし
た。
「口腔ケアの質が看護の質を表す」
 少しでも現場の看護師さんのお役に立てるように頑張りたい。口腔ケア普及に
全力を尽くすと決意を新たにした次第です。