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いびき 熟睡できず困っているが

いびきは、のどを中心とした上気道を空気が強く流れた時、粘膜が振動して出る音だ。何らかの理由で上気道が狭いと、いびきをかきやすくなる。

 いびきをかいていると熟睡しているように見えるが、実は眠りが浅いなど、睡眠の質が低下している場合も多い。巽(たつみ)浩一郎・千葉大教授(呼吸器内科)は「いびきの音が大きい人は、それだけ一生懸命に呼吸の努力をしているということ。このため脳が目覚めてしまい、深い眠りに入りにくい」と説明する。いびきをかいて熟睡できなかったことが、昼間の眠気につながることもある。

 男性の場合、いびきの原因の多くは肥満。太ると上気道に脂肪が付いて狭くなり、いびきが強くなる。下あごが小さい人や、鼻詰まりで口呼吸になっている人も、いびきをかきやすい。一方、女性は50歳以降の閉経後から、いびきをかきやすくなる。女性ホルモンには気道を開く働きがあり、閉経で女性ホルモンが低下すると、いびきも少しずつ悪化するという。

 ◇「無呼吸」の恐れ

 いびきをかいていても、他に症状がなければ、それほど心配する必要はないが、昼間に眠気が強かったり、高血圧などの症状があれば要注意。「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)の可能性があるからだ。

 SASは睡眠中の無呼吸が原因で、昼間の眠気や集中力の低下などを起こす病気だ。無呼吸とは、呼吸が10秒以上停止した状態を指す。気道がふさがって無呼吸状態になり、呼吸が再開する時に大きないびきが出る。

 巽教授によると、SASの患者には高血圧の人が多い。睡眠中に無呼吸や低呼吸を繰り返していると、体がたびたび酸素不足になり、結果として血圧の上昇を招く。高血圧は心筋梗塞(こうそく)や脳卒中のリスクを高める。いびきを侮れないのはこのためだ。

 「激しいいびきや眠気があって高血圧の人は、一度受診してほしい」と巽教授。実際、SASの治療をすると、血圧が下がる人は珍しくないという。巽教授は「SASを治療すれば、心筋梗塞や脳卒中を防ぐことにつながる」と訴える。

 ◇睡眠検査受診も

 自分のいびきが病的なものかどうかを調べるには、どんな方法があるのか。

 問診などでSASの疑いがあれば、睡眠検査を受ける。睡眠検査には自宅でできる簡易検査もあり、機器を借りて睡眠中に測定する。無呼吸や低呼吸が1時間に何回あるかを計測する機器、血中の酸素レベルを測定する機器など、さまざまなタイプがある。病院に1泊入院すると「ポリソムノグラフィー」と呼ばれる精密検査も受けられる。体にセンサー類を装着し、呼吸やいびき音、睡眠の状態を総合的に調べる。

 これらの検査で「中等症」か「重症」と診断されれば、治療を受ける。治療法は「シーパップ」と呼ばれ、睡眠中に鼻にマスクを付けて空気を送り込み、気道を広げる。シーパップは効果は高いが、一晩中マスクを付けるのを煩わしいと感じ、使用を続けられない患者もいる。

 こうした患者、または軽症の患者の場合は、より手軽なマウスピース(口腔(こうくう)内装置)を使う。コスモス矯正歯科医院(千葉県成田市)の菊池哲院長は「肥満の人は減量すればいびきや無呼吸が改善するが、やせていても顔の骨格の問題で気道が狭い人も少なくない。口腔内装置は、下あごや舌が前方に出るように保持し、気道を広げるのに効果がある」と説明する。