歯や口の健康づくりを推進することにより、地域住民の全身の健康増進を図ろうという「歯科保健推進条例」を定める自治体が増えてきた。2008年の新潟県を皮切りに、これまでに27道県で制定され、一部市町にも動きが広がっている。
背景には、この10年ほどの間に、虫歯や歯周病などの歯科疾患と、全身の病気との関連を示す研究結果が相次いで報告されたことがある。
80歳になっても自分の歯が20本以上残っていることを目指す「8020運動」を進める8020推進財団のまとめによると、8月7日現在、47都道府県のうち既に27道県が条例を施行。残る20都府県でも「検討していない」という東京都、「関係議員に働き掛けているが、制定に向けた動きはない」という石川県、「県保健医療計画に位置付けられているとの見解」の福井県を除いては、いずれも制定への具体的な動きがあるという。
さらに市町村レベルでも、静岡県裾野市など全国の18市町が施行済み。昨年8月には国や自治体の責務を定めた「歯科口腔(こうくう)保健法」も制定され、条例への取り組みが加速する可能性もある。
これまでに制定された条例は、目的や基本理念などの骨格はほぼ共通するものの、地域の実情によって違いもみられる。例えば、離島を抱える長崎県は歯科医療の地域間格差是正を重視、茨城県は8020運動に加え、64歳で24本以上という目標も掲げている。
歯科疾患をめぐっては、歯周病菌が肺炎や動脈硬化、肥満、糖尿病、早産や低体重児出産などに関係すると指摘されている。また、歯の喪失によるそしゃく能力低下は、栄養状態を悪化させるほか、脳機能の低下などにもつながるとされる。